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第四章:祭りと畑のレシピ
61、命をつなぐ手仕事(前半)
しおりを挟む「来週、地域の田んぼで田植え体験を行います。実際に手を動かして農作業を体験することで、食べ物がどうやって育つのか学びましょう」
教室にざわざわとした声が広がった。
「えー、田植えなんて大変そう!」
「泥で足が抜けなくなったりしないの?」
そんな声も聞こえた。
私、ことりは心の中でドキドキしていた。
田植え……泥の中に足を入れて苗を植えるなんて、想像しただけで足が震えそうだ。
友だちのいぶきも隣で小さくつぶやく。
「ことりも田植え、怖いよね?」
「うん……でも、逃げられないし、がんばるしかないかな」
そのとき、奏汰が手を挙げた。
「ぼく、田植えは得意だよ。うちの田んぼで毎年やってるから」
奏汰の言葉は自信に満ちていて、私の緊張がほんの少し和らいだ。
授業が終わると、みんなで田植えの準備について話し合った。
「田植えはけっこう力仕事だって、田島さんが言ってたよ」
「私、足が泥にはまったらどうしよう……」
友達の声に、私も不安が広がる。
家に帰る途中、いぶきと話した。
「ことりは家でお手伝いとかしてる?」
「うーん、お皿洗いくらい。でも、農作業は初めてで、うまくできるか自信ないなあ」
「私も不安。でも、みんなでやれば楽しいかもね」
母に田植えのことを話すと、昔の話をしてくれた。
「私が小さい頃も田植えをしていたわ。最初は泥に足をとられて怖かったけど、だんだん慣れて楽しくなったの」
その話に私は少し希望を持った。
そして、田植え当日。朝早くに集合場所に集まった。
みんな作業着や長靴姿で、顔には期待と緊張の入り混じった表情があった。
バスに乗って移動する間、外の風景は緑が濃くなり、田んぼの水面がキラキラ光っていた。
現地に着くと、広い田んぼが目の前に広がり、水の中に苗が少しずつ並んでいる。
その時、農家の田島さんが現れた。大きな手とやさしい笑顔の持ち主で、みんなに丁寧にあいさつをしてくれた。
「こんにちは。田植えは大変だけど、みんなの毎日のごはんのための大切な仕事だよ。今日は楽しくやろう」
田島さんの話を聞きながら、私はこの体験の意味を少しずつ理解していった。
「土の中で育つ苗を見て、ちゃんと育つのかなと心配だったけど、手をかけることで元気に育つんだ」
いよいよ田植えが始まった。田んぼの中に足を入れると、冷たくてぬるっとした泥が足を包んだ。
最初は足が抜けなくなって慌てたけれど、だんだん感覚に慣れてきた。
苗を一本一本、土にまっすぐ植えるのは思ったより難しかった。力加減がわからず、苗を曲げてしまったり、土に埋め過ぎたり。
奏汰が隣で、「ことり、大丈夫?ゆっくりやればいいよ」と声をかけてくれた。
その言葉にほっとしながら、私も笑顔になった。
途中で田島さんが話してくれた。
「昔は家族みんなでやったものだよ。手伝いをしながら、笑いながら、辛いことも乗り越えてきた」
「昔の子どもたちは、今日の君たちのように泥に足をとられながらも、毎年がんばっていたんだ」
その話を聞くと、田植えがただの作業じゃなく、命をつなぐ大切な営みなんだと実感できた。
疲れても、顔を見合わせて笑い合うみんなの姿がとても温かく感じられた。
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