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第四章:祭りと畑のレシピ
76、みんなのちがい、私の気づき(後半)
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「次は、ことりさんと奏汰くんの発表です」
先生の声が教室に響いた。私はどきんと胸が鳴った。緊張で手のひらが少し汗ばんでいる。けれど隣に立つ奏汰は、パソコンのマウスを握る手がぴたりと安定していて、まるで理科の実験でも始めるみたいな表情だった。
「大丈夫、ちゃんと順番通りに進めるから」
「う、うん……」
私はうなずきながら深呼吸をひとつ。教室の窓から差し込む日差しが、春の終わりを感じさせる。プロジェクターの光がスクリーンに映ると、まず最初に、牧場の朝の写真が映し出された。
「私たちは春休みに、酪農体験とお菓子工場の見学に行きました。そして、野菜を使ったお菓子の開発にも挑戦しました」
奏汰の声は落ち着いていて、みんなも自然と前を向く。写真には、牛の搾乳をしている奏汰と、泥まみれになりながらも笑顔の私の姿がある。教室のあちこちでくすっと笑いが漏れた。
「最初は、ピーマンのフィナンシェを試作しました。でも、苦みがなかなか取れなくて…」
ここで私は前に出た。大きなノートを開いてページを見せる。
「このページが、改良メモです。焼き加減や甘みの調整、あと、白あんを加えてやさしい甘さにしてみました」
「ピーマンに白あん?!」
「なんか…すごい…」
クラスメイトの反応が一気に広がる。その中に、いぶきの声もあった。
「でもね、それが意外とおいしかったんだよ」
奏汰がにこっと笑い、次のスライドを映す。そこには「味のバランス表」と書かれたグラフがあり、苦味、甘味、香りのバランスが数値で整理されている。
「これは僕が作った、試作品ごとの味の変化のグラフです。家で母が昔つけていた味の記録帳をヒントにしました」
「すごっ、理科っぽい!」
「いや、国語じゃない? 感想文みたいだし」
ざわつく教室の中で、私は一歩進み、手元の小さなパウチに入れた写真を取り出す。地元の農家さんと話している写真、お菓子工場のラインに並ぶチーズケーキの写真――。
「私たちが食べてるお菓子や野菜の、その前には、作ってくれている人たちがいる。おじいさんが、牛と話すには、言葉より毎日なんだって言ってて、私、それがすごく残ってて……」
ふと黙る。静まり返った教室に、椅子の軋む音だけが響いた。けれど、奏汰が、私の背中をそっと押してくれる。
「――それから、お菓子作りって、料理じゃなくて、誰かを思うことなんだって思うようになりました」
私の言葉に、数人がうなずくのが見えた。先生もにこやかに見守っている。
「このケーキ、私たちの試作品のひとつです。にんじんとオレンジを使って、優しい甘さに仕上げました。使ったのは……」
ホワイトボードに書き出す。
にんじんとオレンジのケーキ(試作品レシピ)
にんじん(すりおろし)……60g
オレンジの果汁……50ml
小麦粉……100g
ベーキングパウダー……小さじ1
卵……2個
菜種油……50ml
はちみつ……30g(または三温糖)
シナモン……少々
作り方
にんじんは皮ごとよく洗ってすりおろし、オレンジの果汁と混ぜておく。
卵と油、はちみつをボウルでよく混ぜる。
粉類をふるい入れ、最後ににんじんと果汁を加え、型に流す。
170℃のオーブンで約30~35分焼く。
「これは、皮もむだにしないって教えてくれた農家さんの言葉から作ったお菓子です」
「へぇ~、皮ごと?」「はちみつって、家で作れるの?」
感嘆の声と、次々と飛んでくる質問。私も奏汰も、答えながら顔がどんどん明るくなっていく。
「今度、みんなで育ててみたら?」「試食会とかやってよー!」
笑い声の中で、私はノートをぎゅっと抱きしめた。伝えるって、こんなにあったかいんだ。伝えるって、私だけの世界が、だれかとつながることだったんだ。
先生の声が教室に響いた。私はどきんと胸が鳴った。緊張で手のひらが少し汗ばんでいる。けれど隣に立つ奏汰は、パソコンのマウスを握る手がぴたりと安定していて、まるで理科の実験でも始めるみたいな表情だった。
「大丈夫、ちゃんと順番通りに進めるから」
「う、うん……」
私はうなずきながら深呼吸をひとつ。教室の窓から差し込む日差しが、春の終わりを感じさせる。プロジェクターの光がスクリーンに映ると、まず最初に、牧場の朝の写真が映し出された。
「私たちは春休みに、酪農体験とお菓子工場の見学に行きました。そして、野菜を使ったお菓子の開発にも挑戦しました」
奏汰の声は落ち着いていて、みんなも自然と前を向く。写真には、牛の搾乳をしている奏汰と、泥まみれになりながらも笑顔の私の姿がある。教室のあちこちでくすっと笑いが漏れた。
「最初は、ピーマンのフィナンシェを試作しました。でも、苦みがなかなか取れなくて…」
ここで私は前に出た。大きなノートを開いてページを見せる。
「このページが、改良メモです。焼き加減や甘みの調整、あと、白あんを加えてやさしい甘さにしてみました」
「ピーマンに白あん?!」
「なんか…すごい…」
クラスメイトの反応が一気に広がる。その中に、いぶきの声もあった。
「でもね、それが意外とおいしかったんだよ」
奏汰がにこっと笑い、次のスライドを映す。そこには「味のバランス表」と書かれたグラフがあり、苦味、甘味、香りのバランスが数値で整理されている。
「これは僕が作った、試作品ごとの味の変化のグラフです。家で母が昔つけていた味の記録帳をヒントにしました」
「すごっ、理科っぽい!」
「いや、国語じゃない? 感想文みたいだし」
ざわつく教室の中で、私は一歩進み、手元の小さなパウチに入れた写真を取り出す。地元の農家さんと話している写真、お菓子工場のラインに並ぶチーズケーキの写真――。
「私たちが食べてるお菓子や野菜の、その前には、作ってくれている人たちがいる。おじいさんが、牛と話すには、言葉より毎日なんだって言ってて、私、それがすごく残ってて……」
ふと黙る。静まり返った教室に、椅子の軋む音だけが響いた。けれど、奏汰が、私の背中をそっと押してくれる。
「――それから、お菓子作りって、料理じゃなくて、誰かを思うことなんだって思うようになりました」
私の言葉に、数人がうなずくのが見えた。先生もにこやかに見守っている。
「このケーキ、私たちの試作品のひとつです。にんじんとオレンジを使って、優しい甘さに仕上げました。使ったのは……」
ホワイトボードに書き出す。
にんじんとオレンジのケーキ(試作品レシピ)
にんじん(すりおろし)……60g
オレンジの果汁……50ml
小麦粉……100g
ベーキングパウダー……小さじ1
卵……2個
菜種油……50ml
はちみつ……30g(または三温糖)
シナモン……少々
作り方
にんじんは皮ごとよく洗ってすりおろし、オレンジの果汁と混ぜておく。
卵と油、はちみつをボウルでよく混ぜる。
粉類をふるい入れ、最後ににんじんと果汁を加え、型に流す。
170℃のオーブンで約30~35分焼く。
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「へぇ~、皮ごと?」「はちみつって、家で作れるの?」
感嘆の声と、次々と飛んでくる質問。私も奏汰も、答えながら顔がどんどん明るくなっていく。
「今度、みんなで育ててみたら?」「試食会とかやってよー!」
笑い声の中で、私はノートをぎゅっと抱きしめた。伝えるって、こんなにあったかいんだ。伝えるって、私だけの世界が、だれかとつながることだったんだ。
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