レシピの見つけ方 〜旅するお菓子ノート〜

武内れい

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第二章:大人たちのお菓子作り

22、工場見学の申し込み(後半)

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 日曜日の午後。私は自分の部屋の机に座り、工場見学に向けたメモをもう一度見返していた。

(こんなにたくさん、質問したいことがあるんだ……)

 でも、全部を聞けるわけじゃない。それに、みんながどんなことに興味を持っているのか、ちゃんと知っておきたい。

 私はノートのページの下に、新しく欄をつくった。

 〈みんなに聞いてみたいこと〉
 ・お菓子で気になることは?
 ・工場ってどんなイメージ?
 ・将来やってみたい仕事って?

(聞き方を変えれば、みんなの考えも集められるかもしれない)

 そう思うと、気持ちがふわっと軽くなった。誰かといっしょに準備するって、こんなにわくわくするものなんだ。


 その日の夕方、私は玄関のドアを開けて、ポストを確認した。中には町の広報紙といっしょに、一枚の封筒が混ざっていた。

 〈小宮製菓 工場見学のしおり 在中〉

 小さな文字が、ぴしっと整列した表紙。その中には、当日のタイムスケジュールや、注意事項、集合時間や持ち物のリストが書かれていた。

 〈帽子・マスク・うわばき・筆記用具〉
 〈質問リスト(グループでまとめて持参)〉

 私はしおりを机に広げると、何度も目を通した。

 それから、ふと気づいたように、小さな便箋を取り出して、一言だけ書いた。

 〈ひとつずつ、ちゃんと見ること。匂いも音も、覚えておく〉

 それは誰に見せるものでもない、自分への約束だった。


 翌日、月曜日の朝。教室には、先週よりも少しぴんと張りつめた空気があった。

「じゃあ、今日からグループごとに質問をまとめる時間を取ります。リーダーを決めて、役割分担も考えてね」

 先生の言葉に、ざわっと小さな声が広がった。

「ことり、いっしょのグループになろ!」
「うん、わたしも入れて!」

 さくらとゆかりちゃんが両側から声をかけてくれる。

「奏汰くんも、同じグループでいい?」

「もちろん。おれ、書記やるよ。」

「じゃあ、私がリーダー……で、いいかな?」

 おそるおそる言ってみると、みんなが自然に頷いてくれた。

「ことり、いつもちゃんと準備してるから、安心だよ」と、さくらが言ってくれた。

 私の頬がすこしだけ熱くなる。でも、その言葉は、心の奥まで静かに染みていった。

 黒板の下に広げた模造紙。その真っ白な上に、奏汰くんがマーカーで書き始めた。

 〈グループ名:まごころスイーツ隊〉
 〈見学先:小宮製菓〉
 〈質問テーマ:味と安全のひみつ〉

「私、材料のことをもっと知りたいな。たとえば、小麦粉ってどこの産地を使ってるのかとか」

「それ、いいね! バターも。輸入品とか国産とかあるし」

「あとさ、機械で作ってるっていっても、どこかで人の手が入ってるはずだよね?」

 次々に出てくる言葉を、奏汰くんが模造紙にまとめていく。私はその様子を見ながら、ひとりひとりの関心がつながって、ひとつの形になっていく感覚に包まれていた。

 教室のざわめきの中、ふと目を上げると、窓の外にふわりと白い雲が流れていた。どこか遠くへ続いていくような、そのやさしいかたち。

(この見学が終わったら、私たちは何を思うんだろう)

 知らなかった世界を、どんなふうに感じるんだろう。

 私は胸の奥で、そっとひとつ、言葉をつぶやいた。
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