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第三章:チーズの町、ミルクの風
41、発酵の魔法と自由研究(前半)
しおりを挟む夏休みが近づくある日の朝、教室の窓からやわらかな光が差し込み、私は席に座りながらも心がそわそわと落ち着かなかった。数日前に担任の先生から伝えられた、夏休みの自由研究のテーマが頭から離れない。
〈食べ物の秘密を調べてみよう〉――それは、ただの勉強じゃなくて、自分の好きなお菓子の材料や作り方を知ることで、もっとお菓子を好きになるためのものだった。
朝のホームルームが終わり、担任の松田先生が教室の前に立った。
「みんな、今年の自由研究で特におすすめなのは、地元のチーズ工房見学です。実際に牛乳がチーズになるまでの過程を学べるいい機会ですよ。希望者は申し込んでくださいね。」
その言葉に、私は胸が一気に高鳴った。お菓子の原料として大切な牛乳のことをもっと知りたい。チーズは大好きなお菓子のひとつだし、その秘密を知ることは、きっと自分の未来にもつながるはずだと思った。
休み時間になると、隣の席のさくらにそっと声をかけた。
「ねえ、いぶき。チーズ工房に行ってみたいって思わない?」
「うん、私も興味ある! 牛さんってどんな感じなんだろうね?」さくらは笑顔で返した。
そこへ奏汰くんも寄ってきて、
「チーズのこと、もっと知りたいな。自由研究でまとめたら面白そうだよな」と声をかけてくれた。
私は思わず笑顔になった。
「そうだね。奏汰くんも一緒に行けたらいいな。」
午後の授業の間も、頭は自由研究のことでいっぱいだった。友達のゆかりちゃんやりょうた、いぶきも興味津々で話しかけてきた。
「チーズ工房って、どこにあるの?」
「山の方の牧場が近いみたいだよ。牛がのんびりしてるんだって。」
「昔は牛がみんなの生活に欠かせない存在だったらしいよ。おばあちゃんがよく話してくれた。」
友達の話に耳を傾けながら、私ももっと調べてみたいと思った。
放課後の廊下で、数人の友達が声をかけてくれた。
「ことり、自由研究頑張ってね! 終わったら教えてよ。」
「チーズってどうやって作るのか、本当に気になる!」
「うちの家でも牛乳は毎朝飲んでるけど、作り方は知らないもんね。」
私は少し照れくさそうにしながらも、嬉しさで胸がいっぱいだった。
「ありがとう! いっぱい学んできて、みんなにも話すからね。」
家に帰ると、大切にしているノートを机に広げた。自由研究用の新しいページをめくり、チーズの材料や作り方を書き込めるように準備を始める。
〈発酵って、学校で習ったよね。微生物が食べ物を変化させることでおいしくなるって。〉
学校で学んだことも思い出しながら、資料や図鑑を手に取り、ページにびっしりとメモを書いていった。
〈チーズは、ただの牛乳じゃなくて、生きている材料なんだ。〉
私の目は輝いていた。自由研究は、ただの宿題じゃない。大好きなお菓子の秘密を知る、大冒険の始まりだった。(これからの夏休みが楽しみで仕方ない。)
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