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番外編:光と鎖の狭間で
14、揺れる心、支えの光(後半)
しおりを挟むあの日、邸宅で見た光景が胸の奥でずっしりと重く沈んでいた。
帰り道、雪乃の小さな手をぎゅっと握りしめると、いつもより強く握っていることに気づいた。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
雪乃の声が、小さく震えていた。けれど、その声が少しだけ心の中の不安を溶かしてくれた気がした。
帰宅すると、グレイウォード家のリビングにはいつもの穏やかな空気が漂っていた。
柔らかな光の中で、セシリアさんがにこやかに私たちを迎えてくれる。
「おかえりなさい、宮乃。雪乃も待っていたわよ」
その笑顔には、どんな嵐の中でも守られているような安心感があった。
私は少しだけ肩の力を抜き、素直に答えた。
「今日は……なんだか疲れちゃいました」
言葉に詰まるのを感じてか、セシリアさんはそっと私の手を取った。
「あなたは一人じゃないわ。どんなに暗い道でも、ここがあなたたちの避難所なのよ」
その言葉に胸の奥が熱くなり、こらえていた涙がこぼれそうになるのを慌てて押しとどめた。
孤児院での孤独や、あの邸宅で見た陰惨な影を思い出しながら、私の心はゆっくりとほぐれていった。
夕食の席ではリアンさんも静かに語りかけてくれた。
「宮乃、君は本当に優しい子だね」
その言葉はまるで、私の胸の奥にある小さな灯をそっと励ますようだった。
「雪乃を守ろうとするその強さは、誰にも負けない。そんな君もまた、私たちが守る大切な家族なんだよ」
セシリアさんも微笑みながら頷く。
「あなたたちはもう、孤独ではないのよ。ここには君たちの居場所がある。どうか安心して、甘えてほしいの」
その言葉を聞きながら、私の心はじんわりと温かさで満たされていくのを感じた。
自分が家族に迎え入れられた実感に戸惑いながらも、少しずつその温もりに身を任せてみたくなる。
「私たちはいつもそばにいるから、無理をしなくていいのよ」
セシリアさんの優しい声に、私は小さく頷いた。
食卓の向こう側で、雪乃がにこにこと笑いながら話し始めた。
「お母様がね、今日も私の好きなリンゴを切ってくれたの。お父様は私のお話をたくさん聞いてくれたよ」
その言葉に、一瞬、私は息を飲んだ。
「……雪乃?」
彼女はこちらを見上げ、目を輝かせて答える。
「うん? どうかしたの?」
「どうして、セシリアさんをお母様って呼ぶの? リアンさんはお父様って」
雪乃は少し考え込んだあと、すぐに笑顔を取り戻した。
「だって、お父様もお母様も、私たちを大切にしてくれるから。ここが私のお家だから」
その素直な言葉に、胸がぎゅっと締めつけられた。
私にはまだ、こんな風に呼べる家族がいなかったから。
リアンさんとセシリアさんは優しく見つめ、リアンさんが穏やかに口を開いた。
「それでいいんだよ、宮乃」
「君たちはもう、僕たちの家族なんだ。呼び方なんて気にしなくていい。大切なのは、ここにいて安心して甘えられることだから」
その言葉は、私の心の奥に小さな灯を灯した。
少しずつ、私もこの家族を受け入れていけるのかもしれない――そう思えた夜だった。
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