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第一章:日常のさざ波
13、パン屋のおばさんと心の声(前半)
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春の午後、学校からの帰り道。空は薄い雲に覆われていて、時折そよ風が頬を撫でる。日差しは柔らかく、だけどまだ少し肌寒さが残っていた。
ほのかはリュックの中におつかいのメモを入れて、ちょっとだけ緊張しながらこむぎ日和の前に立った。学校の近くにある小さなパン屋さんで、ガラスのショーケースには焼きたてのパンがずらりと並んでいる。
甘い匂いがふわっと鼻をくすぐり、つい立ち止まってしまう。
「いらっしゃい、ほのかちゃん」
優しい声が背後からかかった。振り返ると、パン屋のおばさん、春日さんが笑顔でこちらを見ていた。花柄のエプロンがよく似合う、温かそうな人だ。
「こんにちは。今日はおつかいですか?」
ほのかが小銭入れを手に取りながら頷くと、春日さんは手際よくパンを袋に入れ始めた。カウンター越しに並ぶパンは、どれも美味しそうで、目移りしてしまう。
つい、ショーケースの中のクリームパンをじっと見つめてしまった。
「ほのかちゃん、いつも頑張ってるねぇ」
突然の言葉に少し驚いた。誰かに「頑張ってるね」って言われることなんて、あまりない。ましてや、こんなに優しい声で言われると、胸の奥がぎゅっと温かくなる。
「ありがとう……でも、遊びたいなって思うこと、あるんです」
口に出した言葉は、少しだけ照れ臭かったけど、自然に溢れてきた気持ちだった。
毎日、ピアノの練習に塾、水泳のレッスン。忙しくて、遊ぶ時間なんてほとんどない。友達と笑い合ったり、外で自由に走り回ったりするのが、どこか遠い世界みたいに感じてしまう。
でも、本当はそういう時間がほしい。自由に笑いたい。そんな自分の気持ちを誰かにわかってほしかった。
春日さんはじっとほのかの目を見て、静かにうなずいた。
「そうか。その気持ち、大事にしな」
その言葉は、ほのかの心にそっと染み渡った。否定されるんじゃなくて、そのまま受け止めてもらえたことが、どんなに嬉しかったか。
袋の中でパンがかさかさと音を立てる。私はそれを受け取りながら、ふっと肩の力が抜けるのを感じた。
「ありがとう、春日さん」
店のドアを開けて外に出ると、風がふんわりと吹き、少し冷たい空気が頬を冷やした。でも、その冷たさもどこか心地よくて、春の匂いがする。
帰り道はいつもより少しだけ軽やかに感じた。
「また明日もがんばろう」
そう心の中でつぶやきながら、ほのかは歩き出した。
ほのかはリュックの中におつかいのメモを入れて、ちょっとだけ緊張しながらこむぎ日和の前に立った。学校の近くにある小さなパン屋さんで、ガラスのショーケースには焼きたてのパンがずらりと並んでいる。
甘い匂いがふわっと鼻をくすぐり、つい立ち止まってしまう。
「いらっしゃい、ほのかちゃん」
優しい声が背後からかかった。振り返ると、パン屋のおばさん、春日さんが笑顔でこちらを見ていた。花柄のエプロンがよく似合う、温かそうな人だ。
「こんにちは。今日はおつかいですか?」
ほのかが小銭入れを手に取りながら頷くと、春日さんは手際よくパンを袋に入れ始めた。カウンター越しに並ぶパンは、どれも美味しそうで、目移りしてしまう。
つい、ショーケースの中のクリームパンをじっと見つめてしまった。
「ほのかちゃん、いつも頑張ってるねぇ」
突然の言葉に少し驚いた。誰かに「頑張ってるね」って言われることなんて、あまりない。ましてや、こんなに優しい声で言われると、胸の奥がぎゅっと温かくなる。
「ありがとう……でも、遊びたいなって思うこと、あるんです」
口に出した言葉は、少しだけ照れ臭かったけど、自然に溢れてきた気持ちだった。
毎日、ピアノの練習に塾、水泳のレッスン。忙しくて、遊ぶ時間なんてほとんどない。友達と笑い合ったり、外で自由に走り回ったりするのが、どこか遠い世界みたいに感じてしまう。
でも、本当はそういう時間がほしい。自由に笑いたい。そんな自分の気持ちを誰かにわかってほしかった。
春日さんはじっとほのかの目を見て、静かにうなずいた。
「そうか。その気持ち、大事にしな」
その言葉は、ほのかの心にそっと染み渡った。否定されるんじゃなくて、そのまま受け止めてもらえたことが、どんなに嬉しかったか。
袋の中でパンがかさかさと音を立てる。私はそれを受け取りながら、ふっと肩の力が抜けるのを感じた。
「ありがとう、春日さん」
店のドアを開けて外に出ると、風がふんわりと吹き、少し冷たい空気が頬を冷やした。でも、その冷たさもどこか心地よくて、春の匂いがする。
帰り道はいつもより少しだけ軽やかに感じた。
「また明日もがんばろう」
そう心の中でつぶやきながら、ほのかは歩き出した。
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