22 / 40
第二章:気まずさと距離感
22、“好き”って何?(後半)
しおりを挟む
校門をくぐったとたん、にぎやかな声が耳に飛び込んできた。
「マジでそれやったの?」「ウケるんだけど!」
男子たちの笑い声にまじって、レナの明るい声が響いている。今日もやっぱり、みんなの中心にいるんだなって思う。
ほのかはいつも通りに下駄箱で上履きに履きかえ、教室に向かう。廊下には、先生たちの話し声や、プリントを配る係の子の足音がぱたぱたと響いていた。
教室に入ると、颯太がいつものメンバーと机をくっつけて、カードゲームみたいなもので盛り上がっていた。
笑いながら「それ反則ー!」って声を上げてる颯太の姿は、すごく自然で、自由で、見ているこっちまで笑いたくなるような空気をまとっていた。
でも――ほのかは、そこには入っていけなかった。
「おはよう」って声をかけるタイミングを何度か探したけど、そのたびに誰かの笑い声が重なって、言葉はほのかの喉の奥に引っ込んだ。
それでもほのかは、自分の席に向かって歩いていく。その途中、ふと、颯太がこっちをちらっと見た気がして、心臓がきゅっとなった。
でも彼はすぐにまた、友達の方を向いて笑った。
…そっか。私なんて、気にしてないのかもしれない。
そう思ったら、なんだか胸の中がじんわりと苦くなった。
席についてランドセルを下ろし、筆箱を机に出す。手はいつも通りに動いてるけど、頭の中ではまた「“好き”って何?」って問いかけがぐるぐるとまわっていた。
1時間目の算数の授業が始まっても、なんだか集中できなかった。先生が黒板に書いた図形を見ながらも、ほのかの目はぼんやりとその隣の窓の外にうつっていた。
あの空の青さ。朝のひんやりした空気はもう消えて、太陽の光が教室にやわらかく差しこんでいる。風が吹くたびに、校庭の木の葉がふるえて、小さな音を立てていた。
そんな景色を見ながら、ほのかは心の中でつぶやく。
(私が知りたいのは、好きってどういう気持ちなのか、じゃなくて……この気持ちが、本物なのかってことなんだよね)
みんなみたいに、「○○が好き!」って簡単に言えたらいいのに。だけどほのかは、言葉にしてしまうのがこわい。
もし、ちがってたら。もし、颯太が全然そんなふうに思ってなかったら。
それを知るのが、こわいのかもしれない。
授業が終わると、ノートを閉じて、無意識のうちに小さくため息をついた。
「ほのかちゃん、ノート写させて!」
後ろの席のももこが笑顔で顔を出してきた。
「え? いいけど……」
ノートを手渡すと、ももこが小声でささやいた。
「昨日のLINEさー、やばかったよね。マジでさくらと木下が両思いだったとは…! それで、ほのかちゃんはどうなの?」
「え?」
「好きな人とか~」
「……そんなの、いないよ」
笑ってごまかそうとしたけど、うまく笑えなかった。
ももこは「ふーん」と言って、少しだけじっとほのかの顔を見て、それからまたニヤッと笑った。
「でもほのかちゃんって、好きになったら一途そうだよね~」
その言葉が、ちくりと胸に刺さった。
一途って――そんなに、重いこと?
そうかもしれない。ほのかはきっと、気持ちを確かめるまでに時間がかかるタイプなんだと思う。
みんなみたいに、冗談っぽく恋の話をできない。すぐに盛り上がったり、冷めたりするのも苦手。
でも、だからって、気持ちがないわけじゃない。
ただ、それをどうやって人に伝えればいいのかが、まだわからないだけ。
それでも……ほのかは、今の自分の気持ちを、ちゃんと見つめてみたいと思った。
颯太のことを考えると、たしかに胸がふわっとなるし、笑ってる姿を見ると嬉しくなる。
それって、やっぱり特別ってことなんじゃないかな。
だけど、その特別には、まだちゃんとした名前がついていない。
好きって言葉にするには、もう少し時間がほしい。
そんなふうに思いながら、ほのかは静かに窓の外を見つめた。
校庭を走る体育のクラス。風に吹かれる花壇のパンジー。どれも、昨日と変わらない光景のはずなのに――どこか違って見えた。
ほのかの心の中に、まだ誰も知らない芽が、そっとふくらんでいる気がした。
「マジでそれやったの?」「ウケるんだけど!」
男子たちの笑い声にまじって、レナの明るい声が響いている。今日もやっぱり、みんなの中心にいるんだなって思う。
ほのかはいつも通りに下駄箱で上履きに履きかえ、教室に向かう。廊下には、先生たちの話し声や、プリントを配る係の子の足音がぱたぱたと響いていた。
教室に入ると、颯太がいつものメンバーと机をくっつけて、カードゲームみたいなもので盛り上がっていた。
笑いながら「それ反則ー!」って声を上げてる颯太の姿は、すごく自然で、自由で、見ているこっちまで笑いたくなるような空気をまとっていた。
でも――ほのかは、そこには入っていけなかった。
「おはよう」って声をかけるタイミングを何度か探したけど、そのたびに誰かの笑い声が重なって、言葉はほのかの喉の奥に引っ込んだ。
それでもほのかは、自分の席に向かって歩いていく。その途中、ふと、颯太がこっちをちらっと見た気がして、心臓がきゅっとなった。
でも彼はすぐにまた、友達の方を向いて笑った。
…そっか。私なんて、気にしてないのかもしれない。
そう思ったら、なんだか胸の中がじんわりと苦くなった。
席についてランドセルを下ろし、筆箱を机に出す。手はいつも通りに動いてるけど、頭の中ではまた「“好き”って何?」って問いかけがぐるぐるとまわっていた。
1時間目の算数の授業が始まっても、なんだか集中できなかった。先生が黒板に書いた図形を見ながらも、ほのかの目はぼんやりとその隣の窓の外にうつっていた。
あの空の青さ。朝のひんやりした空気はもう消えて、太陽の光が教室にやわらかく差しこんでいる。風が吹くたびに、校庭の木の葉がふるえて、小さな音を立てていた。
そんな景色を見ながら、ほのかは心の中でつぶやく。
(私が知りたいのは、好きってどういう気持ちなのか、じゃなくて……この気持ちが、本物なのかってことなんだよね)
みんなみたいに、「○○が好き!」って簡単に言えたらいいのに。だけどほのかは、言葉にしてしまうのがこわい。
もし、ちがってたら。もし、颯太が全然そんなふうに思ってなかったら。
それを知るのが、こわいのかもしれない。
授業が終わると、ノートを閉じて、無意識のうちに小さくため息をついた。
「ほのかちゃん、ノート写させて!」
後ろの席のももこが笑顔で顔を出してきた。
「え? いいけど……」
ノートを手渡すと、ももこが小声でささやいた。
「昨日のLINEさー、やばかったよね。マジでさくらと木下が両思いだったとは…! それで、ほのかちゃんはどうなの?」
「え?」
「好きな人とか~」
「……そんなの、いないよ」
笑ってごまかそうとしたけど、うまく笑えなかった。
ももこは「ふーん」と言って、少しだけじっとほのかの顔を見て、それからまたニヤッと笑った。
「でもほのかちゃんって、好きになったら一途そうだよね~」
その言葉が、ちくりと胸に刺さった。
一途って――そんなに、重いこと?
そうかもしれない。ほのかはきっと、気持ちを確かめるまでに時間がかかるタイプなんだと思う。
みんなみたいに、冗談っぽく恋の話をできない。すぐに盛り上がったり、冷めたりするのも苦手。
でも、だからって、気持ちがないわけじゃない。
ただ、それをどうやって人に伝えればいいのかが、まだわからないだけ。
それでも……ほのかは、今の自分の気持ちを、ちゃんと見つめてみたいと思った。
颯太のことを考えると、たしかに胸がふわっとなるし、笑ってる姿を見ると嬉しくなる。
それって、やっぱり特別ってことなんじゃないかな。
だけど、その特別には、まだちゃんとした名前がついていない。
好きって言葉にするには、もう少し時間がほしい。
そんなふうに思いながら、ほのかは静かに窓の外を見つめた。
校庭を走る体育のクラス。風に吹かれる花壇のパンジー。どれも、昨日と変わらない光景のはずなのに――どこか違って見えた。
ほのかの心の中に、まだ誰も知らない芽が、そっとふくらんでいる気がした。
0
あなたにおすすめの小説
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
【奨励賞】おとぎの店の白雪姫
ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】
母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。
ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし!
そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。
小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり!
他のサイトにも掲載しています。
表紙イラストは今市阿寒様です。
絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
ローズお姉さまのドレス
有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です*
最近のルイーゼは少しおかしい。
いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。
話し方もお姉さまそっくり。
わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。
表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる