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第二章:気まずさと距離感
22、“好き”って何?(後半)
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校門をくぐったとたん、にぎやかな声が耳に飛び込んできた。
「マジでそれやったの?」「ウケるんだけど!」
男子たちの笑い声にまじって、レナの明るい声が響いている。今日もやっぱり、みんなの中心にいるんだなって思う。
ほのかはいつも通りに下駄箱で上履きに履きかえ、教室に向かう。廊下には、先生たちの話し声や、プリントを配る係の子の足音がぱたぱたと響いていた。
教室に入ると、颯太がいつものメンバーと机をくっつけて、カードゲームみたいなもので盛り上がっていた。
笑いながら「それ反則ー!」って声を上げてる颯太の姿は、すごく自然で、自由で、見ているこっちまで笑いたくなるような空気をまとっていた。
でも――ほのかは、そこには入っていけなかった。
「おはよう」って声をかけるタイミングを何度か探したけど、そのたびに誰かの笑い声が重なって、言葉はほのかの喉の奥に引っ込んだ。
それでもほのかは、自分の席に向かって歩いていく。その途中、ふと、颯太がこっちをちらっと見た気がして、心臓がきゅっとなった。
でも彼はすぐにまた、友達の方を向いて笑った。
…そっか。私なんて、気にしてないのかもしれない。
そう思ったら、なんだか胸の中がじんわりと苦くなった。
席についてランドセルを下ろし、筆箱を机に出す。手はいつも通りに動いてるけど、頭の中ではまた「“好き”って何?」って問いかけがぐるぐるとまわっていた。
1時間目の算数の授業が始まっても、なんだか集中できなかった。先生が黒板に書いた図形を見ながらも、ほのかの目はぼんやりとその隣の窓の外にうつっていた。
あの空の青さ。朝のひんやりした空気はもう消えて、太陽の光が教室にやわらかく差しこんでいる。風が吹くたびに、校庭の木の葉がふるえて、小さな音を立てていた。
そんな景色を見ながら、ほのかは心の中でつぶやく。
(私が知りたいのは、好きってどういう気持ちなのか、じゃなくて……この気持ちが、本物なのかってことなんだよね)
みんなみたいに、「○○が好き!」って簡単に言えたらいいのに。だけどほのかは、言葉にしてしまうのがこわい。
もし、ちがってたら。もし、颯太が全然そんなふうに思ってなかったら。
それを知るのが、こわいのかもしれない。
授業が終わると、ノートを閉じて、無意識のうちに小さくため息をついた。
「ほのかちゃん、ノート写させて!」
後ろの席のももこが笑顔で顔を出してきた。
「え? いいけど……」
ノートを手渡すと、ももこが小声でささやいた。
「昨日のLINEさー、やばかったよね。マジでさくらと木下が両思いだったとは…! それで、ほのかちゃんはどうなの?」
「え?」
「好きな人とか~」
「……そんなの、いないよ」
笑ってごまかそうとしたけど、うまく笑えなかった。
ももこは「ふーん」と言って、少しだけじっとほのかの顔を見て、それからまたニヤッと笑った。
「でもほのかちゃんって、好きになったら一途そうだよね~」
その言葉が、ちくりと胸に刺さった。
一途って――そんなに、重いこと?
そうかもしれない。ほのかはきっと、気持ちを確かめるまでに時間がかかるタイプなんだと思う。
みんなみたいに、冗談っぽく恋の話をできない。すぐに盛り上がったり、冷めたりするのも苦手。
でも、だからって、気持ちがないわけじゃない。
ただ、それをどうやって人に伝えればいいのかが、まだわからないだけ。
それでも……ほのかは、今の自分の気持ちを、ちゃんと見つめてみたいと思った。
颯太のことを考えると、たしかに胸がふわっとなるし、笑ってる姿を見ると嬉しくなる。
それって、やっぱり特別ってことなんじゃないかな。
だけど、その特別には、まだちゃんとした名前がついていない。
好きって言葉にするには、もう少し時間がほしい。
そんなふうに思いながら、ほのかは静かに窓の外を見つめた。
校庭を走る体育のクラス。風に吹かれる花壇のパンジー。どれも、昨日と変わらない光景のはずなのに――どこか違って見えた。
ほのかの心の中に、まだ誰も知らない芽が、そっとふくらんでいる気がした。
「マジでそれやったの?」「ウケるんだけど!」
男子たちの笑い声にまじって、レナの明るい声が響いている。今日もやっぱり、みんなの中心にいるんだなって思う。
ほのかはいつも通りに下駄箱で上履きに履きかえ、教室に向かう。廊下には、先生たちの話し声や、プリントを配る係の子の足音がぱたぱたと響いていた。
教室に入ると、颯太がいつものメンバーと机をくっつけて、カードゲームみたいなもので盛り上がっていた。
笑いながら「それ反則ー!」って声を上げてる颯太の姿は、すごく自然で、自由で、見ているこっちまで笑いたくなるような空気をまとっていた。
でも――ほのかは、そこには入っていけなかった。
「おはよう」って声をかけるタイミングを何度か探したけど、そのたびに誰かの笑い声が重なって、言葉はほのかの喉の奥に引っ込んだ。
それでもほのかは、自分の席に向かって歩いていく。その途中、ふと、颯太がこっちをちらっと見た気がして、心臓がきゅっとなった。
でも彼はすぐにまた、友達の方を向いて笑った。
…そっか。私なんて、気にしてないのかもしれない。
そう思ったら、なんだか胸の中がじんわりと苦くなった。
席についてランドセルを下ろし、筆箱を机に出す。手はいつも通りに動いてるけど、頭の中ではまた「“好き”って何?」って問いかけがぐるぐるとまわっていた。
1時間目の算数の授業が始まっても、なんだか集中できなかった。先生が黒板に書いた図形を見ながらも、ほのかの目はぼんやりとその隣の窓の外にうつっていた。
あの空の青さ。朝のひんやりした空気はもう消えて、太陽の光が教室にやわらかく差しこんでいる。風が吹くたびに、校庭の木の葉がふるえて、小さな音を立てていた。
そんな景色を見ながら、ほのかは心の中でつぶやく。
(私が知りたいのは、好きってどういう気持ちなのか、じゃなくて……この気持ちが、本物なのかってことなんだよね)
みんなみたいに、「○○が好き!」って簡単に言えたらいいのに。だけどほのかは、言葉にしてしまうのがこわい。
もし、ちがってたら。もし、颯太が全然そんなふうに思ってなかったら。
それを知るのが、こわいのかもしれない。
授業が終わると、ノートを閉じて、無意識のうちに小さくため息をついた。
「ほのかちゃん、ノート写させて!」
後ろの席のももこが笑顔で顔を出してきた。
「え? いいけど……」
ノートを手渡すと、ももこが小声でささやいた。
「昨日のLINEさー、やばかったよね。マジでさくらと木下が両思いだったとは…! それで、ほのかちゃんはどうなの?」
「え?」
「好きな人とか~」
「……そんなの、いないよ」
笑ってごまかそうとしたけど、うまく笑えなかった。
ももこは「ふーん」と言って、少しだけじっとほのかの顔を見て、それからまたニヤッと笑った。
「でもほのかちゃんって、好きになったら一途そうだよね~」
その言葉が、ちくりと胸に刺さった。
一途って――そんなに、重いこと?
そうかもしれない。ほのかはきっと、気持ちを確かめるまでに時間がかかるタイプなんだと思う。
みんなみたいに、冗談っぽく恋の話をできない。すぐに盛り上がったり、冷めたりするのも苦手。
でも、だからって、気持ちがないわけじゃない。
ただ、それをどうやって人に伝えればいいのかが、まだわからないだけ。
それでも……ほのかは、今の自分の気持ちを、ちゃんと見つめてみたいと思った。
颯太のことを考えると、たしかに胸がふわっとなるし、笑ってる姿を見ると嬉しくなる。
それって、やっぱり特別ってことなんじゃないかな。
だけど、その特別には、まだちゃんとした名前がついていない。
好きって言葉にするには、もう少し時間がほしい。
そんなふうに思いながら、ほのかは静かに窓の外を見つめた。
校庭を走る体育のクラス。風に吹かれる花壇のパンジー。どれも、昨日と変わらない光景のはずなのに――どこか違って見えた。
ほのかの心の中に、まだ誰も知らない芽が、そっとふくらんでいる気がした。
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