恋や友情が、なくても

武内れい

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第二章:気まずさと距離感

24、休み時間の沈黙(後半)

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 休み時間のざわめきは、教室の隅々まで響いている。みんなの声が入り混じって賑やかだけど、ほのかはその中に混ざれないでいた。
 レナの笑い声がひときわ大きくて、颯太と男子グループの間に、なにか特別な空気が流れているのが感じられた。

 颯太はいつものようにふざけて笑っている。大きな声で冗談を言って、周りの男子たちがそれに応える。その輪はまるで一つの世界みたいで、ほのかはその外にいるみたいだった。私のことなんて見ていない。
 そんなことはわかっていたはずなのに、なぜか期待してしまっていた自分に気づく。

 ほのかは机の前に座ったまま、ノートに目を落とすふりをしながら、ちらりとその様子を見ていた。手は鉛筆を握っているけど、文字はなかなか書けない。頭の中ではいろんな考えがぐるぐる回っていた。

(どうして私は、あの輪に入りたいと思ったんだろう?)

 そんなことを考えているうちに、レナが颯太のそばにやってきた。彼女はまるで計算したように軽やかな笑顔を浮かべて、「颯太ってさー、ほんとバカだよね」と笑いながら声をかける。
 颯太も「うっせー」と笑い返す。二人のやりとりは自然で、周りの男子たちも楽しそうだ。

 その瞬間、ほのかは自分がまるで透明になったように感じた。まるでそこに存在していないみたいに。入りたいと思ったのに、やっぱり違う世界の話なのだと突きつけられた気がした。

 胸の中がざわざわして、言葉にならない感情が押し寄せる。悔しい気持ちもあったし、なんだか悲しい気持ちもあった。何よりも、自分が一人で取り残されているように感じて、切なくてたまらなかった。

(何で私はこんなに期待していたんだろう)

 その答えが見つからず、ノートに目を戻す。文字がぼんやりと揺れて見える。心がざわつくたびに、鉛筆がカタカタと音を立てた。

 そっと視線を下げると、教室の窓から午後の柔らかな光が差し込んでいるのが見えた。光は温かいのに、ほのかの心はひんやりと冷えていた。

(颯太のこと、好きなのかな?)

 その言葉が頭に浮かぶけど、はっきりとは答えられない。友達以上の気持ちなのかもしれないし、ただの気のせいなのかもしれない。ほのかにはまだわからなかった。

 気づくと、机の下で足が小さく震えている。手に握った鉛筆も少し強く握りすぎて、指先が痛かった。こんなに自分の気持ちに戸惑うなんて、初めてだった。

 レナが颯太に話しかけているのを見て、胸がぎゅっと締め付けられた。彼女の明るい声が、ほのかにはどこか遠くて眩しく感じられた。
(私もあんなふうに笑えたらいいのに)
 そう思うけれど、それはとても難しいことのように思えた。

 周りの声が次第に遠くなっていく。まるで静かな膜に包まれて、自分だけが孤立しているような感覚に襲われた。
 ほのかはノートのページをゆっくりめくりながら、気持ちを落ち着けようとした。

(私はどうしたいんだろう?)

 自分の心に問いかける。だけど、答えはすぐには返ってこなかった。ゆっくりと深呼吸をして、気持ちを整える。涙は出そうだけど、ぐっとこらえた。

 休み時間のチャイムが鳴り、ざわつく教室の空気が変わり始めた。颯太も男子たちも次の授業の準備を始める。レナもにこやかに立ち去っていった。

 ほのかはまだ、心の中のもやもやが晴れないまま、ノートを閉じて立ち上がった。自分の気持ちに素直になることが、こんなに難しいなんて思わなかった。

(もう少しだけ、時間がほしい)

 そう思いながら、教室の出口へ向かう。廊下に出ると、空気がひんやりとしていて、少しだけ気持ちが落ち着いた。

 窓の外には春の青空が広がり、遠くで鳥のさえずりが聞こえる。風がカーテンをそっと揺らして、柔らかな光が差し込んでいた。

(明日は、また違う日になるかもしれない)

 そんな小さな希望を胸に抱いて、ほのかは足を前に進めた。
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