【第2部開始】ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜

月森かれん

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第1部 第2章 供物問題解決編

33話 新たな役割

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 実家に戻った私は、さっそく家族に集まってもらっていた。
もちろん、供物届け役について話すためだ。

 「と、いうことで、ホワイトドラゴンに供物を運搬する係を任されちゃって……」

 「だ、大丈夫なのか?ホワイトドラゴンって強い魔物なんだろう?」

 さっそく父のフィガロが口を挟む。普段の威厳はどこへいったのか、不安そうな顔で肩を震わせている。
 すると、母のソフィアが口を開いた。

 「でも、シーラはホワイトドラゴンに何回も会っているのでしょう?
それでも傷1つないってことは安全なんじゃない?」

 「うーん、でもなぁ……。
  それに滞在場所は?宿ならお金がかかるぞ」

 父の過保護が発動している。
母はどこか微笑ましそうに見つめているだけだった。

 「滞在場所はドラゴンの山の麓で、宿屋を経営しているジェイドさんたちにお世話になるの。
  1泊銅貨3枚だけど、お小遣いがあるから、1・2か月ぐらい持つよ」

 「ああ、その宿屋なら俺もお世話になったよ。夫婦だったよな?
2人共いい感じだったし」
 
 兄のレオの発言を受けて、父は長身を縮こませた。
心配していた2つのことが解決してしまって、目を泳がせている。
 その体勢のまま、どこか寂しそうに私を見つめてきた。

 「もう……こっちには戻って来れないのか?」

 「供物を運ぶのも毎日じゃないから、戻っては来れるよ。
でも行き来が大変だし……」

 「なら、家から船を出すのはどうかしら?」

 「え?」

 「へ?」

 穏やかに言った母に全員の視線が集まる。彼女は気にしていない様子で話を続けた。

 「カロン家はクラルハイト南部。ドラゴンの山はヴァイスア東部でしょう?
だったら、双方に簡易的な船着き場を作って、行き来した方が早いわよ。
シーラの生活物資や、宿屋夫妻への御礼の品とかも届けられるし」

 「さ、さすがは才女!恐ろしいっ!」

 「あなた、それで呼ぶのやめてもらえる?私、嫌なのよ」

 「す、すみませんでした……」
 
 温厚な母にピシャリと言われて、父が背中を丸くした。
この話し合いになってから、いいところが1つもない。

 それにしても、母が才女と呼ばれているのは初めて聞いた。
確かに頭が切れるし、言われてみれば納得だな、と小さく頷いた。

 父は慌てたようにハンカチで汗を拭うと、口を開く。

 「か、簡易的とはいえ、船着き場を作るのに1、2か月はかかるだろう。
その間は港町から行き来してもらわないといけないが……」

 「それは大丈夫!今までも行き来してきて慣れたから!」

 「まぁまぁ、頼もしくなったわねぇ、シーラ」

 母に笑顔で言われて、頬が緩む。やっぱり褒められるのは嬉しい。
 ついニヤニヤしていたら、兄が声をかけてきた。

 「じゃあ、1回目は俺が届けるよ。何か欲しいものがあったら教えてくれ」

 「うん!ありがとう、お兄ちゃん!後で紙を渡すね!」


 こうして私は、ホワイトドラゴン――ラディウスの“伝令”として、新たな日々を迎えることになった。
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