命乞いから始まる魔族配下生活

月森かれん

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第1部 魔族配下編 第1章

悩みを相談する

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 「結局何だったんだ……」

 俺は自室のベッドで仰向けになっていた。
あれから王座の間に戻って拘束を解かれたあと「好きにしろ」と言われたのだった。
 てっきり日が落ちるまで連れ回されるかと思っていたが、外はまだ明るい。

 「でも「教会送り」が引っかかる。
俺が知らない事でもあるのか?」

 魔王のあの言い方は何か知っているような感じだった。
いや、絶対に何か知っている。

 (俺に教えたい事があるから敢えて「命乞い」を受け入れたのか?)

 「命乞い」を受け入れた理由で人間を配下に置いた事がない、と言っていたが
それは建前で「教会送り」が本音なのかもしれない。

 「モトユウちゃ~ん!フロ入ろうぜ~!」

 「おわッ⁉」

 ノック無しにドアが開けられてデューク……さんが入ってきた。驚いて体を起こす。

 (っていうか何で俺が部屋にいる事知ってんだよ⁉また魔王に聞いたのか?)

 心の中でツッコミを入れながら作り笑いで声をかける。

 「ま、まだ明るいですよ?」

 「明るいとか暗いとか関係ないぜ~!
ほらほら行こ――」

 「……バトって来たんですか?」

 近づいてくるデューク……さんを見て思わず尋ねた。
顔や体にはところどころ切り傷があるし、服も破れている部分がある。
 
 「そうそう、よくわかったな~モトユウちゃん。
……2パーティーほど「教会送り」にしてやった」

 「ッ⁉」

 (2パーティー⁉さすが幹部……)

 急に真顔になったのと語尾が低くなった事に恐怖を覚えて後ずさる。

 「久々に城の外に出ようとしたらよ、来てるのが見えたんだわ。だからソッコーで斬り伏せた。
 そしたら休む暇もなくもう1パーティーだぜ?
ヒドくない?」

 「………」

 (「教会送り」。ダメだ、やっぱり引っかかる)

 「まぁ、ここまで来るだけあって2つとも一筋縄じゃいかなかったけど――って
モトユウちゃん?聞いてる?」

 「……………………」

 (魔王があんな言い方したから気になっちまうじゃねーか。やられたら教会で復活するだけだろ?
 一体何が……)

 「おい」

 デューク……さんの低い声が聞こえたかと思うと
視界が揺れて天井が映る。

 「え⁉ち、ちょっと、デューク……さん?」

 「モトユウちゃん、話はちゃんと聞こうぜ?
 あと最初に言ったと思うが、俺は目の前で考え込まれるのがイチバン嫌いなんだ」

 (語尾が伸びてない⁉
……ってこの状況ヤバくね⁉)

 なぜなら、俺はデューク……さんにのしかかられていたからだ。膝から下が全く動かせない。

 「す、すみません!ちゃんと話聞くんで
離れてください!」

 「そう言うんなら離れるけどさぁ……」

 渋々といった感じだったがデューク……さんは俺から退いた。
俺はすぐに体を起こしてベッドに座り直す。

 「……何の話でしたっけ?」

 「2パーティー「教会送り」にしたって話。
 ここまで来るだけあって一筋縄じゃいかなかったぜ~って」

 「あぁ……」

 「反応薄~い。いったいナニを真剣に考えてたのよ~?」

 「えっと……」

 いつものようにデューク……さんが顔を近づけてくる。これは彼の癖みたいなものだろう。
 それよりも語尾が伸びている事に安心した。

 (切り替わりが早くて助かった……。
 考えてたのは「教会送り」についてだけど、
言ってもいいのか?)

 迷う。言っても問題はないのだと思うが躊躇する。

 (魔族だしな……。疑ってるわけじゃないけど)

 どうするか考えているとデューク……さんが口を開いた。

 「やっぱり魔族の配下になるのやめときゃよかった~って?」

 「ち、違いますよ!」

 (これで良かったのかとは思ってるけど!
 ここまで来たら言うしかないか)

 「き、「教会送り」について考えてました」

 「は?」
 
 案の定デューク……さんが首を傾げる。

 「さっき魔王……さんに「教会送り」についてどう思ってるのか聞かれて。俺は「便利なものです」って答えたら、
「つまらん」って返されてしまって。
 それで魔王……さんは何か知っているんじゃないかと……」

 「は~、なるほど。うん、モトユウちゃんの考えは合ってる」

 「え⁉」

 ウンウンと頷くデューク……さんに思わず
近寄る。

 (やっぱ知ってんのか⁉)

 「マーさんだからな。「教会送り」じゃなく
「墓地送り」だけど、知ってるぜ~。
俺も少しだけど知ってる~」

 「お、教えてください!!」

 頭を下げるとなぜかデューク……さんが鼻で笑った。

 「俺の出す要件のんでくれたら教えてやるぜ?」
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