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婚約破棄されたらハイスペ王子に拾われた
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「オフェリア・ピンソラス! お前との婚約を破棄する!」
お茶会場に婚約者であるルイス・メルガルの鋭い声が響き渡った。
なぜそんな事を言われなければならないのかがわからず、瞬きを繰り返す。
しかし、あえて顔に出さずに冷静に言葉を繋いだ。
「理由をお聞かせください、ルイス様」
「悪い噂ばかり聞くからだ! 他の伯爵令嬢を池に突き落としたり、人を雇って金を巻き上げているらしいな!」
周囲の人々も話をやめ、ルイスの言葉に耳を傾けている。
注目を集めるの嫌なんだけど。しかも全く身に覚えのないことをつらつらと述べられても返す言葉に困るわ。
「全く身に覚えがありませんが、どなたから伺ったのでしょう?」
「マリアだ! お前もよく知っているだろう!」
「ええ……」
呆れ顔で頷いた。
マリア・ニコル。私と同じ伯爵家の長女で温厚な人柄。知識も豊富で100年に1人の才女だとも言われている。
確かに接点はあるけれど、嫌がらせなんてするわけないじゃない。自分から評価を下げることなんてしないわ。
思わずため息が出てしまい、それを聞いたルイスが眉をつり上げる。
「なんだそのため息は! しらばっくれるのか!?」
「しらばっくれるもなにも、そんな幼稚な嫌がらせなんてしていませんわ。
そもそも、聞いたのはマリアからだけなのでしょう?」
「そ、そうだが……」
ルイスの表情に焦りが見えた。さっきまでの威勢はどこへやら、目が泳いでいる。
全く、この男はたった1人の言い分を確定事項と決めつけていたのか。呆れて言葉も出ないわ。これはすぐボロが出るわね。
「そんなに強く仰るのですから、私がやったという証拠があるのですよね?」
「証拠!? い、いや、マリアから聞いただけで……」
「たった1人の主張だけを信じて婚約破棄などと仰ったのですか!!」
私の強い怒りを含んだ言葉に場が静まり返る。
って、何で執事達まで手を止めてるのよ。恥ずかしいんだけど。
それにしても肝心のマリアの姿が見えないわね。こうなることを予測してわざと欠席したのかしら。才女というよりはずる賢いのかもしれないわ。
少し落ち着いた怒りの感情を再び湧き上がらせてルイスを睨む。彼の顔は引きつっていて、恐怖からか口端がピクピクと震えている。
「そ、その……俺の早とちりだったかも……」
「早とちりにしても酷いです!」
ルイスに詰め寄ると全身を震わせながら後退りしていた。今までこのような姿を見たことがなかったので、滑稽に映る。
何よ、その情けない顔は。伯爵家長男とは思えないわね。
結婚する前に違う一面がある事を知れてよかったわ。あ、でも婚約破棄を言い渡されたのですわね。
「婚約破棄を受け入れましょう! 貴方のような男はこちらから願い下げですわ! では、ごきげんよう!」
強くテーブルを叩いて立ち上がると足早に会場を後にする。私を呼び止める声が背後から聞こえたが、無視した。
最悪だわ。せっかく公爵閣下が招待してくださったというのに。
それに、とんでもないことになってしまったわね。婚約破棄は良いけれど、私ももう17歳。今から貰い手が現れてくれるのかしら。
「オフェリア・ピンソラス嬢」
ゲート間近で呼び止められた。しかし元婚約者の荒々しい声ではなく、落ち着いていて安心感を覚えるような声だ。
思わず足を止めて声の主を確認した私は驚愕する。櫛の通ったサラサラな銀髪に透き通るような青い目。
隣国、エウバッド公国の王太子クロディス・エウバッドその人だったからだ。
「殿下……。私に何か御用でしょうか?」
慎重に言葉を選びながら尋ねる。まさかクロディス殿下も招待されていたなんて。それにしても婚約破棄された私に何の御用なのかしら。
私の問いかけに殿下は笑みを浮かべると朗らかに語り始める。
「先程の一部始終を拝見させてもらってね。失礼なのは重々承知だが、なかなか見応えがあったよ」
「私などには勿体ないお言葉です……」
お褒めの言葉なのだろうけど全く嬉しくないわ。私のいたテーブルからここまでそこそこ距離があるのに全部聞こえてたのね。恥ずかしくて顔を合わせられないわ。
それに申し訳ない話、立ち止まってる暇はないのだけれど。背後からは忌々しい元婚約者が迫ってきているのよ。本当にしつこいわ。
「それで貴女を呼び止めた理由だけれど、私と婚約して頂けませんか?」
「へ?」
差し伸べられた手に困惑する。一部始終を見られていて、感情に流されていた私を見てもなお、そのようなことを仰っているのか。
殿下もお年頃。婚約話なんて星の数ほど舞い込んでいるはずよ。もしかして曰く付きなのかしら。
戸惑っていると元婚約者に肩を掴まれる。目が飢えた獣のようにギラギラとしていて気味が悪い。
「オフェリア! 先程は無礼な発言をしてしまい大変申し訳なかった!
どうか考え直してくれないか!」
今更何を言っているの、そっちから婚約破棄したくせに。それにコロコロ心変わりするような男の元に戻ってくるとでも思っているのかしら。
って思ったより力強いわね。このままじゃ引き戻されるわ。
「ルイス・メルガル伯爵御子息だね?」
殿下が穏やかな声で言いながら、元婚約者の手を私から引き剥がす。
元婚約者は相手を確認して目を白黒させながら叫んだ。
「ク、クロディス・エウバッド殿下!?」
「一部始終を拝見させてもらったよ。随分酷い言いがかりじゃないか」
「い、いえ、わ、私の早とちりでございまして!」
私に指摘された時より狼狽えている元婚約者を見て呆れる。少しでも良く見られようという魂胆が見え見えだ。
「貴方はまだ復縁できると思ってるのかもしれないが、彼女を見てごらんよ。私はとてもじゃないけど復縁できるとは思えないね」
殿下の言葉に乗せられたこともあり、元婚約者を思いきり睨みつけてやった。みるみる顔が青ざめてゆく。
「それでは参りましょうか、オフェリア嬢」
「はい」
再び差し伸べられた手を取った。殿下は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに温かい笑みを浮かべる。
不安要素はあるけれど、元婚約者と復縁するくらいなら殿下を選ぶわ。
少しだけ清々しい気分になりながら会場を後にした。
お茶会場に婚約者であるルイス・メルガルの鋭い声が響き渡った。
なぜそんな事を言われなければならないのかがわからず、瞬きを繰り返す。
しかし、あえて顔に出さずに冷静に言葉を繋いだ。
「理由をお聞かせください、ルイス様」
「悪い噂ばかり聞くからだ! 他の伯爵令嬢を池に突き落としたり、人を雇って金を巻き上げているらしいな!」
周囲の人々も話をやめ、ルイスの言葉に耳を傾けている。
注目を集めるの嫌なんだけど。しかも全く身に覚えのないことをつらつらと述べられても返す言葉に困るわ。
「全く身に覚えがありませんが、どなたから伺ったのでしょう?」
「マリアだ! お前もよく知っているだろう!」
「ええ……」
呆れ顔で頷いた。
マリア・ニコル。私と同じ伯爵家の長女で温厚な人柄。知識も豊富で100年に1人の才女だとも言われている。
確かに接点はあるけれど、嫌がらせなんてするわけないじゃない。自分から評価を下げることなんてしないわ。
思わずため息が出てしまい、それを聞いたルイスが眉をつり上げる。
「なんだそのため息は! しらばっくれるのか!?」
「しらばっくれるもなにも、そんな幼稚な嫌がらせなんてしていませんわ。
そもそも、聞いたのはマリアからだけなのでしょう?」
「そ、そうだが……」
ルイスの表情に焦りが見えた。さっきまでの威勢はどこへやら、目が泳いでいる。
全く、この男はたった1人の言い分を確定事項と決めつけていたのか。呆れて言葉も出ないわ。これはすぐボロが出るわね。
「そんなに強く仰るのですから、私がやったという証拠があるのですよね?」
「証拠!? い、いや、マリアから聞いただけで……」
「たった1人の主張だけを信じて婚約破棄などと仰ったのですか!!」
私の強い怒りを含んだ言葉に場が静まり返る。
って、何で執事達まで手を止めてるのよ。恥ずかしいんだけど。
それにしても肝心のマリアの姿が見えないわね。こうなることを予測してわざと欠席したのかしら。才女というよりはずる賢いのかもしれないわ。
少し落ち着いた怒りの感情を再び湧き上がらせてルイスを睨む。彼の顔は引きつっていて、恐怖からか口端がピクピクと震えている。
「そ、その……俺の早とちりだったかも……」
「早とちりにしても酷いです!」
ルイスに詰め寄ると全身を震わせながら後退りしていた。今までこのような姿を見たことがなかったので、滑稽に映る。
何よ、その情けない顔は。伯爵家長男とは思えないわね。
結婚する前に違う一面がある事を知れてよかったわ。あ、でも婚約破棄を言い渡されたのですわね。
「婚約破棄を受け入れましょう! 貴方のような男はこちらから願い下げですわ! では、ごきげんよう!」
強くテーブルを叩いて立ち上がると足早に会場を後にする。私を呼び止める声が背後から聞こえたが、無視した。
最悪だわ。せっかく公爵閣下が招待してくださったというのに。
それに、とんでもないことになってしまったわね。婚約破棄は良いけれど、私ももう17歳。今から貰い手が現れてくれるのかしら。
「オフェリア・ピンソラス嬢」
ゲート間近で呼び止められた。しかし元婚約者の荒々しい声ではなく、落ち着いていて安心感を覚えるような声だ。
思わず足を止めて声の主を確認した私は驚愕する。櫛の通ったサラサラな銀髪に透き通るような青い目。
隣国、エウバッド公国の王太子クロディス・エウバッドその人だったからだ。
「殿下……。私に何か御用でしょうか?」
慎重に言葉を選びながら尋ねる。まさかクロディス殿下も招待されていたなんて。それにしても婚約破棄された私に何の御用なのかしら。
私の問いかけに殿下は笑みを浮かべると朗らかに語り始める。
「先程の一部始終を拝見させてもらってね。失礼なのは重々承知だが、なかなか見応えがあったよ」
「私などには勿体ないお言葉です……」
お褒めの言葉なのだろうけど全く嬉しくないわ。私のいたテーブルからここまでそこそこ距離があるのに全部聞こえてたのね。恥ずかしくて顔を合わせられないわ。
それに申し訳ない話、立ち止まってる暇はないのだけれど。背後からは忌々しい元婚約者が迫ってきているのよ。本当にしつこいわ。
「それで貴女を呼び止めた理由だけれど、私と婚約して頂けませんか?」
「へ?」
差し伸べられた手に困惑する。一部始終を見られていて、感情に流されていた私を見てもなお、そのようなことを仰っているのか。
殿下もお年頃。婚約話なんて星の数ほど舞い込んでいるはずよ。もしかして曰く付きなのかしら。
戸惑っていると元婚約者に肩を掴まれる。目が飢えた獣のようにギラギラとしていて気味が悪い。
「オフェリア! 先程は無礼な発言をしてしまい大変申し訳なかった!
どうか考え直してくれないか!」
今更何を言っているの、そっちから婚約破棄したくせに。それにコロコロ心変わりするような男の元に戻ってくるとでも思っているのかしら。
って思ったより力強いわね。このままじゃ引き戻されるわ。
「ルイス・メルガル伯爵御子息だね?」
殿下が穏やかな声で言いながら、元婚約者の手を私から引き剥がす。
元婚約者は相手を確認して目を白黒させながら叫んだ。
「ク、クロディス・エウバッド殿下!?」
「一部始終を拝見させてもらったよ。随分酷い言いがかりじゃないか」
「い、いえ、わ、私の早とちりでございまして!」
私に指摘された時より狼狽えている元婚約者を見て呆れる。少しでも良く見られようという魂胆が見え見えだ。
「貴方はまだ復縁できると思ってるのかもしれないが、彼女を見てごらんよ。私はとてもじゃないけど復縁できるとは思えないね」
殿下の言葉に乗せられたこともあり、元婚約者を思いきり睨みつけてやった。みるみる顔が青ざめてゆく。
「それでは参りましょうか、オフェリア嬢」
「はい」
再び差し伸べられた手を取った。殿下は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに温かい笑みを浮かべる。
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