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ー天災ー82

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 雄介は望に確認するかのように、もう一度、聞き直す。

「だから、いいって言ってんだろっ! 俺の気が変わらないうちに早くっ!」
「せやな、こないな事、滅多な事じゃないし……ほな……」

 今の今まで雄介だって我慢してきた。 とうとう望の押しに負けたのか自分の欲望に負けたのかは分からないのだがキスでもしようかと思ったその時この甘い雰囲気を壊すような音が鳴り響く。

「……へ? え? け、携帯!?」

 それは望のポケットに入れておいた携帯が鳴っているようだ。

 だがその音は数秒で止む。

 今までいい雰囲気だったのに、その音で完全にその雰囲気はなくなったというのか、完全にその携帯も音で冷めてしまったようだ。

 望は息を吐くと半身を起こし、その携帯を開く。

 あの震災から今の今まで携帯は鳴っていなかったのだが、やっとここで復旧してきたのであろう。

 もしこれが和也からだったら「後で覚えてろよ!」と思っていたようなのだが、それはどうやら違ったようだ。

 携帯を開くとメールマークが点滅しているのだから。 よくよくそれを見ると、どうやら和也ではなく数日前に望に宛に送られて来ていた親からのメールだったらしい。

「親からのメールだ。 『大丈夫か?』だってさ」
「……へ? そうなん? そういや、望の両親って何処におんの?」

 これは今の今まで聞いた事がない事だ。 家はあるのにその家には望の両親はいなかったからだ。

「あぁ、今は海外に住んでる」
「へ? 海外!?」

 望は再び息を吐く。

 もう完全に今のメールのせいで雄介との甘い雰囲気は消えてしまっていた。 だからなのか、

「も、いいや、とりあえず、帰ろうぜ」

 さっきまであんなに雄介に甘えてみたかったのに今は完全にメールのせいで吹っ飛んでしまった。 望はそう言うと、雄介の方は、

「せやなぁ」

 そう言って雄介はベッドから降りていく。

「ほな、行こ」
「ああ……」

 そう望は名残惜しそうには答えてはいるのだが、やはりここはもう帰るしかないだろうと思ったのか病院の方へと戻るのだ。
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