人狼ゲーム

鹿又杏奈\( ᐛ )/

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0日目の夜

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「キリのいい所まで終わらせようと思ったのが間違いだったかな…」
小さなため息をつきながらすっかり暗くなってしまった夜の森を小柄な男が小走りに駆けていく。
この男が住む村は人口百人程の小さなもので、深い森の中を切り開いて存在している。森には東西南北に1人ずつ木こりが置かれ彼らは村の猟師も兼ねていた。

北の木こりにあたる男-真人はもうじき訪れる冬に向けてより多くの木を薪にしようと森を少し深いところまで入っていたのだがここ数日は曇り空が続いていたためか忘れてしまっていたのだろう、今日が満月の夜であるということを…

「やらかしたな」
少し開けた道に出た時男の頭上は木々の隙間から覗く月が煌々と顔を出しており、大きく丸い円を描いていた。
満月の夜は狼が出る。そんな迷信を老人は愚かこの間言葉を発し出した幼子だって信じてはいない。しかし、ウワサなど半日で回ってしまうこの小さな村で人々は周りの目を気にして皆が皆満月の日は暗くなるよりだいぶと早くから家に引きこもることから、満月の日は家族で静かに過ごすことが風習となっている。
ここで男は出かける前に千代は美味しそうなパンの匂いを纏いながら家を出る俺を引き止めては今日は早く帰れと念を押していたことを思い出す。
幸い我が家は村外れにあるのだから村人たちに見られ村八分になることは無いが、満月の夜の団欒を今か今かと待つ子どもたちの顔を思い浮かべながら走る足に力を込めた。




どれくらい森の中を走ったのだろうか?
いつもならとっくに家の灯りが見えてくるであろう距離を走っているのに同じような木々がただ並ぶだけである。それどころか自身とは違うザザがさといった草むらを鳴らす音が何処からか聞こえてくる。

『満月の夜は狼が出る』

誰かの声が脳裏に流れ、冷や汗が垂れる。
腰に下げる害獣用の剣を構え敵を威嚇するが反応は無い。
…幻覚だったのだろうか?
武器を下ろし、家までの道を走る。そう、走っているはずだった。

淡く光る家が見え、暖かな我が家まであと少しと言うところまで来ていたのに気がつけば俺の左足は地面を蹴っておらず腿から下の部分が裂けるようにちぎられ地面に転がっていた。痛くて、熱くて、訳が分からない。
その内に右足、右手、左手と次々に力任せに引きちぎられていく。

痛かった。熱かった。苦しかった。でも1番はわけが分からなかった。

自身の身に何が起こっているのか分からない恐怖、でも叫ぶ訳にはいかない。だってすぐ近くに家族がいるのだ。ここで悲鳴をあげてしまえば誰かが様子を見に来てしまう。手も足も無くなった僕はもう助からないだろう。だからこそせめて彼女らに二次被害が行かないために…

 


ああ、最後に彼女たちのパンをもう一度食べたかった…

 ﹎  ﹎  ﹎  ﹎  ﹎ 

M:どうやらこの村は満月の夜に狼が出る ようですね、それでは自身に配られた役職を確認してください。決して他人には見せてはいけません。
確認できたでしょうか?それでは今宵も人間関係が破綻する殺し合い、人狼ゲームを始めましょう。

M:のどかな村で今日も一日が始まりました。村人たちは誰もかもが顔見知り、噂だってなんだって一瞬で回ってしまうほど距離の近い関係です。この中に人狼が居るなど誰が信じられるでしょうか、満月の夜ではありますが豪華な食事の用意される各々の家に村人が帰っていき、何事もなく日が沈んで行きました。

M:それでは夜のターンが始まります。今宵は特別な0日目ですので、『最初の犠牲者』に亡くなって貰いましょう。さぁさぁ、役職カードに何も書かれていない白紙を引いてしまった不運なお方。残念ながらあなたにはこのゲームにおいて出番はございません。したがって物語の生贄として今回のゲームをあの世からお楽しみください。

M:これにて0日目の夜のターンを終わります。
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