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第 2話 最恐ダンジョン、その名はブラックホール
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扉の前で途方に暮れる俺に能天気な声で受付のお姉さんは話しかける。
「おかしいですね~?、こんな事は初めてです~。」
「おかしいじゃねぇよ!」
左腕の腕輪を扉にコンコンぶつけながら俺は自分らしからぬ口調で返す。
「変ですね~、ちょとそこどいてください~」
お姉さんは俺の強めの口調にも動ぜず同じ口調で俺を退かすと扉の前に立ち自分の腕輪で扉に触れた、その瞬間お姉さんは扉の中に消えふたたび目の前に現れた。
「ルークさん、本当に勇者さんですか~?」
このお姉さんは何を言っている?俺は先程勇者認定されたばかりの正真正銘の勇者だ!
おかしいの俺じゃなくて扉か腕輪の方だろう、俺は無茶を承知でお姉さんに腕輪の交換を申し出る。
「流石にそれわ~!規則ですので。」
何が規則だ、俺と交換することが嫌なだけだろう。
「それではこうしましょう、私がルークさんの腕輪で扉に触れてみるのはどうでしょうか?」
確かに俺は腕輪が壊れていないか判ればそれで良い、俺はお姉さんの提案を承諾する。
お姉さんは俺から腕輪を受け取ると再び扉に触れる、結果は先程と同様に扉の中に消え目の前に現れるが、お姉さんの次の言葉は俺の心に刺さった。
「ルークさん、この腕輪、誰かから買いました~?」
「⁉︎」
馬鹿なことを言うなよ、苦労して手に入れた腕輪だぞ。
確かに勇者がまだ少ない時代は箔をつける為、お金持ちの間での腕輪の売買はあったと聞いているが、勇者がはいて捨てるほどいる今の時代、わざわざお金を出して買う者などいない。
第一にお姉さんが俺の腕輪でダンジョンに入れたように、万が一に俺が腕輪を誰かから買ったとしても俺がダンジョンに入れない理由にはならない。
「がんばってください~」
お姉さんの励ましが虚しく俺の背中に刺さる。
なーに、このダンジョンとは相性が悪かっただけさ。
他のダンジョンに行けば俺を優しく向かい入れてくれる筈、何しろ俺が暮らす街の周辺にはまだまだ多くのダンジョンがあるのだから。
次の日からの俺の行動は自分が攻略出来そうなダンジョンを片っ端からまわること、時には1日に2つのダンジョンを試したこともある、しかし、どのダンジョンも俺を受け入れてくれることはなく、俺の希望は1週間を過ぎた頃、疲労に変わり、1ヶ月を過ぎた頃には絶望になった。
俺はこの国にある全てのダンジョンから拒絶されてしまったのだ。
正確に言えば全てではない、ただ一つのダンジョンを残してだが、俺のなかにはこのダンジョンは入っていない。
また明日から生きる為に稼ぐ生活が続く、冒険者では獲られていた経験値も勇者では得られない、勇者はダンジョン内でしか経験値を得られないのだ、つまり俺はダンジョンに潜らない限り今以上に強くはなれない。
「元の生活に戻るだけさ」
俺は負け惜しみを言って元の生活に戻った。
前とは大きく違う点、勇者になることを夢見てがんばっていた前と勇者を諦めた今、同じ生活を続けてもその差は大きい。
しばらく止めていた酒も再開した、朝から晩まで働いたお金も食費と酒代で消えていく、後は宿屋に帰って泥のように眠るだけ、しかし、今日の俺はどうかしていた。
酒の所為で冷静な判断力を失っていたのかもしれない。
「だ・れ・だ‼︎ こんな所に物を置いたのは!」
いつものように寝る為に部屋に帰ってきた俺は部屋に入るなりよろめいて何かに躓き尻餅をついた。
この部屋は俺1人で利用している、俺以外には物を置く奴はいないのだが酔っ払いの理屈とはこんなものだ。
俺はボヤける目で床に置かれた物を見た。
「未だこんな物残していたのかよ」
そこには冒険者になった時に、なけなしのお金で買った薄ぺらい防具と安ぽっい剣が置かれている、俺はその前でへたり込んだまましばらく動かなかった。
本当にこの日の俺は冷静な判断力を失っていたのだと思う、夜が明ける頃には防具を着込み剣を持って街を飛び出していた。
行く先はこの大陸に数個ある特級ダンジョンのひとつ、この国にある最恐ダンジョンと言われる【ブラックホール】ダンジョンだ。
このダンジョンに向かう街からの馬車は無い、何故なら誰も挑戦する者がいないからだ、過去に一度だけ挑戦した者がいた、俺が冒険者見習いになった十数年前の事だ、大陸勇者につぐ実力の持ち主、高ランク国勇者のパーティーだ。
無敵を誇る国勇者の挑戦にダンジョンの扉の前は観戦する大勢の観衆で賑わったと聞くが、今、そのことを語る者は少ない。
攻略の成功を信じる大勢の観衆に見守られ国勇者はダンジョンに入って行ったが皆の期待は数秒後に絶望に変わる、ダンジョンの中から聞こえて来る断末魔の叫び声、そして静まりかえったダンジョンからは誰1人出てこなかった。
それ以来、このダンジョンに挑戦する者はなく扉の前は荒れ果てている。
俺は今、その扉の前に立っている、冷静な判断ができていればそんな事はしなかったのかもしれない、いや、どうせこのダンジョンも俺を拒むのだろうと、たかを括っていたのかもしれない。
俺は腕輪で扉に触れる、その瞬間、いつもと違う感覚が走る、扉に触れた左腕から扉の中に吸い込まれる。
「うあーーーーー‼︎」
誰一人聞く者のいない中、俺の叫び声を残して俺はダンジョンの中に消えた。
「おかしいですね~?、こんな事は初めてです~。」
「おかしいじゃねぇよ!」
左腕の腕輪を扉にコンコンぶつけながら俺は自分らしからぬ口調で返す。
「変ですね~、ちょとそこどいてください~」
お姉さんは俺の強めの口調にも動ぜず同じ口調で俺を退かすと扉の前に立ち自分の腕輪で扉に触れた、その瞬間お姉さんは扉の中に消えふたたび目の前に現れた。
「ルークさん、本当に勇者さんですか~?」
このお姉さんは何を言っている?俺は先程勇者認定されたばかりの正真正銘の勇者だ!
おかしいの俺じゃなくて扉か腕輪の方だろう、俺は無茶を承知でお姉さんに腕輪の交換を申し出る。
「流石にそれわ~!規則ですので。」
何が規則だ、俺と交換することが嫌なだけだろう。
「それではこうしましょう、私がルークさんの腕輪で扉に触れてみるのはどうでしょうか?」
確かに俺は腕輪が壊れていないか判ればそれで良い、俺はお姉さんの提案を承諾する。
お姉さんは俺から腕輪を受け取ると再び扉に触れる、結果は先程と同様に扉の中に消え目の前に現れるが、お姉さんの次の言葉は俺の心に刺さった。
「ルークさん、この腕輪、誰かから買いました~?」
「⁉︎」
馬鹿なことを言うなよ、苦労して手に入れた腕輪だぞ。
確かに勇者がまだ少ない時代は箔をつける為、お金持ちの間での腕輪の売買はあったと聞いているが、勇者がはいて捨てるほどいる今の時代、わざわざお金を出して買う者などいない。
第一にお姉さんが俺の腕輪でダンジョンに入れたように、万が一に俺が腕輪を誰かから買ったとしても俺がダンジョンに入れない理由にはならない。
「がんばってください~」
お姉さんの励ましが虚しく俺の背中に刺さる。
なーに、このダンジョンとは相性が悪かっただけさ。
他のダンジョンに行けば俺を優しく向かい入れてくれる筈、何しろ俺が暮らす街の周辺にはまだまだ多くのダンジョンがあるのだから。
次の日からの俺の行動は自分が攻略出来そうなダンジョンを片っ端からまわること、時には1日に2つのダンジョンを試したこともある、しかし、どのダンジョンも俺を受け入れてくれることはなく、俺の希望は1週間を過ぎた頃、疲労に変わり、1ヶ月を過ぎた頃には絶望になった。
俺はこの国にある全てのダンジョンから拒絶されてしまったのだ。
正確に言えば全てではない、ただ一つのダンジョンを残してだが、俺のなかにはこのダンジョンは入っていない。
また明日から生きる為に稼ぐ生活が続く、冒険者では獲られていた経験値も勇者では得られない、勇者はダンジョン内でしか経験値を得られないのだ、つまり俺はダンジョンに潜らない限り今以上に強くはなれない。
「元の生活に戻るだけさ」
俺は負け惜しみを言って元の生活に戻った。
前とは大きく違う点、勇者になることを夢見てがんばっていた前と勇者を諦めた今、同じ生活を続けてもその差は大きい。
しばらく止めていた酒も再開した、朝から晩まで働いたお金も食費と酒代で消えていく、後は宿屋に帰って泥のように眠るだけ、しかし、今日の俺はどうかしていた。
酒の所為で冷静な判断力を失っていたのかもしれない。
「だ・れ・だ‼︎ こんな所に物を置いたのは!」
いつものように寝る為に部屋に帰ってきた俺は部屋に入るなりよろめいて何かに躓き尻餅をついた。
この部屋は俺1人で利用している、俺以外には物を置く奴はいないのだが酔っ払いの理屈とはこんなものだ。
俺はボヤける目で床に置かれた物を見た。
「未だこんな物残していたのかよ」
そこには冒険者になった時に、なけなしのお金で買った薄ぺらい防具と安ぽっい剣が置かれている、俺はその前でへたり込んだまましばらく動かなかった。
本当にこの日の俺は冷静な判断力を失っていたのだと思う、夜が明ける頃には防具を着込み剣を持って街を飛び出していた。
行く先はこの大陸に数個ある特級ダンジョンのひとつ、この国にある最恐ダンジョンと言われる【ブラックホール】ダンジョンだ。
このダンジョンに向かう街からの馬車は無い、何故なら誰も挑戦する者がいないからだ、過去に一度だけ挑戦した者がいた、俺が冒険者見習いになった十数年前の事だ、大陸勇者につぐ実力の持ち主、高ランク国勇者のパーティーだ。
無敵を誇る国勇者の挑戦にダンジョンの扉の前は観戦する大勢の観衆で賑わったと聞くが、今、そのことを語る者は少ない。
攻略の成功を信じる大勢の観衆に見守られ国勇者はダンジョンに入って行ったが皆の期待は数秒後に絶望に変わる、ダンジョンの中から聞こえて来る断末魔の叫び声、そして静まりかえったダンジョンからは誰1人出てこなかった。
それ以来、このダンジョンに挑戦する者はなく扉の前は荒れ果てている。
俺は今、その扉の前に立っている、冷静な判断ができていればそんな事はしなかったのかもしれない、いや、どうせこのダンジョンも俺を拒むのだろうと、たかを括っていたのかもしれない。
俺は腕輪で扉に触れる、その瞬間、いつもと違う感覚が走る、扉に触れた左腕から扉の中に吸い込まれる。
「うあーーーーー‼︎」
誰一人聞く者のいない中、俺の叫び声を残して俺はダンジョンの中に消えた。
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