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第 5話 過去の記憶を訪ねて
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「や・つ・た~~~~‼︎」
「い・き・て・る~~~‼︎」
俺は背中の痛みと疲れを忘れて叫び声をあげながら地面を転げ回った。
そして落ち着くと今度は痛みで転げ回る。
「痛ってー、ハハッ、痛いけど、俺、生きてる」
モンスターに受けた傷が痛いのと生還できた嬉しさとで俺は笑いながら泣いていた、地面に大の字で寝転ぶと動きづらい左手でポーチから手探りでポーションを取り出すと一気に飲み干す。
辺りはすっかり夜、星空が綺麗だ、傷が治ったわけではないが痛みは少し和らいだ、人間とは現金なもので安心した途端に腹が空く。
俺は上半身を起こして辺りを見回す、ダンジョンの外でモンスターに襲われる心配は無いが野犬ぐらいはいるかもしれない。
普段ならどうってことないが今襲われると厄介、血の匂いが引き寄せるかもしれない。
「シャワーを浴びたい、」
俺はゆっくり立ち上がり街を目指して歩き出し宿屋に着くと空腹を忘れて泥の様に眠りについた。
ベッドの中で不思議な夢を見る、俺が操り人形の人形となってモンスターと戦う夢、人形となった俺は、俺の意思とは関係なくモンスターに斬りかかる、そして大きく弾き飛ばされた。
[ガシャ]という音と共に俺はベッドの下で目を覚ました。
鎧を着たまま寝てしまったようだ、俺は着替えると朝日に照らされた鎧をまじまじと見る。
ダンジョンに入れない事が決定した俺の当面の生活費としてこの鎧は幾らぐらいになるのだろう。
昨日は気づかなかったが鎧の背中の部分には深々と三本の爪痕がついている、この鎧がモンスターの攻撃を弱めてくれたおかげで俺は助かった。
声に導かれるように偶然に手に入れた鎧だが俺が生き残る為には必然だった、この鎧でなければ俺はモンスターの攻撃で死んでいた。
鎧の材質は俺みたいな素人でもわかるミスリル製、鎧の厚みの割には驚くほど軽量だ。
これはミスリルの特徴で強度が高い上に軽量と良いことづくめのようだが、一度でも鉱石から加工してしまうと再加工するのが非常に難しいという欠点がある。
そういう観点から目の前にある鎧と剣はとても売り物になるとは思えない、たとえ武具屋に持ち込んでも買い叩かれるのがオチだ。
それより俺には考えがある、鎧の胸の部分に刻まれた紋章、この街で勇者や冒険者を生業にする者なら大概の者が知っているシュタイナー家の紋章。
最近はあまり噂を聞かないが、多くの勇者を輩出した武門の名家、その縁の者の形見とあれば、相当なお礼が期待できるのではないか?
そうとなったら腹ごしらえだ、俺は宿屋の一階の酒場を兼ねた食堂に顔を出す。
「女将さん、いつもの。」
俺はカウンターで乱暴に水を注ぎ、いつもの朝飯を注文する。
「いつものって、なんだい?」
俺はコップを持ってテーブルに行きかけた足を止める、おいおい、女将さん、確かに俺は硬いパンと薄いスープの一番安い朝飯しか注文しないよ、しかも金のある時だけだ、だからってまるで初対面の様な言い方はつれないんじゃないか?
しかし、女将さんの表情は本当に初対面の者を見る目、酒場をやっているから初めてのお客さんも沢山くるが、そうしたお客さんと接する態度だ。
「女将さん、俺、ルークだよ」
「ルーク?」
「ほんとうにルークなのかい?」
女将さんは料理の手を止めると無言で洗面台のある場所を指差した。
「なんだこれわー!」
俺は鏡に映った自分の顔を見て大声をあげた、自慢の金髪が見事に白髪になってしまっている。
人間は強いストレスを受けるとこういう事が起こると言うが、まさか自分の身に怒ることになるとは、俺は肩を落としてテーブルに着く。
「ほんとうにルークなんだね。これ、サービス」
肩を落として座る俺に女将さんはサービスだと言ってパンとスープの他にカリカリベーコンを付けてくれた。
こんな所でしょぼくれていても仕方がない、腹ごしらえを終えた俺は本格的に動き出す。
なーに、この街の誰でも知っているシュタイナー家だ直ぐにたどり着けるだろう。
しかし、俺の考えは少し甘かったのかもしれない、シュタイナー家の家屋敷は既に他の者の手に渡っており、その後の消息も行方知れず。
俺は情報を求めて幾つかの酒場をまわり、その度に酒を奢らされてしまった。
が、その中の情報で有益な情報を得る、シュタイナー家は当主だった勇者がダンジョンで行方不明になった後、ダンジョン攻略が無謀だったと非難され、それがきっかけで落ちぶれていったそうだ。
今は子供と2人で下町で暮らしているそう。
俺は鎧と剣を持ってその家を訪ねた。
その家は一軒家だが下町らしい慎ましいたたずまい、俺はその扉を軽くノックする。
出てきた夫人は着ている服は俺と変わらないが纏った気品は俺とは段違い、俺は夫人に静かに訪ねたる。
「シュタイナー夫人ですか?」
シュタイナー夫人は見ず知らずの俺をいぶしがりながら返事を返した。
「そうですけど、貴方は?」
俺は布で包んでいた鎧と剣を夫人に見せる、沢山の言葉を尽くすより手っ取り早い。
俺はこの家には不釣り合いな盾が飾られた部屋の中で夫人にダンジョンでの事を事細かく説明した、夫人は静かに俺の説明を聞いているが、小刻みに手が震えている。
俺は夫人のどういったお礼をすれば、という申し出を断った、お礼目的でここまで来たが夫人に話している内にそんな気が無くなってしまったのだ。
俺は夫人に鎧と剣を渡すと席を立ち帰ろうとする。
その俺を夫人は引き止める。
「ルークさん、主人は勇者として立派な最後でしたか?」
俺はこの鎧の持ち主がどういった最後を遂げたのかをよく知らない、よく知らないが最後まで生き残ろうと必死だったのかはわかる。
俺は後ろを向いたまま夫人に「はい!」だけ答えて家を出た。
この時の俺は良い気分になって、重要な事を見逃していた。
夫人の後ろで父親の形見に向けられた視線、勇者シュタイナーの娘の視線を。
「い・き・て・る~~~‼︎」
俺は背中の痛みと疲れを忘れて叫び声をあげながら地面を転げ回った。
そして落ち着くと今度は痛みで転げ回る。
「痛ってー、ハハッ、痛いけど、俺、生きてる」
モンスターに受けた傷が痛いのと生還できた嬉しさとで俺は笑いながら泣いていた、地面に大の字で寝転ぶと動きづらい左手でポーチから手探りでポーションを取り出すと一気に飲み干す。
辺りはすっかり夜、星空が綺麗だ、傷が治ったわけではないが痛みは少し和らいだ、人間とは現金なもので安心した途端に腹が空く。
俺は上半身を起こして辺りを見回す、ダンジョンの外でモンスターに襲われる心配は無いが野犬ぐらいはいるかもしれない。
普段ならどうってことないが今襲われると厄介、血の匂いが引き寄せるかもしれない。
「シャワーを浴びたい、」
俺はゆっくり立ち上がり街を目指して歩き出し宿屋に着くと空腹を忘れて泥の様に眠りについた。
ベッドの中で不思議な夢を見る、俺が操り人形の人形となってモンスターと戦う夢、人形となった俺は、俺の意思とは関係なくモンスターに斬りかかる、そして大きく弾き飛ばされた。
[ガシャ]という音と共に俺はベッドの下で目を覚ました。
鎧を着たまま寝てしまったようだ、俺は着替えると朝日に照らされた鎧をまじまじと見る。
ダンジョンに入れない事が決定した俺の当面の生活費としてこの鎧は幾らぐらいになるのだろう。
昨日は気づかなかったが鎧の背中の部分には深々と三本の爪痕がついている、この鎧がモンスターの攻撃を弱めてくれたおかげで俺は助かった。
声に導かれるように偶然に手に入れた鎧だが俺が生き残る為には必然だった、この鎧でなければ俺はモンスターの攻撃で死んでいた。
鎧の材質は俺みたいな素人でもわかるミスリル製、鎧の厚みの割には驚くほど軽量だ。
これはミスリルの特徴で強度が高い上に軽量と良いことづくめのようだが、一度でも鉱石から加工してしまうと再加工するのが非常に難しいという欠点がある。
そういう観点から目の前にある鎧と剣はとても売り物になるとは思えない、たとえ武具屋に持ち込んでも買い叩かれるのがオチだ。
それより俺には考えがある、鎧の胸の部分に刻まれた紋章、この街で勇者や冒険者を生業にする者なら大概の者が知っているシュタイナー家の紋章。
最近はあまり噂を聞かないが、多くの勇者を輩出した武門の名家、その縁の者の形見とあれば、相当なお礼が期待できるのではないか?
そうとなったら腹ごしらえだ、俺は宿屋の一階の酒場を兼ねた食堂に顔を出す。
「女将さん、いつもの。」
俺はカウンターで乱暴に水を注ぎ、いつもの朝飯を注文する。
「いつものって、なんだい?」
俺はコップを持ってテーブルに行きかけた足を止める、おいおい、女将さん、確かに俺は硬いパンと薄いスープの一番安い朝飯しか注文しないよ、しかも金のある時だけだ、だからってまるで初対面の様な言い方はつれないんじゃないか?
しかし、女将さんの表情は本当に初対面の者を見る目、酒場をやっているから初めてのお客さんも沢山くるが、そうしたお客さんと接する態度だ。
「女将さん、俺、ルークだよ」
「ルーク?」
「ほんとうにルークなのかい?」
女将さんは料理の手を止めると無言で洗面台のある場所を指差した。
「なんだこれわー!」
俺は鏡に映った自分の顔を見て大声をあげた、自慢の金髪が見事に白髪になってしまっている。
人間は強いストレスを受けるとこういう事が起こると言うが、まさか自分の身に怒ることになるとは、俺は肩を落としてテーブルに着く。
「ほんとうにルークなんだね。これ、サービス」
肩を落として座る俺に女将さんはサービスだと言ってパンとスープの他にカリカリベーコンを付けてくれた。
こんな所でしょぼくれていても仕方がない、腹ごしらえを終えた俺は本格的に動き出す。
なーに、この街の誰でも知っているシュタイナー家だ直ぐにたどり着けるだろう。
しかし、俺の考えは少し甘かったのかもしれない、シュタイナー家の家屋敷は既に他の者の手に渡っており、その後の消息も行方知れず。
俺は情報を求めて幾つかの酒場をまわり、その度に酒を奢らされてしまった。
が、その中の情報で有益な情報を得る、シュタイナー家は当主だった勇者がダンジョンで行方不明になった後、ダンジョン攻略が無謀だったと非難され、それがきっかけで落ちぶれていったそうだ。
今は子供と2人で下町で暮らしているそう。
俺は鎧と剣を持ってその家を訪ねた。
その家は一軒家だが下町らしい慎ましいたたずまい、俺はその扉を軽くノックする。
出てきた夫人は着ている服は俺と変わらないが纏った気品は俺とは段違い、俺は夫人に静かに訪ねたる。
「シュタイナー夫人ですか?」
シュタイナー夫人は見ず知らずの俺をいぶしがりながら返事を返した。
「そうですけど、貴方は?」
俺は布で包んでいた鎧と剣を夫人に見せる、沢山の言葉を尽くすより手っ取り早い。
俺はこの家には不釣り合いな盾が飾られた部屋の中で夫人にダンジョンでの事を事細かく説明した、夫人は静かに俺の説明を聞いているが、小刻みに手が震えている。
俺は夫人のどういったお礼をすれば、という申し出を断った、お礼目的でここまで来たが夫人に話している内にそんな気が無くなってしまったのだ。
俺は夫人に鎧と剣を渡すと席を立ち帰ろうとする。
その俺を夫人は引き止める。
「ルークさん、主人は勇者として立派な最後でしたか?」
俺はこの鎧の持ち主がどういった最後を遂げたのかをよく知らない、よく知らないが最後まで生き残ろうと必死だったのかはわかる。
俺は後ろを向いたまま夫人に「はい!」だけ答えて家を出た。
この時の俺は良い気分になって、重要な事を見逃していた。
夫人の後ろで父親の形見に向けられた視線、勇者シュタイナーの娘の視線を。
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