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第 16話 攻略会議

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ガトスが用意したその金額に俺とサラは目を丸くした、この国でも有数の財力を誇る貴族の力とはこれほどのものか、この額では傭兵団はおろか軍隊だって雇える額だ。

この資金を使って俺達は負けない戦いを試みる、誰ひとり欠けることなく証を手に入れてみせる。

普通のダンジョンならサラに蒼志と上級勇者揃いのパーティーそれほど難しいことではないだろう。

しかし、俺達が挑むのは最恐ダンジョン、今のままでは五層のボスにも歯が立たない。

あのボスをなんとかしなければ俺達は6層にも行けない。

ボス以外にも問題は山積み、3人分の食料をどうやって運んで行くか、ダンジョンを進む上で体力の維持は重要でモチベーションを保つ意味でも食事の果たす役目は大きいが、その荷物を運ぶことはリスクに繋がる。

大人数の勇者パーティーでもそれは変わらない、当てして勇者という人種はプライドが高い。

戦うことに躊躇いがないが、それがパーティーの為になるとはわかっていても荷物持ちを引き受ける勇者は少ない。

冒険者でも雇えれば問題は無いのだが、この世界のルールで勇者以外はダンジョンに入れないのだ。

俺達3人の中では1番弱い俺が担えばいいのだが、これ以上皆んなの足手纏いになるのもどうかと思う。

もっとも、食料の件は俺なりの案がないわけではない。

俺は資金を提供した貴族の名を出したうえで、各ギルドにこのダンジョンの管理を共同管理というかたちでの管理を持ちかけて見ようと思う。

貴族にしてみれば証を手に入れたいだけで、このダンジョンから得られる利益などあれほどの財力の貴族にとっては微々たる物、さして興味はないはずだ。

証さえ差し出せばダンジョンの管理権には口を出さない筈。

ギルドにしてみてもギルド単独では難しかった攻略の結果の管理権の獲得が棚ぼた的に手に入る。

たとえそれが共同管理でもギルドの面目は立つ。

勿論、これは俺の予想であって、反対するギルドもあるかもしれない、上手くいったという仮定の話しではあるが。

その上で、俺は各ギルドからの選抜勇者に攻略済みの階層への物資の輸送と拠点の確保を担ってもらう。

担当する勇者にしてみても損な話しではない、ダンジョンの構造に関しては出入りする度に変わる地形変化ダンジョン故に当てにならないが、出現するモンスターの種類やダンジョンの雰囲気を知るうえでこの仕事は重要になる。

それに俺は彼等に、とっておきの餌を用意するつもり。

それは何かと言うと俺達が攻略するにあたって倒したモンスターの素材をその階層を担当する勇者パーティーに提供する案。

どのみち俺達は荷物となると素材を持っては攻略を続けられないのだし、勇者パーティーにしてみればなんの苦労もなく素材が手に入る。

この2歩進んで1歩さがる案を実行するかどうかは蒼志が合流して皆と相談した後の話しになるが、上手くいけば食料の心配はしなくてすみそうだ。

次の問題はモンスターの出現率、階層を重ねる程にモンスターの出現率は上がっていく、ダンジョンなのだから当たり前の話しなのだが、その変動率が半端ではない。

俺達は(俺は)基本、戦わないで済むのなら戦わないで済ませたい。

1、モンスターに出会わないよう注意する。

2、運悪くモンスターに出会ったら逃げる。

3、逃げられなかったら戦う。

の基本戦略を柱にしてきたがこれからはそういうわけにもいかない。

運任せの戦いができるのはいままでの階層までの話し、モンスターに出会ってしまったら逃げることも難しいこれからの階層では通用しなくなる。

今のところその対策は思いつかないが、ダンジョンに挑むまでには解決しなくてはならない問題だ。

そして最後は装備の問題、いよいよこの資金を使う時。

物資は輸送隊に任せるとして、身につける携帯品や装備は厳選したい、サラにしても蒼志にしても使い慣れた武器や防具は変えたくはないだろう。

俺はといえば俺の場合は少し事情が違う、俺の装備はシュタイナーからの借り物、慣れてもいないし十分でもない。

なにより気になるのは鎧と剣、それに盾に刻まれた新しい刻印の効果。

俺はどうしてもこの効果がどんな物かを事前に知りたい、いざ戦いが始まってからハズレスキルだったでは取り返しがつかない。

俺の装備に刻まれた刻印の効果は何故かダンジョンでの戦いでしか発揮されない、ダンジョンの外で剣を振るってもただの剣撃にしかならなかった。

鎧にしても、こうして普段から着込んでいるが強化されているようには思えず、盾にいたってはどんなものかすらわからない。

そこで俺はドワーフの鍛冶屋を頼ってみようと思う。

勇者と冒険者が多く集うこの街に彼等目当てで集まった鍛冶屋、中でもドワーフの鍛冶屋は別格で、装備をハンマーで叩いただけで持ち主の強さから装備の性能までわかるなどと噂されている。

しかし、彼が店を構えている場所が少し問題で、下町でも特に危ない人達が多くいる滅多に人が寄り付かない場所に隠れるように店を構えている。

こんな場所にサラを連れて行くのは気が引けるがサラは俺より強かった。

鑑定してもらった結果は期待以上のもの、盾は衝撃吸収、鎧は重量軽減とそれなりだったが、特筆すべきは剣に付与された効果、なんと剣には衝撃波の発生スキルが付与された。








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