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幼馴染の過去2。

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王宮の庭園で穏やかな日常を送るアランとローゼに対し、レオンは唐突に言った。

「話があるんだ。」といつもよりどこか真剣そうにいうレオンは、真剣に話す事にあまり慣れてないのであろう、ポリポリと髪をかきながら、「あー、えっと。」と話を続けるのをどこか躊躇っている。

でも、アランには今からレオンが言おうとしている事が何となくわかった。
何と言っても、真剣に話すレオンの後ろで赤い毛がフワフワと揺れているのだ。

「レオン、話って???」

小首を傾げ、アランを見て「何かな?」と小さく聞いてくるローゼに対し、嫌、、赤い毛フワフワしてるだろ、と思いつつも、「なんだろね。」と返しといた。

「ほら、セレシア出てこい。」

レオンの背に隠れていた赤い毛は、ヒョッコリと少し顔を出して、アランとローゼをチラチラと見た後「せっ、、セレシアです。」と今にも消え入りそうな声で挨拶をするのだ。

そして、また直ぐにレオンの背の後ろに引っ込んだ。

「もー、結構有名な話だと思うけどさ、俺のとーさん再婚したじゃん?」

「あぁ、確か男爵家の未亡人だった方と結婚したって聞いたが。」

「そーそー、そんでこれ、この前から妹。」

「だから、今日から宜しく。」

何とも適当なお願いをした後レオンはアランとローゼの許可も取らず、その日から毎日セレシアを三人で集まる場所へと連れて来た。

「セレシア、おはよう。」

「あっ、えっと、、あの。おはようございます。」

「あっ、セレシアの肩に虫!」

「えっ、ええっ!!とっ、とととって!!!とって!」

虫をとってとセレシアが暴れ回る度に、赤い髪がフワフワフワフワと舞うのをレオンがポーっと目で追いかけている事にもアランは気づいていた。

初めこそ、ビクビクと怯えていたセレシアだが、アランが揶揄えば揶揄うだけセレシアはこの場に慣れていき、時間が経てば環境に慣れたのか「アラン!ローゼ!レオン!」と皆に懐いた。

真っ赤な燃えるように赤い髪を目で追えば、少し垂れた瞳を更に下げ、ニッコリと微笑むセレシアの事も、レオンとローゼと同じくらいアランは気に入っている。

「ほら、セレシアよく見とけ。」

「うん、なあに、アラン?」

ジッと自分の青い瞳をセレシアの深緑色の瞳に見させ続ければ、次第にその瞳はトロンと虚になっていく。

「ん、、、??あれ、、?アラン、?」

5分程見つめ合えば、セレシアの頬は赤くなり、息苦しいのか肩で息をし始めた。
ハッハッと苦しそうに息をしだすセレシアを見て異常に気付いたレオンがセレシアの肩を揺さぶる。

「ハッ、あ、ら、??アラン。」

「おい、アラン何してんだよ!」

レオンの少し怒気の孕む声は、セレシアにもう聞こえていないのだろう。
「アラン、、アラン!好きぃ!」

セレシアはレオンの怒り声も気にせず、ギュウっとアランに抱きつくのである。
「あっ!おいセレシア!こら!」

レオンはセレシアとアランを引き離すのに必死だが、アランはその姿を見てケタケタと笑うのだ。

「凄いだろ!魅力の魔法って書いてあったからこの一か月ずっと練習してたんだよ。」

「いや、お前誰かかけたいやつとかいるの?」

レオンに問われ、初めて気付いたが、かけたい人など、確かにいなかった。

ただ、レオンが炎の魔法をどんどん上達させていくから、適当に取った本から覚えただけなのである。

「アラン~!アラン~!」

「うわ!どーすんだよこれ!セレシアお前の事好きになっちゃったじゃねえか!」

「五分くらい見せただけだから、すぐに解けるよ。」

術は確かにそれから数十分もすれば解けたが、セレシアがアランに向ける視線は術が溶けてからもポオッと惚けていた事に、ローゼ以外は気づいてなどいない。


ーー
アランが家に帰れば、今日も喚き声が聞こえて来た。
先程までケタケタと笑っていたのが嘘のように、今のアランの表情は死人のように無である。

静かにそっと、バレぬようにと自室へ向かおうとするが、アランの部屋の前で待ってたのであろう、アランの母は部屋の前にジッと立っていた。

「何してんのよ、、、。」

どうやら、今日も父との間で何かあったらしい。
今日も母の機嫌はすこぶる悪い。

「どうしました、母上?」

「どうしたもこうしたも!!!またあの女が来やがった!!お前のせいで!!!お前のせいで!!」

目を血走らせた母はズンズンとアランの元に近づき、アランの髪を掴んだ。
ブチブチと音が聞こえたから、何本か抜けただろうなとは思ったが、どうでもいい。

アランは抵抗する気すら無いのだろう。

ズルズルズルズルとアランの髪を引っ張り、どこに連れていくのかと思えば、アランを父の執務室に放置した。

最早、アランには母の考える事など理解不能である。

勝手に出てってもまた怒られるだろうと、少し痛む頭皮を抑えていれば、キィッと扉が開く音がした。

音の方向を見れば、母と目があった。

母の腕には魔法で熱湯に変えた湯が両手一杯のバケツに入っているのだ。

「あっ、母上、、、辞めてください、、母上。」

ブンブンと首を振り、初めて抵抗した。

熱くも無いのにダクダクと体中から体液という体液が流れ出している気がした。

「お前なんて!お前なんて!!!」

母の言うお前とは一体誰の事だろうか。

アランが父かそれとも浮気相手の娼婦か。
まだまだいるであろう父の浮気相手か。

もう、どれでもいいが、、私は何かしただろうか。
ただ、抱きしめられて愛されたいと願っただけなのだ。

「やっ、辞めてください。」と言うアランの目からは涙がダバダバと溢れ出し、バシャンという音と共に、全身が溶けたのでは無いかと言うほどの熱さに耐えられず、ギャァァァァ!!!!と雄叫びをあげた時、
泣き叫ぶアランと母の目がその日初めてあった。

アランはその日初めて、呆然と立ち尽くしアランを心配すらしない母を憎いと思ったのだ。
憎々しげに母を見れば、母は何故かポロポロと泣き出し、「ごめんなさい。アラン。あぁ、アランごめんなさい。これからは大切にします。貴方の事を。母様を許して。」魅力の魔法をアランは使った覚えなどないのに、母はアランに縋り付いて来たのだ。

アランは痛みと余りの熱さに嘔吐しながら、己の傷を治していく。

全て直せば、「ごめんなさい!ごめんなさい!愛してるわアラン!私の可愛い息子。もう夫なんてどうでもいい。貴方だけが私の宝物よ。」と母に強く抱きしめられた。


アランは何故かまだ止まらぬ涙を溢しつつ思う。

あぁ、こんなに簡単な事だったのかと。



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