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第25話 グルメ大会があったので優勝しようと思います!
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たまたま覗いた露店で奇跡的にマンドラゴラを購入することができた。
それだけでなく、店主から面白い話も聞くことができた。
なんでも、今日はグルメ大会が開催されるらしい。
王国で一番の料理人を決める大会で、優勝者は王都最高級のレストランでタダ食いできるとのこと。
開催時間はもう少し先みたいだが、ワンチャン飛び入り参加とかできたりしねぇかなぁ。
さすがにこんなよくわからん一般人じゃ無理か……?
とりあえず行くだけ行ってみよう。
「お、あれが受付の人っぽい」
『我が頼んでこよう!』
「じゃあ任せるわ」
零華が自信ありげに言うので俺は任せることにした。
突如現れたフェンリルの神々しい姿に受付の人たちがビビり散らかす。
零華はここぞとばかりに俺の料理がいかにおいしいか力説し始めた。
『……うんたらこうたらあーだこーだでな! なぎさの料理はとんでもなく素晴らしいのだ! 千年以上生きている美食家の我ですら、かつてないほどのうまさに魅了されてしまったほどの腕前だぞ!』
「う、上の者を呼んでまいりますので少々お待ちくださいっ!」
受付の人が慌てた様子で偉い人を呼んでくる。
零華が偉い人にも同じ説明をした結果、なんか俺も参加できることになった。
「料理の腕だけで伝説の神獣様を手なずけたという実績であれば、そこらの有名料理人ですら霞むほどの箔がつきます」
『そうだろうそうだろう!』
「本大会への参加資格は充分に満たしていると言えるでしょう」
『というわけで我らも出場するぞ!』
「やったろうぜ、零華!」
『おうよ!』
「審査メニューは二品まで。何を作るかはすべて自由です。ご健闘をお祈り申し上げます」
こうして飛び入り参加を果たした俺たちは、意気揚々と大会に出場した。
うわー、いかにもミシュランシェフですみたいなオーラの人たちしかいねぇ。
実況の人の選手紹介も高名な肩書きばっかだ。
みんな料理に人生を賭けてきたんだろうな。
『最後の選手は飛び入り参加のスペシャルゲスト、星宮なぎさ~! 無名だからと侮るなかれ、彼女は料理のおいしさで神獣のフェンリル様を手なずけた実力者だ~!』
「なんと!? それほどまでの実力者だとは……!」
「料理人人生でこれほどまでに燃える競い合いをできるとは僥倖ッ!」
「腕が鳴りますねぇ」
選手たちは俺の実績を知るなり、対抗意識を燃やしたり調理服を引きちぎって上半身の筋肉を膨張させたりし始めた。
審査員も興味深そうな目で俺を見る。
『初出場のなぎさ選手! 意気込みを一言お願いします!』
「世界にはこんな名言がある。──“人の金で食う焼肉はうまい”。なら、タダで食う高級レストランなんてバチクソうまいに決まってんだろ! というわけで優勝します!」
『なぎさ選手、かつてないほど意味不明な理由で出場していることが明らかになりましたー! 今大会一のダークホースと言っても過言ではないでしょう! ……ところで、なぜフェンリル様まで出場しているのでしょうか!?』
『なぜって我も料理を手伝うためだが? 我の爪はダマスカス包丁なみによく切れるぜ!』
『フェンリル様の爪に匹敵するダマスカス包丁とはいったい……!? 疑問は置いといて、後ろの従魔たちも料理をするのでしょうか!?』
「いや、こいつらはBGM担当だ」
龍之介がバイオリン。
横島がシンバルと演出担当。
ゴリマックスがグランドピアノだ。
レッツ、ミュージックカモォ~ン!
激しく燃えるような熱いBGMを頼むぜ!
『なぎさよ、作戦はどうする?』
「相手の土俵、洋食で勝負する。食べ慣れた料理でかつてないほどのおいしさを体験したほうがインパクトはデケェだろ」
『了解!』
メニューはどうするかだが、実は【アイテムボックス】の中に一品いいのがあるんだよな。
ちょっと聞いてみるか?
「【アイテムボックス】の中に入ってる料理を使うのはありですかー?」
『オッケーでーす! この大会では、食材・調味料・調理技術などの知識、磨いてきた調理技術と経験、自分自身が持っている素質……スキルや魔法のことですね! そのすべてを駆使して最高の料理を作ってもらうのが目的! おいしさこそが正義なのです!』
ほほーう。ならば一切自重せずにやってやるか!
魔境産の高ランク魔物食材に地球の食材や調味料、調理道具。
そして俺が培ってきた料理知識と技術。
そのすべてを活用してやる!
『もう一品は何にするのだ?』
「特上黒毛ダンジョン牛フィレ肉のポワレ、ロッシーニ風だ」
『ほほう。どんな料理か想像もつかんから、ひとまず我は盛りつけ用の野菜を調理するとしよう』
牛フィレ肉のポワレ、ロッシーニ風は牛フィレ肉とフォアグラとトリュフを使った贅沢な料理だ。
ちなみにこれらの食材はダンジョンで手に入れてきた。
大砲で飛んでいった先にあったあのダンジョンで。
まずは肉とフォアグラに塩こしょうして五分ほど置いておく。
その間にソースづくり開始だ。
赤ワインとマディラワインとエシャロットを煮詰め、フォン・ド・ボーで味を調整する。
ちなみにこのフォン・ド・ボーは自作したやつだ。
特上黒毛ダンジョン牛(子牛)のドロップアイテムを使った自慢の逸品だぜ!
「最後に刻んだトリュフをフランベして加えたらソースの完成!」
トリュフの香りがあたりに広がった。
濃厚ないい匂いだ。
これだけで食欲が抑えきれなくなりそうだぜ。
『フェンリル様! フェンリル様っ! とんでもない量のヨダレが出ておりますよ! なぎさ選手の周りにはそれほどまでいい匂いが漂っているのでしょうか!? 実況席からは何もわからないのが残念ですっ!』
ソースは時間停止効果のある【アイテムボックス】で一時保存。
後は肉とフォアグラを焼くだけだ。
まずはフォアグラから。
表面はカリッと、中はふわとろになるよう絶妙な加減で火を通す。
「ここだッ! よし、完ぺき!」
『よっ! さすがなぎさ!』
次は牛フィレ肉。
焼く時のポイントは、ミディアムレアに仕上げるのとアロゼすることの二つだ。
アロゼというのは、ポワレの途中でフライパンの中の油を肉にかける工程を指す。
食材から染み出た肉汁や脂などのうまみをかけることで、食材の風味がより豊かになるぞ。
「焼肉マスターと呼ばれた俺の焼き加減を見たまえ」
焼き上がった牛フィレ肉をカットする。
断面の中心はきれいなピンク色をしていた。
「肉とフォアグラを盛りつけたらソースをかけてっと。後は野菜を飾りつけるだけだが……」
そのタイミングで俺と零華の腹がぐぅぅぅ~と鳴った。
『……なあ、これ我らで食べないか?』
まだ調理タイムはいっぱい残っている。
盛りつけ用の野菜とソースさえ残しておけば、もう一度ポワレを作るのに二十分もかからない。
肉とフォアグラに下味つけて焼いて盛りつけるだけだしな。
「いったん俺らで食っとくか。腹減ったしな!」
『いただきま~す!』
「うんめ~!」
ありえないほどうまい牛肉。
そこにフォアグラのまろやかな食感とうまみ、トリュフソースの濃厚な香りとうまみが合わさって、もう言葉では言い表せないほど素晴らしい料理ができあがっていた。
『審査メニューを自分たちで食べ始めたぁ!? なぎさ選手とフェンリル様が前代未聞の行動に出ておりますッ! マイペースすぎる!』
ポワレはとんでもないくらいうますぎたせいで、三回もおかわりした後に審査用を提出することになった。
盛りつけだけでなく皿も高級感のあるものを【創造】したので、見栄えのよさは高級フレンチと比較しても謙遜ない仕上がりだ。
そしてもう一品は【アイテムボックス】内で保存していたコンソメスープを提出した。
家庭料理の肉と野菜を煮込んだコンソメスープでも充分うまいが、たまには本格的なものも作ろうと思ってガチったやつだからな。
ガルーダブイヨンから手作りして完ぺきに澄み切った状態まで仕上げたぞ!
『さあ! なぎさ選手の料理を審査員が今口にしました! 気になる結果は……っ!?』
審査員たちは料理を一口食べるなり衝撃を受けた様子で固まってしまった。
うますぎて意識が飛んじまったんだろうな!
「な、なんだこれは……ッ!?」
「うまい……ッ! うますぎるッ!!!」
「これほどまでおいしいコンソメスープは飲んだことがありませんわ!」
「この牛フィレ肉、我が店で使っている最高級のものですら比べ物にならないほどうまい……!」
麗華とランチタイムしてたら料理の提出が最後になってしまったので、審査員が俺の料理を食べ終わるなりすぐに結果が発表された。
『グルメ大会の優勝者は……………………なぎさ選手ですッ!!! 審査員満場一致でなぎさ選手に投票されましたッ!!!』
よっしゃーーー!!!
これで高級レストランタダ食いできるぜ!
『やったな、なぎさ!』
「零華も手伝いありがとな!」
人化した零華とハイタッチしていると、審査員や他の選手たちが話しかけてきた。
「なぎさ選手よ。おかわりしてもいいだろうか?」
「もっと食べたいですわ!」
「俺もコンソメスープを作ったのだが、完全に負けてしまった。よければ貴殿のコンソメスープを味見させていただきたい」
「料理人として、神獣様を手なずけたほどの味を体験してみてぇんだ」
『我もおかわりしたい!』
ちょうど俺も腹減ってたしセカンドランチタイムにするか!
こうしてグルメ大会は、俺の料理をみんなで食べる会になって終わりを迎えた。
◇◇◇◇
「お待たせいたしました。ジャイアントロックバードのコンフィでございます」
グルメ大会で優勝した後。
俺たちは王都で一番有名な高級レストランを訪れていた。
「あら、大変おいしいコンフィですこと。至福のひと時ですわ~」
俺はナイフとフォークでお上品にコンフィを食べる。
『美味ですわ。私を満足させるなんてやりますわね』
人化した零華もまた貴族令嬢のようにお上品に食べていた。
端麗な容姿も合わさって大変様になっている。
「……二人ともなんでお嬢様口調なんですか。普段と違いすぎて気持ち悪いんですけど」
普段はガサツな俺たちだが、実はやろうと思えばお嬢様みたいにお上品にできるんだぜ!
どうだ? 驚いただろ!
「というか二人ともよくそんなに食べれますね!? さっきセカンドランチタイムしたばっかなのに」
『それはそれ、これはこれですわ』
「サードランチタイムは別腹でしてよ」
「別腹とかいう次元じゃない食欲すぎる」
その後も俺たちはコース料理を堪能する。
ウェイトレスがデザートを持ってきたちょうどその時、偉い感じの人が慌てた様子でやって来た。
ん? なんか問題でも起こったのか?
「お客様! 緊急事態でございます! 王都の近くに水竜の群れが出現したそうでして、冒険者ギルドから市民の皆様方は避難していただくよう連絡が入りました! お客様もお早めにご避難ください!」
「なんですって!? デザートを残すなんてありえないわ! アンタたちささっと食べちゃうわよ!」
「お嬢様じゃなくてオバサン口調になっちゃってますよ」
俺たちは急いでデザートを食べてから店を出る。
外は避難活動で慌ただしくなっていた。
「こういう時は冒険者ギルドに向かいましょう! 情報を得るにはギルドが一番です!」
「なるほど」
さすが元冒険者!
シロナの助言で俺たちはギルドに向かう。
中に入ると、大ケガを負った冒険者たちが治療活動を受けているところだった。
「お久しぶりです、ギルマス。シロナです。何があったんですか?」
「……おお、本当にレイスに……いや、驚いてる暇はないな。王都のすぐ近くの海域に水竜の群れが出現した。倒れているこいつらによると、群れの中には水竜王の姿もあったらしい。なぜかはわからんが、好戦的で凶暴な水竜の群れが回遊ルートを外れて王都の近くまで来ている。推定危険度はSランク最上位だ」
「「「Sランク最上位……嘘だろ……」」」
話を聞いていた冒険者たちが絶望の声を上げる。
重苦しい空気がギルドを支配した。
「王都の全戦力を投入しても甚大な被害は免れないだろうな……」
シロナが小声で俺たちに話しかけてくる。
王都を……故郷を守ってほしいとお願いされた。
「任せとけ」
俺はシロナの肩に手を置く。
友達の頼みを断ったりしねぇよ。
それに、ちょうど気になってたんだ。
「ドラゴンってうまいのか?」
「雰囲気ぶち壊しだよ」
それだけでなく、店主から面白い話も聞くことができた。
なんでも、今日はグルメ大会が開催されるらしい。
王国で一番の料理人を決める大会で、優勝者は王都最高級のレストランでタダ食いできるとのこと。
開催時間はもう少し先みたいだが、ワンチャン飛び入り参加とかできたりしねぇかなぁ。
さすがにこんなよくわからん一般人じゃ無理か……?
とりあえず行くだけ行ってみよう。
「お、あれが受付の人っぽい」
『我が頼んでこよう!』
「じゃあ任せるわ」
零華が自信ありげに言うので俺は任せることにした。
突如現れたフェンリルの神々しい姿に受付の人たちがビビり散らかす。
零華はここぞとばかりに俺の料理がいかにおいしいか力説し始めた。
『……うんたらこうたらあーだこーだでな! なぎさの料理はとんでもなく素晴らしいのだ! 千年以上生きている美食家の我ですら、かつてないほどのうまさに魅了されてしまったほどの腕前だぞ!』
「う、上の者を呼んでまいりますので少々お待ちくださいっ!」
受付の人が慌てた様子で偉い人を呼んでくる。
零華が偉い人にも同じ説明をした結果、なんか俺も参加できることになった。
「料理の腕だけで伝説の神獣様を手なずけたという実績であれば、そこらの有名料理人ですら霞むほどの箔がつきます」
『そうだろうそうだろう!』
「本大会への参加資格は充分に満たしていると言えるでしょう」
『というわけで我らも出場するぞ!』
「やったろうぜ、零華!」
『おうよ!』
「審査メニューは二品まで。何を作るかはすべて自由です。ご健闘をお祈り申し上げます」
こうして飛び入り参加を果たした俺たちは、意気揚々と大会に出場した。
うわー、いかにもミシュランシェフですみたいなオーラの人たちしかいねぇ。
実況の人の選手紹介も高名な肩書きばっかだ。
みんな料理に人生を賭けてきたんだろうな。
『最後の選手は飛び入り参加のスペシャルゲスト、星宮なぎさ~! 無名だからと侮るなかれ、彼女は料理のおいしさで神獣のフェンリル様を手なずけた実力者だ~!』
「なんと!? それほどまでの実力者だとは……!」
「料理人人生でこれほどまでに燃える競い合いをできるとは僥倖ッ!」
「腕が鳴りますねぇ」
選手たちは俺の実績を知るなり、対抗意識を燃やしたり調理服を引きちぎって上半身の筋肉を膨張させたりし始めた。
審査員も興味深そうな目で俺を見る。
『初出場のなぎさ選手! 意気込みを一言お願いします!』
「世界にはこんな名言がある。──“人の金で食う焼肉はうまい”。なら、タダで食う高級レストランなんてバチクソうまいに決まってんだろ! というわけで優勝します!」
『なぎさ選手、かつてないほど意味不明な理由で出場していることが明らかになりましたー! 今大会一のダークホースと言っても過言ではないでしょう! ……ところで、なぜフェンリル様まで出場しているのでしょうか!?』
『なぜって我も料理を手伝うためだが? 我の爪はダマスカス包丁なみによく切れるぜ!』
『フェンリル様の爪に匹敵するダマスカス包丁とはいったい……!? 疑問は置いといて、後ろの従魔たちも料理をするのでしょうか!?』
「いや、こいつらはBGM担当だ」
龍之介がバイオリン。
横島がシンバルと演出担当。
ゴリマックスがグランドピアノだ。
レッツ、ミュージックカモォ~ン!
激しく燃えるような熱いBGMを頼むぜ!
『なぎさよ、作戦はどうする?』
「相手の土俵、洋食で勝負する。食べ慣れた料理でかつてないほどのおいしさを体験したほうがインパクトはデケェだろ」
『了解!』
メニューはどうするかだが、実は【アイテムボックス】の中に一品いいのがあるんだよな。
ちょっと聞いてみるか?
「【アイテムボックス】の中に入ってる料理を使うのはありですかー?」
『オッケーでーす! この大会では、食材・調味料・調理技術などの知識、磨いてきた調理技術と経験、自分自身が持っている素質……スキルや魔法のことですね! そのすべてを駆使して最高の料理を作ってもらうのが目的! おいしさこそが正義なのです!』
ほほーう。ならば一切自重せずにやってやるか!
魔境産の高ランク魔物食材に地球の食材や調味料、調理道具。
そして俺が培ってきた料理知識と技術。
そのすべてを活用してやる!
『もう一品は何にするのだ?』
「特上黒毛ダンジョン牛フィレ肉のポワレ、ロッシーニ風だ」
『ほほう。どんな料理か想像もつかんから、ひとまず我は盛りつけ用の野菜を調理するとしよう』
牛フィレ肉のポワレ、ロッシーニ風は牛フィレ肉とフォアグラとトリュフを使った贅沢な料理だ。
ちなみにこれらの食材はダンジョンで手に入れてきた。
大砲で飛んでいった先にあったあのダンジョンで。
まずは肉とフォアグラに塩こしょうして五分ほど置いておく。
その間にソースづくり開始だ。
赤ワインとマディラワインとエシャロットを煮詰め、フォン・ド・ボーで味を調整する。
ちなみにこのフォン・ド・ボーは自作したやつだ。
特上黒毛ダンジョン牛(子牛)のドロップアイテムを使った自慢の逸品だぜ!
「最後に刻んだトリュフをフランベして加えたらソースの完成!」
トリュフの香りがあたりに広がった。
濃厚ないい匂いだ。
これだけで食欲が抑えきれなくなりそうだぜ。
『フェンリル様! フェンリル様っ! とんでもない量のヨダレが出ておりますよ! なぎさ選手の周りにはそれほどまでいい匂いが漂っているのでしょうか!? 実況席からは何もわからないのが残念ですっ!』
ソースは時間停止効果のある【アイテムボックス】で一時保存。
後は肉とフォアグラを焼くだけだ。
まずはフォアグラから。
表面はカリッと、中はふわとろになるよう絶妙な加減で火を通す。
「ここだッ! よし、完ぺき!」
『よっ! さすがなぎさ!』
次は牛フィレ肉。
焼く時のポイントは、ミディアムレアに仕上げるのとアロゼすることの二つだ。
アロゼというのは、ポワレの途中でフライパンの中の油を肉にかける工程を指す。
食材から染み出た肉汁や脂などのうまみをかけることで、食材の風味がより豊かになるぞ。
「焼肉マスターと呼ばれた俺の焼き加減を見たまえ」
焼き上がった牛フィレ肉をカットする。
断面の中心はきれいなピンク色をしていた。
「肉とフォアグラを盛りつけたらソースをかけてっと。後は野菜を飾りつけるだけだが……」
そのタイミングで俺と零華の腹がぐぅぅぅ~と鳴った。
『……なあ、これ我らで食べないか?』
まだ調理タイムはいっぱい残っている。
盛りつけ用の野菜とソースさえ残しておけば、もう一度ポワレを作るのに二十分もかからない。
肉とフォアグラに下味つけて焼いて盛りつけるだけだしな。
「いったん俺らで食っとくか。腹減ったしな!」
『いただきま~す!』
「うんめ~!」
ありえないほどうまい牛肉。
そこにフォアグラのまろやかな食感とうまみ、トリュフソースの濃厚な香りとうまみが合わさって、もう言葉では言い表せないほど素晴らしい料理ができあがっていた。
『審査メニューを自分たちで食べ始めたぁ!? なぎさ選手とフェンリル様が前代未聞の行動に出ておりますッ! マイペースすぎる!』
ポワレはとんでもないくらいうますぎたせいで、三回もおかわりした後に審査用を提出することになった。
盛りつけだけでなく皿も高級感のあるものを【創造】したので、見栄えのよさは高級フレンチと比較しても謙遜ない仕上がりだ。
そしてもう一品は【アイテムボックス】内で保存していたコンソメスープを提出した。
家庭料理の肉と野菜を煮込んだコンソメスープでも充分うまいが、たまには本格的なものも作ろうと思ってガチったやつだからな。
ガルーダブイヨンから手作りして完ぺきに澄み切った状態まで仕上げたぞ!
『さあ! なぎさ選手の料理を審査員が今口にしました! 気になる結果は……っ!?』
審査員たちは料理を一口食べるなり衝撃を受けた様子で固まってしまった。
うますぎて意識が飛んじまったんだろうな!
「な、なんだこれは……ッ!?」
「うまい……ッ! うますぎるッ!!!」
「これほどまでおいしいコンソメスープは飲んだことがありませんわ!」
「この牛フィレ肉、我が店で使っている最高級のものですら比べ物にならないほどうまい……!」
麗華とランチタイムしてたら料理の提出が最後になってしまったので、審査員が俺の料理を食べ終わるなりすぐに結果が発表された。
『グルメ大会の優勝者は……………………なぎさ選手ですッ!!! 審査員満場一致でなぎさ選手に投票されましたッ!!!』
よっしゃーーー!!!
これで高級レストランタダ食いできるぜ!
『やったな、なぎさ!』
「零華も手伝いありがとな!」
人化した零華とハイタッチしていると、審査員や他の選手たちが話しかけてきた。
「なぎさ選手よ。おかわりしてもいいだろうか?」
「もっと食べたいですわ!」
「俺もコンソメスープを作ったのだが、完全に負けてしまった。よければ貴殿のコンソメスープを味見させていただきたい」
「料理人として、神獣様を手なずけたほどの味を体験してみてぇんだ」
『我もおかわりしたい!』
ちょうど俺も腹減ってたしセカンドランチタイムにするか!
こうしてグルメ大会は、俺の料理をみんなで食べる会になって終わりを迎えた。
◇◇◇◇
「お待たせいたしました。ジャイアントロックバードのコンフィでございます」
グルメ大会で優勝した後。
俺たちは王都で一番有名な高級レストランを訪れていた。
「あら、大変おいしいコンフィですこと。至福のひと時ですわ~」
俺はナイフとフォークでお上品にコンフィを食べる。
『美味ですわ。私を満足させるなんてやりますわね』
人化した零華もまた貴族令嬢のようにお上品に食べていた。
端麗な容姿も合わさって大変様になっている。
「……二人ともなんでお嬢様口調なんですか。普段と違いすぎて気持ち悪いんですけど」
普段はガサツな俺たちだが、実はやろうと思えばお嬢様みたいにお上品にできるんだぜ!
どうだ? 驚いただろ!
「というか二人ともよくそんなに食べれますね!? さっきセカンドランチタイムしたばっかなのに」
『それはそれ、これはこれですわ』
「サードランチタイムは別腹でしてよ」
「別腹とかいう次元じゃない食欲すぎる」
その後も俺たちはコース料理を堪能する。
ウェイトレスがデザートを持ってきたちょうどその時、偉い感じの人が慌てた様子でやって来た。
ん? なんか問題でも起こったのか?
「お客様! 緊急事態でございます! 王都の近くに水竜の群れが出現したそうでして、冒険者ギルドから市民の皆様方は避難していただくよう連絡が入りました! お客様もお早めにご避難ください!」
「なんですって!? デザートを残すなんてありえないわ! アンタたちささっと食べちゃうわよ!」
「お嬢様じゃなくてオバサン口調になっちゃってますよ」
俺たちは急いでデザートを食べてから店を出る。
外は避難活動で慌ただしくなっていた。
「こういう時は冒険者ギルドに向かいましょう! 情報を得るにはギルドが一番です!」
「なるほど」
さすが元冒険者!
シロナの助言で俺たちはギルドに向かう。
中に入ると、大ケガを負った冒険者たちが治療活動を受けているところだった。
「お久しぶりです、ギルマス。シロナです。何があったんですか?」
「……おお、本当にレイスに……いや、驚いてる暇はないな。王都のすぐ近くの海域に水竜の群れが出現した。倒れているこいつらによると、群れの中には水竜王の姿もあったらしい。なぜかはわからんが、好戦的で凶暴な水竜の群れが回遊ルートを外れて王都の近くまで来ている。推定危険度はSランク最上位だ」
「「「Sランク最上位……嘘だろ……」」」
話を聞いていた冒険者たちが絶望の声を上げる。
重苦しい空気がギルドを支配した。
「王都の全戦力を投入しても甚大な被害は免れないだろうな……」
シロナが小声で俺たちに話しかけてくる。
王都を……故郷を守ってほしいとお願いされた。
「任せとけ」
俺はシロナの肩に手を置く。
友達の頼みを断ったりしねぇよ。
それに、ちょうど気になってたんだ。
「ドラゴンってうまいのか?」
「雰囲気ぶち壊しだよ」
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スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。
たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。
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