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21 仕返し
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ルアージュ暗殺未遂事件から一夜が明けた。
「暗殺者たちはまだ捕まらんのか」
「申し訳ございません。急ぎ、目撃情報を集めているところでございます」
宰相の答えに陛下の顔は曇る。
ルアージュの護衛一名が死亡。二名は重症である。
この王国の後継であるルアージュが命を狙われたのは初めてのことであった。
ルアージュがシャロンの機転で無事だったのは不幸中の幸いだった。
「調査を続行せよ。それと、今後、ルアージュの護衛を増やすように」
「はっ」
それ以来、ルアージュには20人もの護衛が付くようになった。
どこに行くにも護衛たちがついてくる。
学園の廊下を歩けば何かの団体のようにぞろぞろとルアージュを護衛たちが囲んで歩く。
シャロンのクラスに顔を出しに行くも、護衛たちの監視下に置かれる。
もちろん、話す内容も全て筒抜けだ。
好きに出かけることも禁じられた。
門限が早まり、シャロンと一緒に帰ることもできなくなった。
ファーストキスをし合った仲なのに、ルアージュとシャロンは物理的に距離を空けなければならなくなった。
シャロンともっと一緒にいたいのに。
学園のクラスの窓からこちらを見ているシャロンを、ルアージュは馬車の小窓から切ない思いで見つめた。
王都第六区の古い集会場。
中にケビンや作業員たちが集まっている。
「ここは特にひび割れがひどいな」
集会場の石積みの壁を見上げながら、ケビンが言った。
「すぐに補修材料を準備してくれ」
レッドグレイブ公の館。
「ほう。ケビンがちょうど第六区の集会場にいるのか」
膝に乗ったペルシャネコの毛並みをなでながら、レッドグレイブ公が黒服の男と話している。
「はい。補修工事で今朝から作業をしている模様」
上目遣いで男が答える。頬に深い傷跡がある。
「ちょうどいいな、ダニエル。シャロンへの仕返しをするいい機会だ」
ソフィアは以前、シャロンをぶったことで立場が悪くなっていた。
復讐をしたいと騒ぐソフィアを「私が仇をとってやるから、しばらく大人しくするように」とレッドグレイブ公はなだめていたのだ。
レッドグレイブ公の目が冷酷な色を帯び、ダニエルに命を下した。
「やれ」
集会場の作業員にまぎれたダニエルの手下が壁の裏側の仕掛けを外し、逃げた。
ゴ……ゴゴ……
石がきしむ音が空気を揺らしはじめる。
「ん?」
上から土埃が落ちてきた。
ケビンが見上げる。
土埃?
地震でもないのに?
ピシ。
石壁がゆがんだ。
瞬間、ケビンの直感が危険のサインを発した。
「逃げろおおお!!!」
振り返り、ケビンが叫んだ。
ドゴオオオン!
一気に石壁が崩壊した。
「シャロン!!」
休み時間。
担任が蒼白になって教室に駆け込んできた。
「今すぐ王立病院に行くんだ!お父上が崩落事故に巻き込まれて病院に運び込まれた!」
「え」
クラスがざわめく。
「学園の馬車を使え!」
「あ」
シャロンは頭が真っ白になったまま、つっ立っていた。
パパが?
嘘だろ。
あの頑丈なパパが??
脳裏によぎる恐怖。
石に挟まれて、死ぬ──?
ママみたいに。
「ぎゃああ!!」
シャロンが突然絶叫し、床にしゃがみ込んだ。
頭を抱え、ガタガタ震えている。
「大丈夫?」「どうしたの?」と心配した生徒たちが集まってくる。
「シャロン!!」
話を聞きつけたルアージュが護衛を押しのけ、教室に飛び込んできた。
「大丈夫か!?」
ルアージュはシャロンのそばに駆け寄った。
「シャロン、ショックが強すぎて混乱したか。病院に行けるか?」
「僕が付き添います」
心配顔の担任にそう返し、ルアージュは震えるシャロンの肩を支えて歩き始めた。
馬車の中で、シャロンは血の気が引き、ずっと震えていた。
「私のママは……落ちてきた石に挟まれて死んだんです。私は赤ちゃんだったけど、なぜか目に焼きついていて」
ルアージュはシャロンの肩をだき、ずっとさすってあげている。
「家族はパパ一人だけなのに……パパまでいなくなったら私──」
大粒の涙がぽろぽろとシャロンの目からこぼれる。
「大丈夫だ。きっと大丈夫だ。王立病院には名医がいる。大丈夫だよ、シャロン」
「う……」
シャロンは力無くルアージュの胸に顔をうずめる。
お願いだ。
ルピノ伯爵、無事でいてくれ……!
ルアージュはか細いシャロンをさすりながら、必死に祈っていた。
「暗殺者たちはまだ捕まらんのか」
「申し訳ございません。急ぎ、目撃情報を集めているところでございます」
宰相の答えに陛下の顔は曇る。
ルアージュの護衛一名が死亡。二名は重症である。
この王国の後継であるルアージュが命を狙われたのは初めてのことであった。
ルアージュがシャロンの機転で無事だったのは不幸中の幸いだった。
「調査を続行せよ。それと、今後、ルアージュの護衛を増やすように」
「はっ」
それ以来、ルアージュには20人もの護衛が付くようになった。
どこに行くにも護衛たちがついてくる。
学園の廊下を歩けば何かの団体のようにぞろぞろとルアージュを護衛たちが囲んで歩く。
シャロンのクラスに顔を出しに行くも、護衛たちの監視下に置かれる。
もちろん、話す内容も全て筒抜けだ。
好きに出かけることも禁じられた。
門限が早まり、シャロンと一緒に帰ることもできなくなった。
ファーストキスをし合った仲なのに、ルアージュとシャロンは物理的に距離を空けなければならなくなった。
シャロンともっと一緒にいたいのに。
学園のクラスの窓からこちらを見ているシャロンを、ルアージュは馬車の小窓から切ない思いで見つめた。
王都第六区の古い集会場。
中にケビンや作業員たちが集まっている。
「ここは特にひび割れがひどいな」
集会場の石積みの壁を見上げながら、ケビンが言った。
「すぐに補修材料を準備してくれ」
レッドグレイブ公の館。
「ほう。ケビンがちょうど第六区の集会場にいるのか」
膝に乗ったペルシャネコの毛並みをなでながら、レッドグレイブ公が黒服の男と話している。
「はい。補修工事で今朝から作業をしている模様」
上目遣いで男が答える。頬に深い傷跡がある。
「ちょうどいいな、ダニエル。シャロンへの仕返しをするいい機会だ」
ソフィアは以前、シャロンをぶったことで立場が悪くなっていた。
復讐をしたいと騒ぐソフィアを「私が仇をとってやるから、しばらく大人しくするように」とレッドグレイブ公はなだめていたのだ。
レッドグレイブ公の目が冷酷な色を帯び、ダニエルに命を下した。
「やれ」
集会場の作業員にまぎれたダニエルの手下が壁の裏側の仕掛けを外し、逃げた。
ゴ……ゴゴ……
石がきしむ音が空気を揺らしはじめる。
「ん?」
上から土埃が落ちてきた。
ケビンが見上げる。
土埃?
地震でもないのに?
ピシ。
石壁がゆがんだ。
瞬間、ケビンの直感が危険のサインを発した。
「逃げろおおお!!!」
振り返り、ケビンが叫んだ。
ドゴオオオン!
一気に石壁が崩壊した。
「シャロン!!」
休み時間。
担任が蒼白になって教室に駆け込んできた。
「今すぐ王立病院に行くんだ!お父上が崩落事故に巻き込まれて病院に運び込まれた!」
「え」
クラスがざわめく。
「学園の馬車を使え!」
「あ」
シャロンは頭が真っ白になったまま、つっ立っていた。
パパが?
嘘だろ。
あの頑丈なパパが??
脳裏によぎる恐怖。
石に挟まれて、死ぬ──?
ママみたいに。
「ぎゃああ!!」
シャロンが突然絶叫し、床にしゃがみ込んだ。
頭を抱え、ガタガタ震えている。
「大丈夫?」「どうしたの?」と心配した生徒たちが集まってくる。
「シャロン!!」
話を聞きつけたルアージュが護衛を押しのけ、教室に飛び込んできた。
「大丈夫か!?」
ルアージュはシャロンのそばに駆け寄った。
「シャロン、ショックが強すぎて混乱したか。病院に行けるか?」
「僕が付き添います」
心配顔の担任にそう返し、ルアージュは震えるシャロンの肩を支えて歩き始めた。
馬車の中で、シャロンは血の気が引き、ずっと震えていた。
「私のママは……落ちてきた石に挟まれて死んだんです。私は赤ちゃんだったけど、なぜか目に焼きついていて」
ルアージュはシャロンの肩をだき、ずっとさすってあげている。
「家族はパパ一人だけなのに……パパまでいなくなったら私──」
大粒の涙がぽろぽろとシャロンの目からこぼれる。
「大丈夫だ。きっと大丈夫だ。王立病院には名医がいる。大丈夫だよ、シャロン」
「う……」
シャロンは力無くルアージュの胸に顔をうずめる。
お願いだ。
ルピノ伯爵、無事でいてくれ……!
ルアージュはか細いシャロンをさすりながら、必死に祈っていた。
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