許したと思っていたのかしら?──学園に精霊のアイス屋さんを開いた伯爵令嬢

nanahi

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2 開店

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平民のグリアに婚約者を奪われ無実の罪で学園を退学させられた伯爵令嬢のわたくしは、ちょうど一年後の今日、学園にアイス屋さんを開きました。

さっそくグリアたちは店頭で接客をするわたくしを馬鹿にしに参ります。

「あら久しぶりね、ジュリエット。すっかり素敵な姿になって。」

桃色ストライプのひらひらエプロンを付けたわたくしにグリアが見下すように声をかけてきました。

「いらっしゃいませ。」

売り子としてアイスのショーケースの内側に立っているわたくしはそう挨拶をしました。

「哀れね。貴族令嬢が売り子をするなんて。」

グリアの取り巻きの一人が耳打ちし一同はくすくすとわたくしを見て笑いました。

「どれに致しましょう。おすすめはこちらのフレーバーです。摘み立て苺を練り込んだ──」
「馬鹿じゃないの。」

わたくしが商品の説明を始めるとグリアはわたくしの言葉をざくりと断ちました。

「お前が売るアイスを私が食べるとでも?」

平民の女性は相手を”お前”と呼ぶのでしょうか?

「伯爵令嬢が落ちたものね。アイスの売り子をしてるって聞いて仰天したわ。今のお前は学園中の笑いものよ?」

グリア、ちっとも変わっていませんのね。
自分より下と見た相手には容赦なく卑劣な言葉をぶつけてくる。

わたくしのことを貴族令嬢ではなく売り子として見下しているのでしょう。令息たちの前では決して見せてこなかった裏の顔をわたくしの前では安心して見せられるようです。

わたくしは可笑しくなってわずかに微笑みました。グリアはわたくしが敗北の笑みを浮かべたと思ったようです。

「負け犬が。」

そう言い捨ててわたくしに背を向けました。

確かに今日はわたくしのことをよく知らない一年生が数人アイスを買いに来ただけでした。他の生徒たちはわたくしを遠巻きに見て様子を見ているだけでした。

「またお越しくださいませ。」

形式的に接客終わりの挨拶をしたわたくしに、グリアは「は?」と振り返ったあと「来るわけないじゃない。」と高笑いしながら去っていきました。

グリアはわたくしから婚約者を奪った女です。学力は足りていませんでしたが父親が商売で成功していたためお金で入学できたと言われておりました。

グリアはわたくしから虐げられていると嘘を捏造しわたくしの婚約者であった伯爵令息ロバート・シュタット様に近づき心を掴みました。そしてわたくしに無実の罪をなすりつけ学園から追い出しました。

グリアはきっとまたここに来ますわ。

わたくしには確信がありました。来ざるを得なくなる状況になるとわかっていました。

翌日わたくしの予想通りふたたびグリアが店にやってきました。



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