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19 話し合い
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「これはディエル侯爵、よくお越しくださいました。」
学園長先生がジュリーアイス株式会社副社長のディエル侯爵を学園長室に招き入れました。
「こちらが情報提供者のグリア嬢ですか?」
「グリア・グランと申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。」
グリアが侯爵に挨拶をしました。
「ジュリーアイス株式会社で副社長をしておりますディエルと申します。」
ロマンスグレーのディエル侯爵は仕立てのいいスーツのポケットから名刺を取り出し学園長先生とグリアに差し出しました。
「さあ、お座りください。」
話し合いが始まりました。
「当社のジュリエットが貴校の風紀を乱しているというのは本当でしょうか?」
「はい。そのように報告を受けております。そうだね、グリア?」
学園長先生がグリアに話を促しました。
「ええ、本当です。わたくしはこの目で見ました。みんながいない所でふたりきりになりシュタット伯爵家のご令息と手を繋いでいたり、隣国テートの王太子殿下を振り回してどこかに出かけたり、もうひどい有様で。」
グリアはわざとらしくハンカチで口を覆いました。
「シュタット家のご令息や王太子殿下は迷惑をしているとおっしゃっているのですか?」
「ええもう、それは嫌がっておいでで。ジュリエットがしつこくてお気の毒なくらいに。」
「そうでしたか……。では貴校からジュリーアイスを取り下げましょう。」
「え!?」
学園長先生とグリアが同時に声を上げました。
「それはどういう意味で……?」
「つまり、貴校からジュリーアイスを撤退させる、という意味ですよ。そんな令嬢がいるアイス店が営業しているのは迷惑でしょうから。」
「いやっ、何も店を閉めてほしいと言っているわけではっ!」
「そうですわ!あそこのアイスはとても美味しいですし、時々出る不思議なアイスは効果がとても素晴らしいですし!」
学園長先生やグリアが口々に引き止めようとしています。
「……とおっしゃっていますが、どうなさいますか、社長?」
侯爵が後ろを振り向きました。ガチャリというドアノブを回す音に学園長先生とグリアが入り口の方に注目しました。私はドアを開いて学園長室に足を踏み入れました。
「何であんたがいるのよ。」
グリアが私を下から睨み上げました。
クリームイエローのジャケットにくるぶし丈のマーメイドスカートに身を包んだ私は髪をハーフアップにし実業家の姿でふたりの前に立ちました。
「紹介いたします。ジュリーアイス株式会社代表取締役社長のジュリエット・ハプナです。」
「ええええええっ!!!!!」
グリアが素っ頓狂な大声を出しました。学園長先生の顔がみるみる青くなっていきます。
「何かの間違いでしょ!?あのグズのジュリエットが社長のはずないわ!」
グリアは言いたい放題です。
「間違いなどではありませんよ。」
侯爵が冷静で理知的なグレーの瞳をグリアに向けました。
「経営者を狙った誘拐や暗殺事件が近年頻発していることから、経営者を守るための王国法が制定されました。経営者が希望すれば名前を非公開にできるというものです。ジュリエット嬢もその法令に基づき名前を公にはしておりませんが、会社の登記簿にはジュリエット嬢の名前が記載されているんですよ。」
グリアは納得できないのか唇を噛みながら怒りに満ちた顔をしています。「でも、だって、ジュリエットはいつも泣いてばかりで何もできない女だったのに。」とぶつぶつ呟いています。
そんなグリアの態度を見てさらに侯爵はたしなめるように強い声音でグリアにこう言い聞かせました。
「それにジュリエット嬢は決してグズなどではありません。味も品質も超一流で次々と魅力的な商品を生み出す素晴らしい実業家です。私は彼女を尊敬しています。」
侯爵は食品流通に詳しくその方面の人脈も豊富な実業家です。私は彼に目をつけ一番初めに商品を売り込みました。侯爵は私の商品を気に入ってくださり、これまで力を貸してくださっているのです。
「そんな。まさか。嘘よ……!」
グリアはまだ私が社長だと信じたくないようです。
「私の話が信頼できないとでも?」
侯爵が学園長先生とグリアを冷徹な目で見つめました。その視線には相手を威圧するような凄みが宿っていました。
「いいえっ、滅相もない!」
学園長先生は侯爵の圧に恐れをなしたようです。学園長先生も侯爵ではありますが、ディエル侯爵とはお立場が全く異なります。ディエル侯爵は王家とも縁戚であり、食品会社を複数お持ちの富豪でいらっしゃいます。王家からの信も厚く、経済関係の会合には必ず呼ばれるほどの王国の重鎮なのです。
「ジュリエット、申し訳なかった。君がまさか社長だったとは。この通りだ。謝罪する。アイス店はどうか閉めないでほしい。」
学園長先生はころっと手のひらを返しました。
「ではわたくしの処分はどのように?」
私はここにきて初めて口を開きました。
「処分もなにも、ジュリエットはそのままアイス屋の店頭にいてくれて構わない。というか君の会社なんだから好きにして構わない。」
「ちょっと、学園長先生!」
グリアが抗議しております。
「グリア、君の勘違いだったんだ。ジュリエットは素行の悪い令嬢ではない。昔からそうだったんだ。成績も学年トップで模範的な素晴らしい生徒だった。」
グリアは裏切られたというように目を割れんばかりに見開いたまま学園長先生を睨んでいます。
「そんなことをおっしゃっていいんですの?学園長先生。今後一切当家からの寄付を取り下げますわよっ!?」
グリアは脅しにかかったようです。ですが学園長先生は顔色も変えずグリアに言いました。
「実はジュリーアイス株式会社から君の家をはるかに上回る寄付を頂戴しているんだよ。今後も毎年くださると言ってもらっている。」
「はああ!?嘘でしょ!?」
グリアは私と学園長先生を血走った目で引っ切りなしに見比べております。
「ではわたくしは失礼いたします。今後ともジュリーアイスをどうぞご贔屓に。」
私とディエル侯爵が部屋を出た後、「ぐああああ!」とグリアが悔しがる叫び声が廊下中に聞こえて参りました。
学園長先生がジュリーアイス株式会社副社長のディエル侯爵を学園長室に招き入れました。
「こちらが情報提供者のグリア嬢ですか?」
「グリア・グランと申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。」
グリアが侯爵に挨拶をしました。
「ジュリーアイス株式会社で副社長をしておりますディエルと申します。」
ロマンスグレーのディエル侯爵は仕立てのいいスーツのポケットから名刺を取り出し学園長先生とグリアに差し出しました。
「さあ、お座りください。」
話し合いが始まりました。
「当社のジュリエットが貴校の風紀を乱しているというのは本当でしょうか?」
「はい。そのように報告を受けております。そうだね、グリア?」
学園長先生がグリアに話を促しました。
「ええ、本当です。わたくしはこの目で見ました。みんながいない所でふたりきりになりシュタット伯爵家のご令息と手を繋いでいたり、隣国テートの王太子殿下を振り回してどこかに出かけたり、もうひどい有様で。」
グリアはわざとらしくハンカチで口を覆いました。
「シュタット家のご令息や王太子殿下は迷惑をしているとおっしゃっているのですか?」
「ええもう、それは嫌がっておいでで。ジュリエットがしつこくてお気の毒なくらいに。」
「そうでしたか……。では貴校からジュリーアイスを取り下げましょう。」
「え!?」
学園長先生とグリアが同時に声を上げました。
「それはどういう意味で……?」
「つまり、貴校からジュリーアイスを撤退させる、という意味ですよ。そんな令嬢がいるアイス店が営業しているのは迷惑でしょうから。」
「いやっ、何も店を閉めてほしいと言っているわけではっ!」
「そうですわ!あそこのアイスはとても美味しいですし、時々出る不思議なアイスは効果がとても素晴らしいですし!」
学園長先生やグリアが口々に引き止めようとしています。
「……とおっしゃっていますが、どうなさいますか、社長?」
侯爵が後ろを振り向きました。ガチャリというドアノブを回す音に学園長先生とグリアが入り口の方に注目しました。私はドアを開いて学園長室に足を踏み入れました。
「何であんたがいるのよ。」
グリアが私を下から睨み上げました。
クリームイエローのジャケットにくるぶし丈のマーメイドスカートに身を包んだ私は髪をハーフアップにし実業家の姿でふたりの前に立ちました。
「紹介いたします。ジュリーアイス株式会社代表取締役社長のジュリエット・ハプナです。」
「ええええええっ!!!!!」
グリアが素っ頓狂な大声を出しました。学園長先生の顔がみるみる青くなっていきます。
「何かの間違いでしょ!?あのグズのジュリエットが社長のはずないわ!」
グリアは言いたい放題です。
「間違いなどではありませんよ。」
侯爵が冷静で理知的なグレーの瞳をグリアに向けました。
「経営者を狙った誘拐や暗殺事件が近年頻発していることから、経営者を守るための王国法が制定されました。経営者が希望すれば名前を非公開にできるというものです。ジュリエット嬢もその法令に基づき名前を公にはしておりませんが、会社の登記簿にはジュリエット嬢の名前が記載されているんですよ。」
グリアは納得できないのか唇を噛みながら怒りに満ちた顔をしています。「でも、だって、ジュリエットはいつも泣いてばかりで何もできない女だったのに。」とぶつぶつ呟いています。
そんなグリアの態度を見てさらに侯爵はたしなめるように強い声音でグリアにこう言い聞かせました。
「それにジュリエット嬢は決してグズなどではありません。味も品質も超一流で次々と魅力的な商品を生み出す素晴らしい実業家です。私は彼女を尊敬しています。」
侯爵は食品流通に詳しくその方面の人脈も豊富な実業家です。私は彼に目をつけ一番初めに商品を売り込みました。侯爵は私の商品を気に入ってくださり、これまで力を貸してくださっているのです。
「そんな。まさか。嘘よ……!」
グリアはまだ私が社長だと信じたくないようです。
「私の話が信頼できないとでも?」
侯爵が学園長先生とグリアを冷徹な目で見つめました。その視線には相手を威圧するような凄みが宿っていました。
「いいえっ、滅相もない!」
学園長先生は侯爵の圧に恐れをなしたようです。学園長先生も侯爵ではありますが、ディエル侯爵とはお立場が全く異なります。ディエル侯爵は王家とも縁戚であり、食品会社を複数お持ちの富豪でいらっしゃいます。王家からの信も厚く、経済関係の会合には必ず呼ばれるほどの王国の重鎮なのです。
「ジュリエット、申し訳なかった。君がまさか社長だったとは。この通りだ。謝罪する。アイス店はどうか閉めないでほしい。」
学園長先生はころっと手のひらを返しました。
「ではわたくしの処分はどのように?」
私はここにきて初めて口を開きました。
「処分もなにも、ジュリエットはそのままアイス屋の店頭にいてくれて構わない。というか君の会社なんだから好きにして構わない。」
「ちょっと、学園長先生!」
グリアが抗議しております。
「グリア、君の勘違いだったんだ。ジュリエットは素行の悪い令嬢ではない。昔からそうだったんだ。成績も学年トップで模範的な素晴らしい生徒だった。」
グリアは裏切られたというように目を割れんばかりに見開いたまま学園長先生を睨んでいます。
「そんなことをおっしゃっていいんですの?学園長先生。今後一切当家からの寄付を取り下げますわよっ!?」
グリアは脅しにかかったようです。ですが学園長先生は顔色も変えずグリアに言いました。
「実はジュリーアイス株式会社から君の家をはるかに上回る寄付を頂戴しているんだよ。今後も毎年くださると言ってもらっている。」
「はああ!?嘘でしょ!?」
グリアは私と学園長先生を血走った目で引っ切りなしに見比べております。
「ではわたくしは失礼いたします。今後ともジュリーアイスをどうぞご贔屓に。」
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