今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて

nanahi

文字の大きさ
10 / 21

10 遠征 墓場

しおりを挟む
カーラが王妃に復位して数週間後。

カーラはモンスター退治に出向いていた。
盾の神獣の加護は復活したものの、王都の外に繁殖したモンスターがいまだに悪さをしていたからだ。

カーラの”聖なる力”を噂に聞いた領主たちから、多くのSOSがカーラの下に届いていた。
ルアヌは王都を守る必要があるため留守番だ。


「陛下と離れてすごすのはとても寂しいけれど、民のためにがんばりますわ」


カーラは馬車に揺られながらそう呟き健気に自分を奮い立たせた。




到着した地は、とある北方の領地だった。


「ずいぶん、寒い所ね」


護衛の兵士たちと一緒に目的地へと進む。
領主の話では、山奥の墓地に困ったモンスターが出現するとのことだった。


「夜な夜な現れては、村人たちの魂を食べるのです」


顔色の悪い領主は十字架を握りしめながら震えてそう語った。


「剣や銃の弾どころか、僧侶のお祓いもお札も、何ひとつ効かないのです」


人の魂を食べるなんてずいぶん厄介なモンスターね。
出没場所からしてやっぱりアレ系よね──?


カーラは想像して身震いした。




夜になった。

木の影に身を潜めたカーラ一向は、墓地の下から白い霧のような物体がぶわぶわと出てくるのを目にした。


「出た!!」

「やっぱり、ゴースト系モンスターだわ!みんな、ゴーストに触れてはだめよ!」

「は、はいっ!」

「聖水は!?」

「カラー様、こちらに…!」


教会で清めた聖水をカーラに渡そうとした兵士の背中をゴーストが襲った。


「うわあああ!!」


兵士は魂を吸われ倒れた。
聖水の瓶は地面に落ち、粉々に砕けてしまった。


「聖水が!!」


わたくしの聖女の力を加えることで聖水の力を強化しようと思っていたのに──!
どうしますの、わたくし!
代わりの物を探さなければ──!



リュックの中の便利グッズを探る。
カーラの目に短い棒のような物が目に留まった。


「この形は魔法の杖に違いないわ!でもどうやって使うのかしら!?」


カーラは棒をゴーストに向けるが何も起こらない。


「聖水よ、出よ!」


出ない。


「悪霊浄化の炎よ、出よ!」


やはり出ない。
兵士たちが剣や銃でゴーストを攻撃するも、体を通過するばかりで全く効果がなかった。


「カーラ様危ないっ!」


兵士の一人がカーラを突き飛ばした。
カーラが呆然としている間にゴーストが上から襲って来たのだ。
兵士はそのままカーラの身代わりに魂を喰われ息絶えた。


ゴーストは嬉々として暴れ回る。
兵士の数は、ひとり、またひとりと減っていく。
打つ手はなかった。


ついに数匹のゴーストが一度にカーラに襲いかかった。


わたくしのせいだわ。
わたくしがもっと綿密に計画を立てていれば…!
きっと勝てると慢心していたのよ。

こんな寂しい場所でわたくしは死ぬの?
陛下ごめんなさい…


カーラは目を閉じ、無念のあまり手の棒を強く握りしめた。
その時。


カチッ。


「ん?」


べカーーーーン!!!


棒から突如、強大な光がほとばしった。


「え?」


その光は、ピンク、青、黄、白、緑、と次々と色を変え、オーロラのように輝いた。


グええええええあああ!!


その光に照射されたゴーストたちは悶え苦しみ、逃げる間もなく蒸発した。


「ゴーストを浄化した…」


ぽかんとしていた兵士たちから勝ちどきの声が上がる。


「光だ、カーラ様の聖なる光がゴーストを倒したぞお!!」


「…ううん…あれ?」


先ほど魂を喰われ死んでいた兵士たちが全員目を開け身を起こした。


「俺たち、生きてる?」

「奇跡だ…カーラ様のお力だ…!」


こうしてカーラは誰にも倒せないと思われた難敵ゴーストを駆逐した。


「推し…ペンラ…イト?」


聖なる光を発してくれた棒にはそんな名前がついていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。 相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。 結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。 現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう… その時に前世の記憶を取り戻すのだった… 「悪役令嬢の兄の婚約者って…」 なんとも微妙なポジション。 しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。

お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!

にのまえ
恋愛
 すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。  公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。  家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。  だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、  舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。

殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。

和泉鷹央
恋愛
 雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。  女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。  聖女の健康が、その犠牲となっていた。    そんな生活をして十年近く。  カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。  その理由はカトリーナを救うためだという。  だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。  他の投稿サイトでも投稿しています。

氷の王弟殿下から婚約破棄を突き付けられました。理由は聖女と結婚するからだそうです。

吉川一巳
恋愛
ビビは婚約者である氷の王弟イライアスが大嫌いだった。なぜなら彼は会う度にビビの化粧や服装にケチをつけてくるからだ。しかし、こんな婚約耐えられないと思っていたところ、国を揺るがす大事件が起こり、イライアスから神の国から召喚される聖女と結婚しなくてはいけなくなったから破談にしたいという申し出を受ける。内心大喜びでその話を受け入れ、そのままの勢いでビビは神官となるのだが、招かれた聖女には問題があって……。小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

聖女は記憶と共に姿を消した~婚約破棄を告げられた時、王国の運命が決まった~

キョウキョウ
恋愛
ある日、婚約相手のエリック王子から呼び出された聖女ノエラ。 パーティーが行われている会場の中央、貴族たちが注目する場所に立たされたノエラは、エリック王子から突然、婚約を破棄されてしまう。 最近、冷たい態度が続いていたとはいえ、公の場での宣言にノエラは言葉を失った。 さらにエリック王子は、ノエラが聖女には相応しくないと告げた後、一緒に居た美しい女神官エリーゼを真の聖女にすると宣言してしまう。彼女こそが本当の聖女であると言って、ノエラのことを偽物扱いする。 その瞬間、ノエラの心に浮かんだのは、万が一の時のために準備していた計画だった。 王国から、聖女ノエラに関する記憶を全て消し去るという計画を、今こそ実行に移す時だと決意した。 こうして聖女ノエラは人々の記憶から消え去り、ただのノエラとして新たな一歩を踏み出すのだった。 ※過去に使用した設定や展開などを再利用しています。 ※カクヨムにも掲載中です。

好きだと言ってくれたのに私は可愛くないんだそうです【完結】

須木 水夏
恋愛
 大好きな幼なじみ兼婚約者の伯爵令息、ロミオは、メアリーナではない人と恋をする。 メアリーナの初恋は、叶うこと無く終わってしまった。傷ついたメアリーナはロメオとの婚約を解消し距離を置くが、彼の事で心に傷を負い忘れられずにいた。どうにかして彼を忘れる為にメアが頼ったのは、友人達に誘われた夜会。最初は遊びでも良いのじゃないの、と焚き付けられて。 (そうね、新しい恋を見つけましょう。その方が手っ取り早いわ。) ※ご都合主義です。変な法律出てきます。ふわっとしてます。 ※ヒーローは変わってます。 ※主人公は無意識でざまぁする系です。 ※誤字脱字すみません。

自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?

長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。 王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、 「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」 あることないこと言われて、我慢の限界! 絶対にあなたなんかに王子様は渡さない! これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー! *旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。 *小説家になろうでも掲載しています。

王命により泣く泣く婚約させられましたが、婚約破棄されたので喜んで出て行きます。

十条沙良
恋愛
「僕にはお前など必要ない。婚約破棄だ。」と、怒鳴られました。国は滅んだ。

処理中です...