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62 取り戻した記憶
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「もしかして…君はローロと呼ばれていた?」
ネイブの言葉にローザリアは一瞬、思考停止した。
「ローロ…?」
ローロ。その響き。懐かしい。
毎回目が覚めたら忘れてしまっていたその名をローザリアは何度も呟いた。
ローロ。ローロ。
ぼんやりと長い銀髪の女が近づいてくる。
私を抱き上げ頬ずりする。
幸せの匂いが満ちる。
”ローロ”
”私の大切なローロミュケアー”
母が呼ぶ私の名──!
「ローロ……ローロミュケアー…!」
ついにローザリア本人の口から真実の名があふれ出た。
ローロミュケアー・レイナク・クシュマトハ。
レイナクとは本家を意味する。ネイブの本名のネイブルシュハク・ミカナク・クシュマトハのミカナクは分家を指していた。
頭の霧が晴れるようにローザリアの記憶が一気に蘇った。
母が剣で切られる。
母から引き離されどこかに運ばれる。
船に乗る。
売られそうになる。
院長先生が私を引き取り抱きしめる──
『小さいあなたは”ローロ”って答えたの。女性でローロはおかしいでしょ?だから、きっとローザとでも呼ばれてたんだろうと思って、あなたの名前をローザリアにしたのよ』
以前、院長先生がそう教えてくれたが、名前を聞かれて「ローロ」と答えた幼いローザリアは正しかったのだ。自分のルーツを知った喜びでローザリアの頬に無意識に涙が伝った。
「本当に君が、ローロミュケアー…女王なのだな?」
ネイブは感動の涙を必死に堪えた。天涯孤独だと思っていた自分にまだ同胞がいたのだ。しかも王位継承者。クシュマトハ王家は滅んでいなかった。
これで全てが付合した。
クシュマトハの王位継承者だけが使えたというアンデッドを滅する力。そしてもう一つ、隠された力があった。
それは──命じる力。アンデッドを従わせ操る力だ。ローザリアはその双方の力を有していた。
実はこれまでアンデッドが襲撃してきてもローザリア本人を攻撃することは決してなかった。ローザリアが「ジェム大陸から逃げたい」と強烈に願った時から、アンデッドは本能的にローザリアの近くにいる人間を敵だと認識し、彼らを攻撃していたのだ。
アンデッドたちが船に密航し海を渡ったのも、自分たちの主人であるローザリアを守るため追いかけてきたというのが原因だった。
聖女に覚醒したことで、ローザリアに流れる古代クシュマトハの血が目覚め、徐々に能力が開花していた。
クシュマトハ王国の再建。
ローザリアがいればこの夢を実現できるかもしれない。
高揚する気持ちを何とか抑え込んでいたネイブは、この時自分の本当の名をあえて明かさなかった。母と自分の悲願のため、ローザリアを手に入れる計略をひとり練り始めた。
ネイブの言葉にローザリアは一瞬、思考停止した。
「ローロ…?」
ローロ。その響き。懐かしい。
毎回目が覚めたら忘れてしまっていたその名をローザリアは何度も呟いた。
ローロ。ローロ。
ぼんやりと長い銀髪の女が近づいてくる。
私を抱き上げ頬ずりする。
幸せの匂いが満ちる。
”ローロ”
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頭の霧が晴れるようにローザリアの記憶が一気に蘇った。
母が剣で切られる。
母から引き離されどこかに運ばれる。
船に乗る。
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『小さいあなたは”ローロ”って答えたの。女性でローロはおかしいでしょ?だから、きっとローザとでも呼ばれてたんだろうと思って、あなたの名前をローザリアにしたのよ』
以前、院長先生がそう教えてくれたが、名前を聞かれて「ローロ」と答えた幼いローザリアは正しかったのだ。自分のルーツを知った喜びでローザリアの頬に無意識に涙が伝った。
「本当に君が、ローロミュケアー…女王なのだな?」
ネイブは感動の涙を必死に堪えた。天涯孤独だと思っていた自分にまだ同胞がいたのだ。しかも王位継承者。クシュマトハ王家は滅んでいなかった。
これで全てが付合した。
クシュマトハの王位継承者だけが使えたというアンデッドを滅する力。そしてもう一つ、隠された力があった。
それは──命じる力。アンデッドを従わせ操る力だ。ローザリアはその双方の力を有していた。
実はこれまでアンデッドが襲撃してきてもローザリア本人を攻撃することは決してなかった。ローザリアが「ジェム大陸から逃げたい」と強烈に願った時から、アンデッドは本能的にローザリアの近くにいる人間を敵だと認識し、彼らを攻撃していたのだ。
アンデッドたちが船に密航し海を渡ったのも、自分たちの主人であるローザリアを守るため追いかけてきたというのが原因だった。
聖女に覚醒したことで、ローザリアに流れる古代クシュマトハの血が目覚め、徐々に能力が開花していた。
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