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第9話 古代からの言い伝え
しおりを挟むアルテアの住処へ向かい歩くこと数十分。
進めば進むほど霧が濃くなっていった。日も届いていないらしく、薄暗い。
テン「大丈夫なのか?この道…」
アルテア「大丈夫ですわよ」
恐る恐る進む私とは反対に、アルテアはどんどん進んで行った。
また少し時間が経ち、もうほとんど何も見えなくなった。だが、不思議と怖さが増すどころか神秘的で包まれているような温かみを感じる。
すると、なにか魔法の仕掛けの存在を感じた。
そこでアルテアが突然ピタリと足を止めた。
アルテア「着きましたわよ。ここが…わたくし達の住処ですわ」
アルテアが魔力を込めると先程までの霧が消え去り、
明るい太陽に照らされた草原が目の前に広がった。
空は青く、草木は生い茂り、綺麗な花が沢山埋まっている。そして広場の真ん中に神秘的な大木が生えている。
心地よい太陽の光とそよ風で、始めてきた場所なのに妙な安心感を覚える。
アルテア「ようこそ。わたくし達の楽園へ」
この時のアルテアは、そよ風に吹かれ髪がなびき、なんだか神々しかった。
私たちは真ん中に生える大きな木に向かって歩いていた。あそこがアルテアの住居らしい。
シオン「すごいな、ここ。」
アルテア「そうでしょう?」
アルテアは誇らしそうだ。
辺りを見渡しながらゆったり歩いていると人?が数人、笑顔で駆け寄ってきた。
住民「アルテア様!ご帰還なされたのですね!」
住民「ご無事で何よりです!」
アルテア「あら、皆様。ありがとうございますわ」
住民「そちらの方々は…?」
アルテアと挨拶をしていた住民が怪訝そうな顔でこちらを見てくる。そりゃそうだよな。あっちからしたら私らはどこの誰かも分からない部外者なんだから。
アルテア「この方々はわたくしを助けてくれた恩人であり大切な友人ですわ」
う、嬉しいけど…!!良く恥ずかしげもなく言えるな…
シオン「こんにちは、初めまして。シオンと申します」
ニコッと笑い、シオンはいつものように猫をかぶり挨拶した。
シオン「ほら、お前らも挨拶」
アンバー「ア、アンバーです…」
シオンの陰に隠れながら、アンバーはおずおずと挨拶した。
テン「テンです!私は弟子でもあるんだよ!」
アルテア「ふふふ…」
住民「まあ、なんと…!!」
住民「アルテア様のご友人にお弟子さん…!!」
先程までと打って変わって、住民たちはキラキラした目でこちらを見ていた。なにかに感激しているようだ。
住民「それに、アルテア様を助けてくださったそうで…!!」
住民「全力でおもてなしさせていただきます!!
ささ、こちらに」
そう言い、住民たちは私たちを連れていこうとした。
騒ぎを聞き付け、ほかの住民たちも寄ってきた。
アルテア「まあまあ、落ち着いて。彼女たちも疲れていると思いますし…おもてなしは明日にいたしましょう。
今日はわたくしの家で休んでいただきますわ」
住民「あ、そうですね!ごめんなさい、ご友人方」
住民「では、ごゆっくりお休み下さい。」
アルテアが言うと、住民たちはさっさと散っていった。
あんな人数から慕われているって何者だよ…
シオン「……慕われてるんだな。彼女たちも精霊か?」
住民たちが散っていったのを見て、シオンが口を開く
アルテア「ええ。少し押しは強いですが…いい子たちですのよ」
シオン「ああ、そうだな」
シオンは苦笑しながら言った。
進んでいくこと数分。
近いと思っていた大木は案外遠く、着いた頃には私やアンバーはもうヘトヘトになっていた。
アルテア「さ、ここから階段で登りますわよ。」
テン「うぇ…もう疲れたよー」
木の幹には螺旋状の階段があった。
階段は高く、登る気になど到底なれなかった。
意気消沈の中、バカにしたような目をこちらへ向けながら口を開いた
アンバー「別に飛べばいいじゃん。あほ。」
テン「確かにだけど一言余計だ!!」
ふん、アンバーは飛べなくてかわいそ!
先に行っちゃおーっと
シオン「じゃあ俺がアン抱えて飛ぶよ。もう他人飛ばせるほどの魔力残ってないし」
アンバー「う、え、そ、そんな…もちろん嬉しいですけど…」
アンバーは視線をあちこちに泳がせているがどうしようか考えているようだ。
アンバー「僕重いですし…やっぱり悪いです!歩いて行きます!」
やはり遠慮し、歩いていこうとするが、シオンが強制的にお腹の横に抱える
シオン「大丈夫だって、軽すぎるくらいだし」
アンバー「…あ、ありがとう、ございます」
アンバーは照れ照れと恥ずかしそうに、でも嬉しそうに抱えられている。
そういうのは恋愛小説でやってくれ!!
こんな抱え方で恋愛って言うのもどうかと思うが…
アルテア「これなら早く着きそうですわね」
そう言い、アルテアは素早く優雅に飛んで行った
私とシオン達もそれに続く。
登っている途中、改めて上から町を見る。
もう日は沈み、月が出てきている。
人工的ではない、自然の光に照らされた町。
精霊たちの住処…楽園と言うにふさわしい、本当に美しい場所だった。
アルテア「お疲れ様でしたわ、皆様。こちらがわたくしのお家ですわ」
そう言われたのは木の階段が終わる、最上階だった。
遠すぎだろ…!!
アルテア「さ、どうぞ」
大きな木についている小さな扉を開き、中へと案内する
テン「わ、すごい!!」
中は広々としていて木で出来た家具と沢山の植物と本が置いてある。
そして温かみのある照明に照らされ、大きな窓からは月の光がほどよく入ってきている。
どうやらここはリビングのようだ。
アルテア「さ、ここは誰でも入室OKなリビングですので寝室へ向かいましょう。」
その後、私たちはさっさと風呂に入り寝室へと向かっていた。そんな時、アンバーがなにか気づいたようなかおで言う。
アンバー「……そういえば、寝るところはどうするんですか?」
アルテア「わたくしのベッド1つしかないのですが、大きめですので全員で寝ましょう」
アンバー「いや、僕は他のとこで…床とかでもいいので」
アンバーは焦ったように言う。
そんなアンバーを見て、シオンはニヤニヤを押さえながら言った
シオン「アン、昨日隣で寝たがってただろ?ほら、今日その希望聞いてやるよ」
うわ、超面白がってる…
アンバー「うぇ、いや、寝袋で隣で寝るのと同じ布団で寝るのは違いますよ!!それにほら、またこのあほ天使が拒否してくると思いますし…」
縋ってくるような目を向けられる。
だけどあほ天使とか言われてるし……面白いし。
テン「いや?同じ布団で寝たらどうだ、アンバー?」
アルテア「そうですわよ、床なんて体を痛めてしまいますし」
完全に八方塞がり。
アンバーはもう焦るだけで何も言えなくなっていた。
アンバー「う、…はい…」
焦り、悩んだ末、渋々納得していた。
いつもの仕返しだ!ふふん、かわいそ!
直前まで文句をたれていたアンバーが諦め、全員ベッドに入った時。アルテアが口を開く。
アルテア「ではお話しましょうか。わたくしについて」
テン「それは超聞きたいんだけど…眠過ぎて頭に入ってこないかもしれない…」
アンバー「僕もちょっと…」
今にも目が閉じそうだ。
だがシオンとアルテアは元気そう。体力バケモンか…
アルテア「そうですわね…では、昔からの言い伝えがありますのでそちらを語りましょうか。寝る前、母親に読み聞かせられる絵本とでも思ってください」
それなら大丈夫そうだ!
というかそれより、自分の言い伝えがあるって本当に何者…??
アルテア「それでは、お話いたしましょう。ふふ、驚かないでくださいね」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
昔昔、この世界は生物は愚か植物すら生えていない、地面しかない地だった。そんな更地に、ある日突然1人の少女がなんの前触れもなく現れた。なぜ?どこから?どうやって?そんなことは誰にも分からない。
当の本人も分からないからだ。
ある日突然、更地にポツンと現れた少女。
本能だったのかもしれない。考える力や理性は持っていたのに、生まれた瞬間何を見るでも考えるでもなく歩き始めた。
少女「まあ、すごい!」
あまりに衝撃的だった少女は、堪らずこの世界に初めて言葉を漏らす。少女が歩いた場所には植物が生え、青と茶色しか無かったこの世界に彩りをもたらした。
彼女はこの後様々な恵をもたらすが、これが最初にもたらした恵だった。
少女は頭が良かった。この地を潤すのが自分の使命なのだろうと考え、沢山歩いて回った。少女はここままではいつまでかかることか、となにか方法はないか探った。その半年後、手から謎のエネルギーが出せることを発見した。これが後の魔力である。
そこからは早く、わずか一年ほどでこの地を緑でおおってしまった。
草木を生やすという目標を達成したにも関わらず、少女は大した喜びも見せず次にやるべき事を考え始める。
少女(次は……わたくしのような、知性ある生物?)
そう、動物は少女がこの世界を回っている間に自然に発生していたが少女のような考えることが出来る生物は存在しなかった。 その後、まず初めに自分と同じような特徴を持つ、今で言う精霊を誕生させた。
私たちが今不自由なく生活できるのはこの時彼女が火の精霊や水の精霊などを誕生させてくれたからだ。
彼女は動物にたくさんの種類がいることを考え、10種類の知性ある生物を誕生させた。そこから派生し誕生した生物もいるが、私たちの先祖をたどっていくと全員その10種類の生物にたどり着く。
そして、彼女が創った生物達と順調に生活し世界を作っているている中、現代のものとは比べ物にならないくらいの危機が訪れた。それは雲ひとつない、晴天の日のこと。皆がいつも通り生活していると、物凄い地響きと同時に空の1部が割れ始めた。その割れ目から、大きな目が片方だけ覗いてくる。目はすぐにどこかへ行ったが、代わりに空から得体の知れない誰かが落ちてくる。
優雅にふわっと着地し、迷いなくこちらへ歩いてきた。
全員が呆然と見守ることしかできなかった中、少女は堂々と構えていた。落ちてきた女が目の前に迫る。すると勇気ある人間が1人前に出た。
人間は女の前に出て、威勢よく噛み付く。
人間「おい、誰だお前は!ここから先には行かせないぞ!」
そう問われた女は自分は女神だと名乗る。
女神「貴方に用はないよー。私が話したいのはあの奥の子だから早く通してくれる?邪魔なんだよねぇ」
女神は少女を指さす
その話を聞いた人間はバカにしたように鼻で笑う。
人間「はん、女神?そんなの信じるかよ。この世に女神がいるとしたらあの方だけだ。偽女神を合わせる訳には行かない」
一向にどかない人間の肩に、女神はポンと手を置く。
一瞬ピリッとした空気が流れた。
少女がなにかに気づき、咄嗟に声を上げる。
少女「逃げ、」
次の瞬間、女神の手がピカッと光る。
少女の声は届かず、女神に攻撃された人間は息絶えてしまった。
女神「もー、最初っからどいてくれないからぁ」
女神は悪びれる様子もない。
少女は急いで人間の死体に駆け寄っていく。
先程人間一人を躊躇なく簡単に殺した生き物が近くにいるにも関わらず、膝をつき死体の手を取る
女神「ちょっと、話したいから悲しむの後にしてくれる?どうせ無駄なんだしさー」
少女は無言を貫く。
女神「無視?この私をシカトとかひどぉい。バチ当たるよー」
ぎゃあぎゃあ騒ぎ続ける女神にニコッと微笑み顔を向ける。
少女「お静かにお願いしますわ」
女神「………わかった」
この時、誰もが少女も殺されてしまうのではないかと恐怖していたようだがなにか思うところがあったのか、女神は素直に従った。
沈黙が数秒続いたあと。突然光が当たりを包み込むと、先程殺された人間が起き上がっていた
人間「…え…?俺、は…」
女神「……!」
少女「良かった。生むことが出来たので生き返らせるのも出来るのではと思い、試してみたんです」
人間「あ、ありがとうございます!!申し訳ありません、お手数お掛けしてしまって…」
少女「お気になさらず」
少女は柔らかく人間に微笑みかけ、くるっと女神の方を向いた。
少女「さ、行きましょう。わたくしと話したいことがあるのでしょう?」
2人は話が聞こえないよう、遠くに離れていく。
エルフ「2人きりで大丈夫ですか…?」
少女「ええ。皆様はいつも通り過ごしていただいて大丈夫ですわよ」
心配するエルフに少女は即答した。
数時間後。少女はソワソワと落ち着かない様子の皆の元に戻ってきた。
少女「話し合いは無事終わりました。あの女神は帰りましたわよ。」
少女の一言を聞き、皆歓喜した。女神が何をしに来たのか、少女は語ってくれない。だが恐らくこの世界を滅ぼしに来たのだろう。
世界最大の危機は、少女によって収束しのだ。
その後災害は多少あったものの、これ以上のものは無かった。
私たちに緑と命を与えてくれた1人の少女。
私たちは彼女を女神と同等の神聖なお方だと考え、自然を司る精霊として祀っている。
名はアルテア。彼女は今もどこかで、精霊たちとひっそり暮らしている。極たまに我々の街へ遊びに来ているというので、運が良ければ会えるかもしれない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
アルテアは静かに、優しい声で読み終えた。
途中、寝ちゃいそうになったけど話が凄すぎて眠気なんて吹っ飛んだ…
アンバー「……すご、かったです」
全員驚きで静まりかえる中、アンバーが口を開く。
テン「ほんと!!実感わかない…この世界、先生が作ったの?」
アルテア「まあ、そういうことになりますわね」
アルテア「多少人間たちに付け加えられていますが…元はわたくしが書いたお話ですの。ちゃんと実話ですけどね。今は学校の授業でもこれを読むらしいですわよ」
テン「授業でも?!」
シオン「付け加えられた…だから視点や語りがチグハグだったのか。……でも、実話ということは会ったことあるんだな、女神と」
問いかけにアルテアは何も答えず、微笑みを返すだけだった。
アルテア「さ、今日はもう遅いですし寝ましょう。」
正直、さっき覚めた眠気もまた来はじめてたから助かった。今なら少し目を閉じただけで寝れそうだ…
テン「そうだな!おやすみ!」
アンバー「おやすみなさい」
シオン「ああ、…おやすみ。」
寝てから数時間後。深夜の3時頃、私は目を覚ました。
気づくと周りに誰もいない。
みんなを探し、周りを見渡す。
アンバーは…床で寝てやがる。ふん、戻してやろ。
とは思ったものの動く気になれず、魔法でベッドに乗せた。よし。
シオンと先生は……ベランダにいるな。なにか話してるけど遠くて聞こえない…動くのはだるいし聞こえないし、しょうがない。また寝よう。
……そういえば、最近はシオンのふとした瞬間に見せる諦めたような生気のない顔を見なくなった気がする。
アンバーも変な執着はしなくなったし。
ふふ、これって多分いい事。私も変われてるかなぁ…
ダラダラと色んなことを考えていると、いつの間にか寝落ちしていた。
~ベランダにて~
シオン「まさかアルテアが女神と面識あったなんてな。…どんな関係なんだ?」
アルテア「ふふ、そんな身構えないでください。そうですわね…先程話した言い伝え、あそこには女神が何をしにきたか書いてなかったでしょう?」
シオン「そうだな」
アルテア「その内容が、自分以外に世界を創る生物がいるなんて気に食わない、と殺しに来たけど一目惚れしたから見逃す。その代わり自分と天国に来て。と。」
シオン(あの女神が惚れるとか…凄いな、どんなことしたんだよ…というか、)
シオン「…割とどっちも変わらなくねえか?」
アルテア「全くその通りですわよ。丁重にお断りさせていただきましたわ。」
シオン「へえ、よくそれであの女神が諦めたな」
アルテア「いいえ?何度も迫ってきましたわ。その度にお断りして、今はオーラや容姿、住む場所を変えてなんとか逃げ切りましたけど」
シオン(逃げ切れるのか……いいな。)
アルテア「貴方も彼女に苦労させられたのでしょう?どんなことがあったかお聞きしても?」
シオン(こいつになら…話しても、いいか。)
アルテア「あの女神…そんなことを…」
シオン「あはは…もう慣れたし、いいんだよ」
アルテア「いい訳ありませんわ。貴方がここに来たことによって、女神らわたくし事を発見するに違いありません。そうなったら、一緒に文句を言いに行きましょう」
シオン「賛成だ。……ちなみに、女神は一目惚れしたとか言うけどアルテアはどうなんだ?」
シオン(聞くまでもない気がするけどな)
アルテア「もちろん、嫌いですわ。あのクソ女神」
シオン「ふ、俺もだ。」
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