おいしい狩猟生活

エレメンタルマスター鈴木

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  川に向かう際、角兎を更に二羽発見。サクッと狩って川へ。

  川の深さは膝位で幅は二メートル程、水は澄んでいる。川と言うか小川だな。
  流れは緩やかなので肉が流されて行く事はないだろう。沈めて冷やしておく。その間に皮の内側の脂を落として洗うか。ついでに内臓もな。



  色々とお土産を持って拠点へと帰還。兎三羽に桃、トイレのペーパー代わりに使える葉、山芋、岩場で見つけたイワタケ、その他ワラビ等の山菜を葉の鞄でに入れて持てるだけ持ってきた。

  すぐに気付いた者達が寄ってきた。太陽は真上から少し傾いている。三時頃か?そう言えば太陽や月や自転公転諸々が地球と同じなんだったか?なら方角も大体分かるな。

  どうやら全員揃っているようだ。とりあえず食事にする。女性陣は桃に大分喜んでいる。それ以上にペーパー代わりの葉に喜んでいたがな。うん。
  兎は本当は熟成したほうがいいんだが、冷暗所など無いから香草を腹に詰めて丸焼きに。食べれる内臓もぶつ切りにして枝の串に刺して焼く。砂浜に置いておいた黒い石に海水をかけ、蒸発後に残った塩が少し採れたのでそれをパラパラと振りかけ、少しずつ食べれるように皆で分けた。

  初めての魔物肉は中々の味だった。地球で食べた兎より遥かに美味い。でもやっぱり兎は煮込みで食べたかったな。



  食事が終わってそれぞれの報告を聞く。そしてこの異世界、植生がおかしい事が分かった。気温の寒い土地の木と暑い土地の木が隣り合わせて生えている。違う季節に生る山菜が同時に採れる。明らかにおかしい。

  オタクトリオの推測によると、この異世界独自のものの影響、つまりスキルによるものではないかとの事。暑さに弱い木には暑さ耐性スキル、寒さに弱い木には寒さ耐性のスキルが付いているのではないかと推測。それと植物にも努力値があって、生命力と繁殖力が上がっているのかもしれないだとか。確かにヤシの木や桃も凄い数が生っている。

  というかすっかりスキルとかステータスの存在を忘れていたな。今はやることが多くて時間がないから、余裕ができたら一度確認してみよう。



  拠点に良さそうな場所があるので移動をしないかと提案。川が近くにある事と、赤土で窯や土鍋を作れるという話しが出て即全会一致で可決。今日一日はここで過ごし、明日の朝方早くから移動を開始する運びとなった。

  拠点内は今の所シゲ爺とフミ婆のお陰で上手く回っているようだ。ここは任せて拠点予定地の周辺を探索しよう。危険な魔物がいたら仕留めておかなければ。



  拠点予定地に着いた。ここで石斧にちょうどいい石を探す。斧とは名ばかりの棍棒のような見た目だが、武器としてはなかなか優秀なんだなこれが。
  フミ婆に作ってもらったロープを使って、見つけておいた太い木の棒と石をガッチリ組む。うん。これなら地球の熊や虎なら頭を一撃でド突き殺せるくらいだ。魔物もあの兎位なら即死だろう。

  では、周囲の探索だ!



  頭の後ろがチリッときた。
  周辺を警戒する。これはもう何度も経験した事がある。何かに狙われてる時の感覚だ。

  辺りを見回す。  何もいない。
  臭いは?  無い。
  音は?  何も聞こえない。

  この状況は覚えがあるぞ?  急いで上を見る。そいつと目が合った。

  蛇だ。奴らは自然に潜むハンターだ。何度も危ない目に遇わされたから自然と奴らが近付くと分かるようになった。
  蛇の相手なんて慣れたもんだよ。  普通ならな……?

  なんッだコイツ!?
  昔アマゾンで首を叩き斬ったアナコンダより遥かにデカい!  しかもコイツ毒持ちじゃねぇか?頭が三角の分かりやすい毒袋持ちだ!


  神様!周囲に強い魔物はいないんじゃなかったんですかねえぇぇ!?
  チクショウめッ!神なんてもう信じねぇぞオイッ!



  目を逸らさずにゆっくりと後退る。
  油断してた訳じゃない。周辺の警戒は怠ってなんて居なかった。
  それでもまだ甘かったんだな?
  なんせここは異世界で、こういう魔物がいる場所なんだ。角兎が楽に仕留められたからとか、神が危険は少ないと言ってたからとか。今の状況になってしまってからではなんの意味もない。

  はぁ……でもな?俺は死ぬつもりなんて欠片もないぞ?
  お前を狩って、美味しく食ってやるから覚悟しろやオイ!!


  って決意を固めた瞬間に飛び掛かってくんじゃねぇ!


「ツォッ!?」


  反射で避けたら変な声出たじゃねぇか!
  さっきまで俺の首があった場所を通りすぎ、後ろにあった木に口がガッチリとハマッたようだ。 
  ドゴッと音が鳴った。

  伸びきった体に石斧を振り下ろす。
  ドムッ!と鈍い音がなるが、蛇は動き続けている。
  なんせデカい。直径四十センチメートル位はあるか?昔倒したアナコンダの倍くらいだな。

  続けて数度叩き込む。効いてはいるのだろうが決定打にはならないようだ。
  硬いわけではない。寧ろ弾力性があって、打撃が通り辛いんだ。
  石斧じゃダメだ斬撃か刺突性の武器がいる。

  何が優秀な武器だよ!誰だそんな事言ったの!?

  やってる場合じゃない。噛んでいる木がミシミシと悲鳴を上げている。もうすぐ自由に動き始めるぞ?
  周辺を見渡す。役立ちそうなものは何もない。そうこうしている間に奴は木を噛み切った。


「シャアァァーー!!」


  此方を見て鎌首をもたげている。飛び付いて来そうだな。オイ?

  案の定飛び掛かってきたが、今度は余裕を持って避けることが出来た。
  俺と奴の立ち位置が変わる。奴はまた飛び掛かるつもりのようだ。

  来たッ!今度は迎え打つ!
  足元にある奴のへし折った木を蹴りあげてキャッチし、口の中にブチ込んだ。


「シャガボァッ!?」


  きたねぇ声出してんじゃねぇよオラ。

  これでまた時間が稼げる。
  だがこのままじゃジリ貧だぞ?  どうするよ……。
  手汗をベストで拭くと、ポケットに入っている何か長い物が当たった。


  兎の角だ!!解体した時に入れたまま忘れてた!


  角を取り出し、頭を振って暴れる奴に取り付く。
  狙うは奴の脳ミソ。頭の後ろからやや斜めに突き刺す。
  ダメだ、脳まで届かない。骨が邪魔だ!

  ふと気付く、奴には使えないと思って腰に差し戻した石斧だ。


  俺は君が優秀な武器だと信じていたぞ!
  熱い手のひら返しを一人で繰り広げながら気合いを入れる。


「くたばれオラァァーー!!」


  身体中の筋肉とバネを使い、渾身の一撃を半ばまで刺さった角へ叩き込む。


「―――ッ!?」


  奴が声にならない声をあげて痙攣した。
  しばらくビクビクとしていたが。やがて動かなくなった。


  ふぅ……強敵だった。
  これが、魔物か。きっとこいつより強い奴もまだまだいるんだろう。

  そしてきっと、美味いんだろうなぁ。



《新しいスキルを取得しました》


「あぁ?」


  闘いの余韻に浸る暇もなく、頭に響いた謎の声に混乱した。
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