おいしい狩猟生活

エレメンタルマスター鈴木

文字の大きさ
9 / 39

9

しおりを挟む
  色々と会話をしたから喉が渇いた。困った時のヤシの実だ。今回は成熟果も取ることにする。未熟果は汁と果肉をすぐに食べれる点で便利だが、成熟果は外皮のココナッツファイバー、中の種子からはココナッツオイル、ココナッツミルク、ココナッツクリーム、ココナッツバターが作れる。本当に優秀だよな。

  サクッと人数分を入手して渡すが、飲み方が分からないらしい。石とかで簡単に穴をあけれるんだがなぁ。今回は俺が全部穴あけするか。狩猟ついでに何か穴あけに良さそうな物を探してこよう。


「皆順番に持って来てくれ。穴をあけよう」

「兄貴、お願いします!」

「おう」


  ソウか。オタクトリオ達なんだが、俺が狩猟と武術を教えると言ってから、急に俺を兄貴と呼び始めた。とりあえずあけてやるか。
  実を受けとって左手に持ち、右手の人差し指を突き刺す。これやるときのドチュッて音が結構好きなんだよな。
  

「ほれッ」

「は?  は?」

「なんだ?言っとくが指は綺麗だし、穴をあけた部分も汚れを拭いてたから、中に入っていった皮も綺麗で汁は汚れてないぞ?」

「兄貴、胸に七つ傷があったりしますか?」

「バカ言ってないで次だ次!」


  指で刺したからか?でも俺はいつも自分を祖父と比べてるからな、それを思うとまだまだなんだよ。祖父なら指を突き刺しても中に皮が押し出されて入ったりしない。突き刺した部分が綺麗に消失しただろう。俺はまだまだだ。


「次は僕のをお願いします。師匠」

「おう」


  次はタクか。タクの奴も急に師匠と呼び出した。それは別にいいんだ。でもさ、タクが師匠とか呼び出した辺りから、女性陣の中の数人からなんかねちっこい視線がくるんだよ。小さい声でボソボソと、どっちが受けだ攻めだとおぞましい言葉が聞こえてくるし。多少の気晴らしになってるようだから気付かないふりで我慢するが、せめて俺に聞こえないようにしろよ。



  サクッと全部をあけ終えた。チビッ子達のキラキラな視線がくすぐったい。少し指示を出してからまずは近場を見て回るか。


「タク、ソウ、ダイ、ユウ。少し離れた場所にトイレ用の穴を掘ってくるんだ。まずお前達は体力を付けろ。じゃないと狩りなんて出来ないぞ?二人が掘って二人が周辺警戒で交代しながら、それなりに深い穴を一人二つ掘れ。掘った穴の周りの地面に長めの枝を刺して、飲み終わったヤシの実をかぶせて目印にしてこいよ」

「「「「わかりました!」」」」


  穴を掘るのは普段使わない筋肉をよく使うからな。いい体力作りになるだろう。汗をかくだろうから一つずつヤシの実を持たせる。今度は自分であけてみろよ?


「シゲ爺。あいつらにトイレ掘りに行かせたから、目隠しになる簡単な壁を頼む。フミ婆がロープを作ってくれるまでは、とりあえず草紐でなんとか頼んだ」

「うむ。儂に任せとけ。そうじゃ、ゲン坊よ。探索に行くなら粘土質の土を探してみてくれんかの?窯も作れるし、壁の隙間にも埋め込めるしの」

「了解。フミ婆は引き続き糸紡ぎを頼む。ヤシの実の外皮の中にある種子は取っておいてくれ。道具ができたらオイルとミルクを作る。それと麗華さんの娘達も近くにおいて見といてくれるか?近場とは言え麗華さんには野草採取を頼みたいからな」

「はいはい。婆に任せておくれよう」

「聞いてただろうが、麗華さんは希望者を連れて野草採取を頼む。子ども達と離れさせて申し訳ないが、他にできる人がいないんだ。フミ婆の他にも何人か子ども達につけるから、よろしく頼む」

「ええ。自分で立候補したんですから、大丈夫ですぅ。それにうちの娘達は賢いですから。ゲンさんこそ気を付けて下さいねぇ?」

「ありがとう」


  本当頼りになる爺婆だな。それと麗華さん、娘達を自慢する時のドヤ顔が娘達とソックリ!可愛いなチクショウ。

  さて、癒されたところで出発しよう。



  まずは森と同化だ。呼吸は小さく足音を立てず、自分の匂いさえ森に、空気に溶け込む様に。
  そして五感をフルに使って情報を探る。目を凝らし、耳を澄まし、鼻でかぎ分ける。肌に触れる空気からも周囲の情報を得る。

  甘い匂いがする。多分果物だ。
  拠点から離れて五分、普通のひとなら十分かかるかの距離だな。以外と近い距離に穴場があった。
  桃だよおい!幸先いいな!それも群生していて、見る限りではかなりの規模だ。百人単位で収穫しても簡単には枯渇はしないとハッキリわかる。だが採るのは帰り、俺の今の狙いは肉なんだよ。

  拠点を半円で囲うように、そしてそれを広げるように探索する。警備も兼ねているからだ。あいつらが育ってくれるまでは、俺が頑張るしかない。時短の為に素早く移動しているが、ここまでで小さな川と、木々が禿げた赤土の見える開けた土地、色々と有用な植物も見つけている。
  開けた土地は今の拠点から街への方向に十分程の距離にあった。少しでも街に近づくし、赤土や岩が多くあって便利そうだ。川も近いし此方に拠点を移した方が良さそうだ。


  そして遂に見つけた。ウサギだ。
  いや待ておかしいぞ?なんで角が生えてやがる。いきなり魔物かよ!角だけじゃない、よく見りゃ口から牙も突き出ている。まさか肉食か?
  まぁいい、とりあえず狩ろう!

  武器は?移動中に作っておいた木の槍だ。岩場で削って先を尖らせておいた物だ。
  普通のウサギなら素手でも余裕だが、こいつは魔物だ。油断はしない。

  死角から近づく。音を鳴らすなんてへまはしない。スルスルと蛇のように。そしてひと突き!狙い通りに首へ。
  しばらくは暴れたが、すぐに動かなくなった。魔物って言うからもっと激しい抵抗を覚悟していたが、拍子抜けした。驚異度が低いからだろうか?まぁ簡単に狩れる分にはいいんだ。



  上手く頸動脈を突けたようで、血抜きはすぐに終了した。まぁ小さいからな。これがシカとか体格が大きくて足の長い生物だともっと時間がかかる。

  首の傷からズルッと胴体方向に向けて、皮を一息に剥がす。普通の兎より皮がかなり堅く、それでいて柔軟。こりゃ色々と使えそうだ。流石魔物!
  でもタンニンやミョウバン何て無いからなぁ。海水でなめしてからココナッツオイルを使うか。

  一番鋭い石ナイフで腹を裂き内臓を取り出し、道中で見つけた大きな葉でくるんで草紐で縛る。兎本体も足を縛って吊し運ぶ。見つけておいた川に向かって肉を冷やし、皮を綺麗に洗おう。
しおりを挟む
感想 149

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

悪役令嬢が処刑されたあとの世界で

重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。 魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。 案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...