おいしい狩猟生活

エレメンタルマスター鈴木

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  風呂上がりにミーティングだ。
  今日の見張りの確認や、明日の予定などを確認していく。

  明日も、というよりしばらくは基本的に、拠点の強化を進めることになった。
  それと同時に訓練時間を入れる様にして、主に弓や投げ槍の遠距離攻撃、その次に長めの槍と、なるべく距離を取って戦える武器の訓練を優先させる。

  離れた距離から安全に倒せるのが一番だ。
  ステータスが上がってから近接戦闘は学べばいい。



  さて、二日目の夜だ。
  昨日は救出の為の戦いであって狩りじゃないからな。
  ゆっくり見てまわりたい。

  拠点周りをぐるっと見回り、その距離を伸ばしていく。
  まずは俺が離れても大丈夫か近場を確認したいからな。

  昨日のような焦りがないため、心地良い夜の静けさを楽しむ余裕がある。

  今の所見つけているのはいつもの角兎だ。
  だがこいつらは狩らないでおく。
  拠点の人間が訓練するための獲物として残しておきたい。
  兎は驚異度的にも手頃だからな。

  拠点から一キロの範囲には特に危険そうな魔物はいないようだ。
  少し遠くに行ってみるか。



  ちょっと東方面に来てみた。
  目の前には湿地が広がっている。
  湿地にも色々種類はあるが、目の前のこれはマングローブに近いだろう。

  ただポツポツと所々に、低い木に混じって物凄く高い木が生っている。
  あんなものは地球のマングローブでは見た事がない。

  高さは……ちょっとわからんな。
  多分八十メートルはあるだろうか?
  高さの割には幹はそれほど太くはない。
  あくまで高さの割には、だ。
  他の一般的な木に比べれば太さは十倍くらいだろうか。
  葉は余り横には広がらず、全体的にスマートな見た目の木だ。

  とりあえず探索してみよう。



  現在、しじみ取りをしております。

  いやだって、そこら中に美味しそうな貝ちゃんが見えたら取らないか?
  ポーチにしじみを回収していると、さっきから感知に引っかかっていた存在が、少し遠い位置に姿を表した。

  液体の様なゼリーの様な。
  表面を波立たせながら、どうやっているのか滑るように移動している。

  スライムだ。

  おお……ファンタジーと言えばコレと言われる存在の一つが目の前に。
  ちょっと感動。

  スライムの見た目はよく知る水饅頭の姿そのままだ。
  大きさはそれほど無い。
  二号のハンドボール位の大きさか。

  ただ、その体は見たところ三層からなっている。
  一番外側のジェル状で透明な層、その内側の薄い青色の層、そして更に内側にある黒い玉の層。
  黒い玉の少し上には小さな魔石が見える

  こりゃ黒い玉が核とかそんな感じの存在なんだろうな。

  そうこうしていると、どうやらスライムもしじみを捕食しにきたようで、その体内にしじみを取り込み始めた。

  ジェル状の透明な物体に取り込まれたしじみは、徐々にその中心に引き寄せられる。
  そして青の層に到達したしじみは、徐々にその身を溶かされる様に小さくなっていき、ついには消えてしまった。

  えぇ……生きたまま溶かされんのあれ?
  怖えぇ~。

  怖いので近付かずに倒しますね!

  弓を持ち矢をつがえ、強弓の名に違わぬ張りの強い弦を引き絞る。
  狙うは中心の玉。

  放つ!

  放たれた矢は、あっけなくスライムの三層からなる体を貫通した。

  ……あれ?玉の所で止まると思ったんだが。
  貫通して矢が抜けたところを見るに、黒い玉はそれほど堅い物ではなさそうだ。



《新しいスキルを取得しました》

食事回復:2  new


 
  新しいスキルか……効果は?
  どうやら食事によって、その時失っている体力、魔力を僅かに回復させるらしい。
  ただし、上限を超えて回復することはないと。

  美味い物食ってついでに回復もできるってのはいいなぁ。

  よし、では遺骸を検分してみよう。



  まずは透明なジェル。
  神の話では火の燃料にいいとのことだったが。

  モッチモチだ!中々な弾力だこれ。
  だがネバッと手にへばりつく感じはしない。
  ぷにッとした感触はあるが、手につかない……なんか気持ちいいぞ?

  弓で空けた穴からナイフで切る。
  鋭いナイフなら切れるが、打撃武器や叩き潰すタイプの剣ならダメージを与えられなさそうだ。

  威力の高い刺突と鋭い斬撃が弱点。
  覚えておこう。

  切り開いていくと青い層に到達しそうになる。
  ……溶けないだろうな?
  一本ダメにする覚悟でやってみるか。

  青い層にナイフが入る。
  どうやら液体のようだ。
  特に溶けたりはしていないな?
  酸の類いではないようだ。

  考えられるのは生きている時に分解が発動しているとかか。
  それに、回収した矢は全く破損していなかった。
  通り過ぎるのが速いせいか、それとも分解は任意で発動するのかもしれない。

  考えに没頭していると、青い液体はいつの間にか蒸発していた。
  揮発性が凄く高いのだろう。
  密封できる容器が無い内は回収は無理だな。

  黒い玉は何やら黒い硝子のような見た目だ。
  黒曜石が知っている物の中で一番近いか。
  真っ二つになっているそれは、触るとサラサラと崩れて粉になった。
  とりあえずこれも回収しておこう。



  さて、時間はまだたっぷりある。
  探索は始まったばかりだ。
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