おいしい狩猟生活

エレメンタルマスター鈴木

文字の大きさ
31 / 39

31

しおりを挟む
  夕食の準備が始まったようだ。

  氷が作れる様になった事で保存が出来るようになったので、今夜食べない物や刺身にして後日食べる物を、寄生虫対策も兼ねてマイナス二十度以下で一日以上、臨時で作った倉に保存する事にした。

  ナマコや干すのに適した魚、サンゴ礁なのに何故か生えている昆布などは干すことに。

  それでも今日取ってきた海産物はまだまだある。
  地球とは違いこの辺の森も海も手付かずなので、この程度では全く目減りしないため色々と取り漁ってきた。

  だが人数に対してちょっと多い食材達も、皆の腹にすっぽり収まるだろう。
  やっぱり皆日本人だからな、海産物が美味いのを知っているから目付きが違う……というかちょっと怖いくらい気合い入ってんだよなぁ。



  準備が整った。
  土魔法で網状に作った石網と、油が入った揚げ物用の鍋がズラッと並び熱され始め、煮込みの鍋が奥で既にいい匂いをさせ始めている。

  アオウミガメ、シャコガイ、伊勢海老などは焼いて食べる。
  ちびっ子達の目が完全に伊勢海老をロックオンしてて笑いが出そうだ。小さいのによく知ってるよな。

  ベラ、ハリセンボン、タコなどは素揚げか、じゃがいもから抽出した片栗粉をまぶして揚げる。
  学生達は揚げ物狙いが多いな。特に男子。まぁ若いからなぁ。

  ウツボ、ハタなどは煮て食べる事にした。
  水魔法で急遽干した椎茸や昆布で確り出汁をとったので、もう美味しいのが分かり切っている。

  そしてお楽しみのウニとシャコだ。
  ウニは勿論生で。海水でザッと洗うだけで食べられるからな。
  シャコは半分を塩茹でにし、半分は揚げる。
  シャコの揚げ物好きなんだよなぁ。

  大人には酒も出る。
  それほど量はないが、シゲ爺や亮など酒の好きそうな者は上機嫌だ。

  そしてそこまで酒好きじゃない俺も上機嫌だ。


「はい、ゲンさん」

「ありがとう。何倍も美味く感じるよ」

「まぁ!嬉しいわぁ」


  だって隣で麗華さんがニコニコとお酌してくれてんだよ!
  娘二人も逆側で同じニコニコ顔で料理をパクついている。

  いつの間にか天国に来てたりしてないだろうな?



  食後にささっと風呂に入り、上がったら見張り以外で男子会だ。
  昼間に考えてた通り、ド直球で色々聞くことにした。

  性犯罪が起こらないか心配していること、若い子達が勢いで突き進み、後で後悔しないか等、そのまま聞いてみた。
  皆怒らずに聞いてくれた。というよりもどうやら、彼等も同じような心配を少なからずしていたようだ。

  成人男性達は非常時にそういった事が起こる事を知っており、それぞれが誰にも相談できずに一人警戒していたらしい。
  逆に彼等にも正直に思っている事を聞いたら、俺の事を一番警戒していたようだ。
  おぅふ……そりゃ俺が理性をなくし暴れたら、事実として今の彼等が束になっても止められないだろうからな……。仕方ない。

  学生達も似たようなもので、実は大人達に内緒で協力関係を築いていたらしい。
  それぞれの仲のいい女子を守るために、男子生徒で団結して、もしもの時は大人に対抗しようとしたようだ。
  タク達もこれについては俺に黙っていたらしい。
  もしもを想定するのは悪いことじゃない。当然怒ったりはしない。

  初日の別行動こそ正常な判断ではなかったが、元々は皆女性に対して誠実なようだ。
  まぁ異常な奴なんて日本人男性全体の比率で言えば小数だ。
  被災地とかでバカやらかす奴にしたって自称日本人が多いしな。テレビでは教えてくれないが。
  だがそういう犯罪行為をする奴は日本人にも確かにいるので、警戒していた彼等は正しい。俺達はまだ出会って日が浅いのだから。

  学生達もどうやら真剣に考えている様だし、大人しく見守るか……上手くいかなったとしても、そんなのはよく考えたら普通の時も同じだったわ。
  相談されたらそれに乗る、それでいいか。



  交代した見張りにも同じ事を話し、それからは男同士の恋バナの開始だ。自分の気になっている女性を教え合ったりしている。
  完全に修学旅行のノリだなと思ったが、そういえばこの子らは修学旅行中に飛ばされたんだったな。

  恥ずかしがる学生達は微笑ましいが、そう思うと少し痛ましいよな……。

  亮や殆どの成人男性はどうやら、この世界のエルフやケモミミ娘を狙う気らしい。折角異世界にいるんだし、そういうのもありか?

  一番驚いたのは、男性同士のカップルが一組既に出来ていたことだ。
  初日の夜に共に逃げる内に惹かれ合ったらしい。
  ……うん。まぁいいんじゃない?幸せそうだし、おめでとう。
  ただ半歩程距離を余分に空けてしまうのは許して欲しいな!

  ちなみに俺は当然麗華さんだ。
  お互い大人だしなぁ……出会って数日だが、話してれば向こうも俺を好いてくれてるのは分かる。
  俺なら娘達を守れるからという打算的なところも少しあるだろうが、母親なら子供を優先して当然だ。
  まぁ焦らずいこう。



  今日の男子会を経て、腹を割って話しあった男性陣の結束は、かなり高まった様に思う。

  だが女性陣への配慮として、男性陣同士信じていてもそれはそれとして、万が一暴走する者が出たら素早く止められる様に各々が気を配る事を女性陣に伝えた。
  同じ様に女性陣にも、なるべく一人で行動しない事と、無意味に肌を晒さない様に配慮を求めておいた。

  こういうちょっとしたことが大事だと思うんだよ。
しおりを挟む
感想 149

あなたにおすすめの小説

青い鳥と 日記 〜コウタとディック 幸せを詰め込んで〜

Yokoちー
ファンタジー
もふもふと優しい大人達に温かく見守られて育つコウタの幸せ日記です。コウタの成長を一緒に楽しみませんか? (長編になります。閑話ですと登場人物が少なくて読みやすいかもしれません)  地球で生まれた小さな魂。あまりの輝きに見合った器(身体)が見つからない。そこで新米女神の星で生を受けることになる。  小さな身体に何でも吸収する大きな器。だが、運命の日を迎え、両親との幸せな日々はたった三年で終わりを告げる。  辺境伯に拾われたコウタ。神鳥ソラと温かな家族を巻き込んで今日もほのぼのマイペース。置かれた場所で精一杯に生きていく。  「小説家になろう」「カクヨム」でも投稿しています。  

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

おばさん冒険者、職場復帰する

神田柊子
ファンタジー
アリス(43)は『完全防御の魔女』と呼ばれたA級冒険者。 子育て(子どもの修行)のために母子ふたりで旅をしていたけれど、子どもが父親の元で暮らすことになった。 ひとりになったアリスは、拠点にしていた街に五年ぶりに帰ってくる。 さっそくギルドに顔を出すと昔馴染みのギルドマスターから、ギルド職員のリーナを弟子にしてほしいと頼まれる……。 生活力は低め、戦闘力は高めなアリスおばさんの冒険譚。 ----- 剣と魔法の西洋風異世界。転移・転生なし。三人称。 一話ごとで一区切りの、連作短編(の予定)。 ----- ※小説家になろう様にも掲載中。

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

処理中です...