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  夕食の準備が始まったようだ。

  氷が作れる様になった事で保存が出来るようになったので、今夜食べない物や刺身にして後日食べる物を、寄生虫対策も兼ねてマイナス二十度以下で一日以上、臨時で作った倉に保存する事にした。

  ナマコや干すのに適した魚、サンゴ礁なのに何故か生えている昆布などは干すことに。

  それでも今日取ってきた海産物はまだまだある。
  地球とは違いこの辺の森も海も手付かずなので、この程度では全く目減りしないため色々と取り漁ってきた。

  だが人数に対してちょっと多い食材達も、皆の腹にすっぽり収まるだろう。
  やっぱり皆日本人だからな、海産物が美味いのを知っているから目付きが違う……というかちょっと怖いくらい気合い入ってんだよなぁ。



  準備が整った。
  土魔法で網状に作った石網と、油が入った揚げ物用の鍋がズラッと並び熱され始め、煮込みの鍋が奥で既にいい匂いをさせ始めている。

  アオウミガメ、シャコガイ、伊勢海老などは焼いて食べる。
  ちびっ子達の目が完全に伊勢海老をロックオンしてて笑いが出そうだ。小さいのによく知ってるよな。

  ベラ、ハリセンボン、タコなどは素揚げか、じゃがいもから抽出した片栗粉をまぶして揚げる。
  学生達は揚げ物狙いが多いな。特に男子。まぁ若いからなぁ。

  ウツボ、ハタなどは煮て食べる事にした。
  水魔法で急遽干した椎茸や昆布で確り出汁をとったので、もう美味しいのが分かり切っている。

  そしてお楽しみのウニとシャコだ。
  ウニは勿論生で。海水でザッと洗うだけで食べられるからな。
  シャコは半分を塩茹でにし、半分は揚げる。
  シャコの揚げ物好きなんだよなぁ。

  大人には酒も出る。
  それほど量はないが、シゲ爺や亮など酒の好きそうな者は上機嫌だ。

  そしてそこまで酒好きじゃない俺も上機嫌だ。


「はい、ゲンさん」

「ありがとう。何倍も美味く感じるよ」

「まぁ!嬉しいわぁ」


  だって隣で麗華さんがニコニコとお酌してくれてんだよ!
  娘二人も逆側で同じニコニコ顔で料理をパクついている。

  いつの間にか天国に来てたりしてないだろうな?



  食後にささっと風呂に入り、上がったら見張り以外で男子会だ。
  昼間に考えてた通り、ド直球で色々聞くことにした。

  性犯罪が起こらないか心配していること、若い子達が勢いで突き進み、後で後悔しないか等、そのまま聞いてみた。
  皆怒らずに聞いてくれた。というよりもどうやら、彼等も同じような心配を少なからずしていたようだ。

  成人男性達は非常時にそういった事が起こる事を知っており、それぞれが誰にも相談できずに一人警戒していたらしい。
  逆に彼等にも正直に思っている事を聞いたら、俺の事を一番警戒していたようだ。
  おぅふ……そりゃ俺が理性をなくし暴れたら、事実として今の彼等が束になっても止められないだろうからな……。仕方ない。

  学生達も似たようなもので、実は大人達に内緒で協力関係を築いていたらしい。
  それぞれの仲のいい女子を守るために、男子生徒で団結して、もしもの時は大人に対抗しようとしたようだ。
  タク達もこれについては俺に黙っていたらしい。
  もしもを想定するのは悪いことじゃない。当然怒ったりはしない。

  初日の別行動こそ正常な判断ではなかったが、元々は皆女性に対して誠実なようだ。
  まぁ異常な奴なんて日本人男性全体の比率で言えば小数だ。
  被災地とかでバカやらかす奴にしたって自称日本人が多いしな。テレビでは教えてくれないが。
  だがそういう犯罪行為をする奴は日本人にも確かにいるので、警戒していた彼等は正しい。俺達はまだ出会って日が浅いのだから。

  学生達もどうやら真剣に考えている様だし、大人しく見守るか……上手くいかなったとしても、そんなのはよく考えたら普通の時も同じだったわ。
  相談されたらそれに乗る、それでいいか。



  交代した見張りにも同じ事を話し、それからは男同士の恋バナの開始だ。自分の気になっている女性を教え合ったりしている。
  完全に修学旅行のノリだなと思ったが、そういえばこの子らは修学旅行中に飛ばされたんだったな。

  恥ずかしがる学生達は微笑ましいが、そう思うと少し痛ましいよな……。

  亮や殆どの成人男性はどうやら、この世界のエルフやケモミミ娘を狙う気らしい。折角異世界にいるんだし、そういうのもありか?

  一番驚いたのは、男性同士のカップルが一組既に出来ていたことだ。
  初日の夜に共に逃げる内に惹かれ合ったらしい。
  ……うん。まぁいいんじゃない?幸せそうだし、おめでとう。
  ただ半歩程距離を余分に空けてしまうのは許して欲しいな!

  ちなみに俺は当然麗華さんだ。
  お互い大人だしなぁ……出会って数日だが、話してれば向こうも俺を好いてくれてるのは分かる。
  俺なら娘達を守れるからという打算的なところも少しあるだろうが、母親なら子供を優先して当然だ。
  まぁ焦らずいこう。



  今日の男子会を経て、腹を割って話しあった男性陣の結束は、かなり高まった様に思う。

  だが女性陣への配慮として、男性陣同士信じていてもそれはそれとして、万が一暴走する者が出たら素早く止められる様に各々が気を配る事を女性陣に伝えた。
  同じ様に女性陣にも、なるべく一人で行動しない事と、無意味に肌を晒さない様に配慮を求めておいた。

  こういうちょっとしたことが大事だと思うんだよ。
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