異世界召喚された回復術士のおっさんは勇者パーティから追い出されたので子どもの姿で旅をするそうです

かものはし

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最初の町

宿に来ました

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 めでたく何の問題もなくすんなりと町へ入れた武……いやホイムは、今からの行動をしっかりと考えるべく町で落ち着ける場所を探しに向かうのだった。

「とりあえず宿かな」

夜だというのに町の通りは明るく、路肩の商店は活気に溢れていた。これだけ人がいて騒がしければ、子どもが一人で夜の町を歩いていてもわざわざ気に留める大人はいないだろう。
 とはいえ見つかってしまえば厄介なことになりかねないのは変わらないので、なるべく早足で町中を進むのだった。
 ダボダボで動きにくい格好に苦労をしながらも、ようやく町中にある宿を見つけた。
 木漏れ日亭という名前の看板を掲げた建物は二階建てで、一階は食事処となっていた。
 食堂から漂ってくる肉の脂が焼ける匂いに空腹だったことを思い出したホイムは匂いに誘われるまま店内に入ろうとしたが、

「っと、その前に……」

 周囲を見回して周りの大人の誰も自分の方を見ていないことを確かめると、サッと店横の小路に飛び込んで姿を隠した。
 するとホイムはこの世界に来た当初に女神から授けられた固有スキルである異世界スーパーを起動した。
 空中にウェブブラウザのようにスーパーの画面が浮かび上がった。
 生活に必要なものが多数揃っている異世界スーパーだが、実はホイムがこのサイトを利用したことがあるのは数えるほどしかない。それもこれも勇者一行にこのスキルを知られないために極力使用を控えたせいだ。
 そして今回も、別に買い物をするために起動したわけではない。

「チャージ金は……20,000Gか。これなら四泊分くらいにはなるかな?」

 これもまた勇者達に見つからないようコソコソと貯めに貯めた彼のヘソクリのようなものである。
 もしもこの金を異世界スーパーにチャージせずに現金として所持していたならば、先の離脱の際に貴重な旅の資金を失っていたところである。
 チャージ金の払い戻し処理を行うと、異世界スーパーの画面から金貨が二枚飛び出してきた。同時にチャージ金はゼロとなり、再び現金をチャージしない限り異世界スーパーで買物ができなくなってしまった。
 大事な宿泊賃を懐にしまうと、今度こそホイムは木漏れ日亭に突撃した。

「いらっしゃい!」

 木造の食堂の奥にカウンターがあり、フロアには木製のテーブルがいくつも並んでいて大の男達が山盛りの料理を囲んでガヤガヤと騒いでいた。
 喧騒の中を進んでカウンターに辿り着いたホイムの姿を見たカウンターにいる店主らしき男は眉を歪ませた。

「どうした坊主。迷子か?」

 やれやれそう見えてしまうのかと呆れてしまうホイムはそうではないと告げた。

「いえ。泊まりたいんです。一名です」
「一人でか? 両親はどうした?」

 そこでホイムは町に入場する時にしたのと同じ言い訳をしっかりと店主の男に伝えた。
 話をしている間も店主は料理を作り続け、奥さんらしき女性は慌ただしく料理を運んでは時折ホイムの方をちらちらと窺っていた。

「なるほど……それは災難だったな」
「災難には慣れているつもりです」
「子どもながらしっかりとしているようだな……分かった。しかし金はちゃんと持っているのか?」
「はい。これで何日泊まれますか?」

 ホイムは懐から金貨を一枚だけ取り出してカウンターに置いた。二枚目は不測の事態が起きた時の保険として出さないことにした。
 子どもが金貨を出したことに驚いた様子の店主だったが、すぐにそれが本物かどうかの確認をして、確認ができたようだ。

「ふむ……本物だな。これなら二泊できるぞ」
「じゃあそれで。……食事は込みですか?」
「朝昼晩三食しっかりとついてるぞ」

 それを聞いてほっとしたホイムのお腹が大きくなった。

「腹も減っただろう。二階の奥の部屋を使いな。すぐに料理を運ばせてやる」
「ありがとうございます」

 ホイムは促された通り二階に進み、突き当りの奥の部屋の前に立つ。食堂は大盛況だが宿泊する人は彼以外いないらしく、静かなものだった。

「おお……しっかりとした部屋だ」

 冒険冒険で野宿続き。しかも寝床はテントの外が定位置。不遇な処遇を受けてきたホイムにとって、立派な一室は楽園のように見えた。
 窓際に置かれたベッド、壁際のクローゼットと机、中央のテーブル。贅沢に慣れていないホイムには文句の一つもない。
 雑に脱いだローブを机に放り投げると、小さな体でベッドに飛び込んだ。

「ふぐー! ふぐー!」

 お日様の匂いがするふかふかの布団を抱いてごろごろとベッドの上を何往復もする。散々にベッドの感触を堪能したが、空腹のせいですぐに動きは止まってしまった。

「……」

 安全の約束された安息の地でようやく一人になれた。
 これからどうするか、何をしたいのか考えるには、空腹と疲れが酷かったのでひとまず目を閉じて休むことにした。
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