偽りの聖女は婚約破棄から始まる――最強の復讐劇

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第4話『仮面舞踏会と、聖女の逆襲』

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 王都に、冬が戻りつつあった。

 舞踏会の招待状は、貴族たちの手を次々に渡り、その噂はあっという間に広まった。

 ――王子殿下とリディア=クロフォード嬢の“婚約内定祝い”を兼ねた仮面舞踏会が開催される。

 その知らせを聞いたアメリアは、静かに立ち上がった。

 「行くわ。仮面の下に、わたしの“答え”を隠して」

 カイルが言葉を失う。だが、その目に宿るのは恐れではなかった。

 「……覚悟を、決めたんだな」

 「ええ。真実は、隠されてはいけない。わたしが聖女だったこと。すべて仕組まれた罠だったこと。……それを、わたし自身の口で暴く」

 「なら、俺も同行する。裏口からの潜入ルートは把握済みだ」

 「ありがとう、カイル」

 その夜、アメリアは銀糸の刺繍が施された黒のドレスに身を包んだ。

 半面を覆う深紅の仮面――それは彼女の“過去と決別する意志”を象徴するものだった。

 仮面舞踏会の会場は、王城の中庭に設えられていた。

 音楽、笑い声、香水の香り。だがアメリアには、それが仄かに腐臭にも似たものに思えた。

 リディアは中心に立ち、人々の賛美を一身に浴びていた。

 その手を取るのは、レオン王子――かつてアメリアが愛し、そして断罪された相手。

 「……あれが、すべてを奪った二人」

 「焦らずに。今は“仮面の聖女”として踊るだけだ」

 カイルの声に促され、アメリアは会場に入った。

 しばらくして、貴族の一人が彼女に話しかけた。

 「おや? どちらのご令嬢か……その仮面、まるで“黒い祝福”を象徴しているようだ」

 アメリアは微笑んだ。

 「ええ。祝福ではなく、裁きかもしれませんけれど」

 その言葉に、ざわりと場の空気が変わった。

 次の瞬間、彼女は会場中央へと進み出る。

 「お集まりの皆さま。今宵は賑やかですね。けれど一つだけ、お耳を拝借したい」

 その声は透き通っており、全員の意識を自然と引き寄せた。

 「私は、“元・聖女”アメリア=ローゼンベルク……ではありません。“本物の聖女”です」

 場が凍りついた。

 レオンが身を乗り出す。リディアが口元を引きつらせる。

 「この者は偽物だ! 偽聖女が再び……!」

 「では、証明しましょう」

 アメリアが両手を掲げ、祈りを捧げた瞬間、金色の光輪が頭上に現れ、純白の羽が降り注いだ。

 「……な、なんだこれは……!?」

 誰もが驚愕した。かつて王家の祭祀にしか現れなかった“聖印”が、彼女を中心に顕現したのだ。

 「この光こそが、神が与えし真実。わたしは、偽られ、捨てられ、奪われた聖女……その証を、今日ここに返しに来ました」

 沈黙。

 そして――狂ったような拍手の音が、会場の隅から起こった。

 「素晴らしい芝居だ。だが……お前は王命に逆らった者。聖女であっても、王を否定するなら、それは“反逆”だ」

 声の主は、リディア。

 アメリアは、静かに仮面を外した。

 「わたしは、誰の許しも要らない。“神”が裁きを委ねた存在だから」

 その瞳には、一切の揺らぎがなかった。

あとがき
アメリアの“逆襲”が始まりました。
次回、王家と貴族たちは混乱に陥り、リディアの仮面が崩れ始めます。

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