偽りの聖女は婚約破棄から始まる――最強の復讐劇

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第6話『聖女改革令、王国の夜明け』

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 王都を包んでいた仮面の祭典は、聖女アメリアの真実によって幕を下ろした。
 翌日から、王城と神殿は緊急会議に入り、列席した貴族や神官たちの顔色は、晴れやかさとはほど遠いものだった。

 そして三日後――ついに、聖女再認定の結果が発表された。

「王国は、アメリア=ローゼンベルクを“真の聖女”として再認定する。偽の聖女として王家に入り込んだリディア=クロフォードは、魔素に侵され、危険性を伴う存在と認定された。よって、王都からの永久追放とする」

 その布告が読み上げられた瞬間、広場に集まった民衆から歓声とどよめきが入り混じった声が上がった。

 「やはりアメリア様が本物だったのか……」
 「なんという誤審だ……王子は何をしていたんだ……?」

 王子レオン=ヴァルトハイムは、公的職務からの“無期限離脱”という形式で事実上の失脚処分を受けた。彼の姿を、それ以来誰も見ていない。

 アメリアは、王都の中央神殿に立っていた。

 白金の祭壇。その前で、彼女は誓いを立てる。

「この国における“聖女制度”を、根本から見直します。
 信仰を使い、特権を得るのではなく、真に人を癒し、導く者が選ばれる制度へ。
 私は、その始まりとなります」

 司祭たちが一斉にひざまずき、賛辞を捧げる。

 彼女が口にしたのは「聖女改革令」。
 それは、王国の政治と宗教の結びつきを一時的に切り離し、聖女の権威を“神”にではなく“人々の意思”に戻す試みだった。

 当初は反発もあった。だが、アメリアの真摯な行動と、何より民の圧倒的な支持がそれを支えた。

 その夜、アメリアは屋敷の書斎で書簡を整理していた。

 王都だけではない。辺境や地方領主たちからも、彼女宛に手紙が届いていた。

 「……不安と期待が入り混じっているわね」

 「それは当然だ。“聖女”という存在は、千年以上もこの国の柱だった。だが、それが虚構であったなら……改革は避けられない」

 カイルが静かに背後に立つ。彼は以前のような騎士の鎧ではなく、今は黒の正装軍服を纏っていた。

 彼は、アメリアの改革を支える軍事顧問として、新たな役職に就いたのだ。

 「……本当に、私は正しい道を選んでいるのかしら」

 アメリアはペンを置き、ぽつりと呟いた。

 「私怨から始まったの。最初はただ、あの人たちに“ざまぁ”と言いたかっただけ。でも、今こうして“国”を動かそうとしている。……それが、怖いの」

 カイルは言葉を選びながら、机越しに彼女の手を取った。

 「いいんだ。それでいい。始まりが私怨だって、目的が変わったなら、それは“成長”だ。君は、ただの復讐者じゃない。
 もう、“導く者”なんだ。……誇っていい」

 アメリアはそっと瞳を伏せ、そしてわずかに笑った。

 「ありがとう、カイル。……あなたがいてくれて、本当に良かった」

 その翌週、王城にて“改革初議会”が開かれた。

 議題は「聖女の選定方法」「聖印の承認制度」「信仰と政治の境界」など、多岐にわたった。アメリアはそのすべてに自ら出席し、時に民の声を反映させ、時に古い慣習を切り捨てる決断を下した。

 ――そして、その改革の象徴として、彼女自身に新たな称号が与えられることとなった。

 「聖女の枠を超え、国民の意志を汲み取る者として。
 アメリア=ローゼンベルク殿に、“黎明の導き手”の名を授けます」

 賛同の拍手が会場を満たす。

 それは、かつて「偽聖女」と断罪された令嬢が、今や“国の再生”の顔として讃えられた瞬間だった。

 その夜、アメリアは神殿の塔に登っていた。

 星が近い場所。

 遠くに灯る王都の明かりが、どこか暖かく見えた。

 「わたし……ここまで来たのね」

 「まだ“始まった”ばかりだ」

 カイルの声に、アメリアは頷く。

 「でも、きっと大丈夫。もう、迷わない。わたしはもう……誰かの下じゃない。“自分の意思”で歩けるから」

 塔の上で交わされた言葉は、やがて新しい時代の到来を告げる、最初の鐘の音と重なった。

あとがき
この第6話で、アメリアの“ざまぁ”は一段落を迎え、物語は国全体の改革へとスケールアップします。

彼女はもはや“被害者”でも“追放令嬢”でもなく、時代を導く主人公となりました。

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