偽りの聖女は婚約破棄から始まる――最強の復讐劇

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第8話『覚醒する白獣、神なき戦場』

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 轟音が、大地を裂いた。

 旧白祠の地下――封じられていた“何か”が、仮面の女の呼びかけに応じて目覚めた。

 漆黒の地割れから噴き出したのは、圧倒的な“魔力の塊”。

 それは形を成し、光を喰らい、そして“獣”となった。

 「白……い?」

 アメリアが見上げたのは、異形の巨体だった。

 体長は三メートル以上。毛皮のように輝く銀白の外殻をまとい、四肢の爪は刃のように鋭い。
 その眼には“理性”と“憎しみ”の両方が宿っていた。

 「アルベリア。私たちの“希望”にして、“最後の贖罪”」

 仮面の女が語る。

 「王国によって捨てられた“聖女候補”たち。その怨念と、我らが神の力を封じた、半神半獣の存在……。
 これは神罰よ、アメリア。“あなたの正しさ”を試すための――」

 「来るぞッ!」

 カイルが叫んだ刹那、白獣は地を蹴った。

 跳躍と同時に衝撃波が走り、地面が爆ぜる。
 聖騎士の一人が盾を構えるも、そのまま吹き飛ばされた。

 「守る結界、展開します……!」

 アメリアが両腕を広げ、神殿の祝詞を紡いだ。

 「光よ、わたしに問え。《導きの環(オーラム・サークル)》!」

 金色の魔法陣が空に浮かび、仲間たちの頭上に防壁が展開された。
 だが、それでもアルベリアの一撃は重い。地面は砕け、周囲の建物が次々と崩れ落ちていく。

 「化け物め……!」

 カイルが剣を抜き、正面から突撃する。

 だがアルベリアは“知性”を持っていた。剣の軌道を読むように一歩後退し、返す爪で空間を切り裂く。

 ――ギリ、と刃が擦れる。

 「こいつ……ただの魔獣じゃない……」

 「“人間だった”のよ。かつて、わたしたちの中にいた者たち。落とされた者、祓われた者、異端とされた者たち……彼女は“全て”を取り込んでいる」

 仮面の女が語る声に、少しだけ“悲しみ”が滲んでいた。

 「なら……わたしが“救う”!」

 アメリアは一歩踏み出した。

 「わたしが掲げた理想は、誰も排除しない改革よ。怨嗟に満ちていたとしても……その魂ごと、わたしが背負ってみせる!」

 彼女の祈りが届いたのか、アルベリアの動きが一瞬止まった。

 その目が、微かに揺れる。

 ――そこに、光が走る。

 「――今だ、アメリア!」

 カイルの声とともに、アメリアは手を伸ばし、祈るように叫んだ。

 「あなたに……癒しを……!」

 聖印が輝いた。
 祝福の光がアルベリアの身体に降り注ぎ、その肉体の“獣”の部分が次第に剥がれ落ちていく。

 「わたしは、あなたを……否定しない。
 あなたは、間違いなく“選ばれていた”。
 ただ……運が、時代が、あなたを裏切っただけ。
 なら、今度はわたしが――あなたを受け入れる!」

 ――光が爆ぜた。

 まばゆい閃光の中で、白獣は吠えるような、泣くような声をあげて崩れ落ちた。

 戦いは――終わった。

 静寂の中で、アメリアは膝をついた。

 呼吸が荒い。力を使いすぎた。
 それでも、彼女は笑った。

 「これが……わたしの、“信じたやり方”よ……」

 仮面の女が、静かに彼女の前に歩み寄った。

 「……認めるわ、聖女アメリア。あなたは、本物だった」

 そして、女は仮面を外した。

 その顔は――かつて神殿で共に学んだ、少女のものだった。

 「フィーネ……」

 「ええ。落とされた候補の一人。……でも、もう憎んでない。あなたが“ここまでしてくれた”から」

 彼女はそっとアメリアの手を握った。

 「神が何も言わなくても、あなたの祈りは届いた。だから、もう……争わない」

 夜が明けていく。

 アメリアの改革は、また一歩前へ進んだのだった。

――――――――――――――――――――

あとがき
“第二の聖女”との対話、そして白獣アルベリアとの戦い――
アメリアはついに、最も厄介な“救いようのない存在”をも“癒す”ことで乗り越えました。

この章をもって《教団編》は一区切りとなりますが、今後は「国外」「神の真実」「王家の改革」へとさらに広がっていきます。

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