偽りの聖女は婚約破棄から始まる――最強の復讐劇

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第21話『封じられた風の神殿と、再起の鐘』

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 “祈りの門”と呼ばれるようになった土地の奥に、
 風の集まる丘がある。

 そこには、古の時代に神が降りたとされる“聖風の高台”があり、
 アメリアたちはそこに、新たな祈りの場――
 **風の神殿《セラエル》**を建てようとしていた。

 だがその地には、既に刻まれていた禁忌の印があった。

◆1 風の結界と封じられた地
 神殿の建設が始まったその夜。
 ルティナが突如、風の乱れに気づく。

 「……この丘は、風が二重に回ってる。
 まるで“内側の何か”を押しとどめるように」

 実際、アメリアが聖域の中心に足を踏み入れた瞬間、
 地の底から鈍い鐘の音のような振動が響いた。

 「これは……神封印の“逆式鐘(ギャロウベル)”。
 かつて、神を地に縫い留めるために使われた術式の痕跡です」

 セフェルの声が緊張に染まる。

 この地には、かつて“神を否定するための神殿”が存在したのだ。

◆2 失われた神を封じた者たち
 碑文を解析した結果、驚くべき事実が明らかになる。

 この地は、かつて王国中央神殿から追放された叡智派教団が築いた、
 “神を葬るための遺構”だった。

 彼らは「神の不在」を証明するために、
 かつて祀られた小神を呼び寄せ、封印し、力を断ったのだ。

 つまり、ここには――
 “信仰の残骸”だけでなく、“神の亡骸”が眠っている。

 アメリアは静かに言う。

 「それでも、ここに新たな祈りの場所を築きたい。
 過去の否定の上に、“もう一度祈る”という希望を重ねるために」

 彼女のその言葉に、仲間たちは再び心をひとつにする。

◆3 祈りの再起と鐘の音
 祈りを封じた鐘――ギャロウベル。
 アメリアは、その“封印鐘”の魔力を逆流させ、祈りの起点に変換することを提案する。

 「神を封じる術式は、“神が存在する証”でもある。
 ならば、その術式を逆転させ、“人が祈った記録”として顕現させる」

 魔術陣の再構築、碑文の再編、風の流路の再設定――
 一行は三日三晩かけて地を祈りの場へと変えていく。

 そして、満月の夜。

 アメリアは、再び鐘の中心に立ち、手を広げた。

 「名もなき神よ。否、
 かつて祈られ、封じられ、それでも消えなかった“記憶の存在”よ――
 いま、ここに在るすべての祈りを重ね、
 あなたの“痕跡”を、祈りの再起として受け入れます」

 鐘が鳴った。

 それは破壊の音ではなく、祈りの鐘。

 失われていた神の“存在痕”が、風に乗って拡散された。

 風が光り、地が震え、人々の胸にあたたかな音が響いた。

◆4 それでも祈る者の地へ
 こうして、《風の神殿セラエル》の起工は完了した。

 この神殿に祀られる神は、いない。

 けれど、そこには無数の祈りと、
 失われた神の記憶と、
 それでも信じたい者たちの灯があった。

 風は、再び吹き始める。

 名を持たず、形を持たず、それでも“誰かの想い”を運び続ける祈りとして。

 夜の丘の上、アメリアはひとり、祈りの鐘を見上げていた。

 「これで……ようやく、“信じるための場所”がひとつできた」

 彼女の背に、静かに風が流れる。

 誰かのための祈りが、またひとつ、世界に増えたことを告げるように。

――――――――――――――――――――

あとがき
第21話では、“神を封じるための遺構”という禁忌の地に、新たな祈りの神殿《セラエル》を築くというアメリアの決断を描きました。
この地は、「祈りを否定された場所」でありながら、彼女の想いによって“再び祈れる地”へと変貌します。

「祈ることは、信じることの始まり」――そのテーマを貫く回となりました。

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