僕の宝具が『眼鏡』だったせいで魔界に棄てられました ~地上に戻って大人しく暮らしているつもりなのに、何故か頼られて困ります~

織侍紗(@'ω'@)ん?

文字の大きさ
14 / 49

十四話 別れ

しおりを挟む
「もうすっかり大丈夫そうだね」

 ゲイル様は私の足を見てそう呟いた。

「はい! ありがとうございます!」

「気にしないで、僕が治す魔法を使えないのが悪いんだから」

「そんなのこと無いですよ! あ、なにか食べて行きませんか? あそこに酒場があるので!」

 と、私は酒場を指さして何か食べようと促した。

「酒場?」

「お食事したり、お酒を飲んだりする所です」

 そして、色々な看板を指さしながらこう続けた。

「酒場とか治癒魔法師さんの店とか、冒険者ギルドの近くに有るらしいですよ? 後は宿屋とかもですかね。あ、宿屋ってのは泊まれる所ですね」

 酒場の中は所狭しと客でいっぱいだった。

「知ってるか? 今日掲示されたばかりのS級クエスト。あれを解決したのは一人の美女らしいぞ?」

「お前レアムランドに行ってきたんだって? いいなぁ。エルフは美女ばかりだからなぁ」

「とうとうバルザック王国が負けたらしいぞ。しかし、ここ最近のグーブンドルデはヤバいな」

 酒場は賑やかで笑い声や話し声がそれぞれの席で繰り広げられている。私たちは一番奥のカウンターが空いていたので、そこに座った。

「賑わってますね……」

 私の呟きにカウンターの向こうからマスターが答えてくれた。

「お陰様でね! でも本当に忙しい! 住み込みで誰か雇いたいくらいだよ!」

「とりあえず私が頼みますね?」

「うん、お願い」

 ゲイル様は字が読めないので、私が壁に書かれたメニューから適当に見繕って、食べ物やお酒を注文する。
 そして、簡単なツマミとともに目の前にワインが置かれ、ゲイル様はそれをグラスに注いで私に出してくれた。

「はい、どうぞ」

「え、わ、私は……」

 私はお酒を飲んだことなんてない。元々、ゲイル様用に頼んだ物だった。

「いらないの?」

 うぐ……ゲイル様のお気持ちを無下にすることなんか出来ない……

「いや、戴きます」

 私は覚悟を決めて、ゲイル様が差し出してくれたワインを一口飲んだのだった。

「あ、あれ? ここは……?」

 気が付くと、私は酒場のカウンターに突っ伏していた。

「起きたかい!」

 声の主はさっきのマスター。私は咄嗟に謝罪の言葉を述べた

「あ、すいません……寝てしまって……」

「いいよいいよ」

 ふと気づくと私は一人だった。隣に座っているはずのゲイル様がいない。

「あれ? ゲイル様は?」

「ああ、あんちゃんはアンタのことを頼むって言って出ていっちゃったよ」

「えええ!」

 私がその言葉に驚きの声をあげると、マスターはしんみりと話し始める。

「話は聞いたよ。お前さん、前の主人に捨てられて行くところが無いんだって? もし良かったらここで働いてくれないかね? 部屋は空いてるからさ」

「ゲイル様は何処へ!」

 私は勢い良く立ち上がってマスターにそう尋ねると、少し困った表情になってマスターはこう答えた。

「さ、さあ? お代だけ払って行っちゃったから」

 そしてこう言葉を続ける。

「元々、街道に一人は嫌だから、街に連れてってくれないか? って頼まれたって聞いたけど……」

「あ……そういうことか……」

 そこで私は気がついた。
 私はずっと・・・連れて行ってくれませんか? と聞いたつもりだったけど、ゲイル様は街まで・・・連れて行ってくれませんか? って捉えちゃったのか……
 でも、それにしては親切にしてくれたな……
 わざわざ私の足まで治してくれたし、こうやって私の心配までしてくれた。
 それに……

「しょうがないか……私が居てもゲイル様のお荷物になるだけだし……」

 そもそもゲイル様は普通の人と違いすぎる。多分名を馳せていく人だと思う。そんな方と一緒に旅なんか出来るはずがないか。
 そう思った私はマスターにこう答えた。

「分かりました! ここで働かせて下さい!」

「ありがとね! 部屋はそこの階段を登って一番奥の右側を使っていいから!」

 マスターは階段を指さしてそう私に告げた。

「こちらこそありがとうございます!」

 そして私はゲイル様に治して頂いた足で階段を一段ずつ登って行ったのだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

転生したら鎧だった〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します

三門鉄狼
ファンタジー
目覚めると、リビングアーマーだった。 身体は鎧、中身はなし。しかもレベルは1で超弱い。 そんな状態でダンジョンに迷い込んでしまったから、なんとか生き残らないと! これは、いつか英雄になるかもしれない、さまよう鎧の冒険譚。 ※小説家になろう、カクヨム、待ラノ、ノベルアップ+、NOVEL DAYS、ラノベストリート、アルファポリス、ノベリズムで掲載しています。

【土壌改良】で死の荒野がSランク農園に!食べただけでレベルアップする野菜で、世界最強ギルド設立

黒崎隼人
ファンタジー
「え? これ、ただのトマトですよ?」 「いいえ、それは食べただけで魔力が全回復する『神の果実』です!」 ブラック企業で働き詰めだった青年は、異世界の名門貴族の三男・ノアとして転生する。 しかし、授かったスキルは【土壌改良】という地味なもの。 「攻撃魔法も使えない役立たず」と罵られ、魔物すら寄り付かない死の荒野へ追放されてしまう。 だが、彼らは知らなかった。 ノアのスキルは、現代の農業知識と合わせることで、荒れ果てた土地を「Sランク食材」が溢れる楽園に変えるチート能力だったことを! 伝説の魔獣(もふもふ)をキュウリ一本で手懐け、行き倒れた天才エルフを極上スープで救い出し、気づけば荒野には巨大な「農業ギルド」が誕生していた。 これは、本人がただ美味しい野菜を作ってのんびり暮らしたいだけなのに、周囲からは「世界を救う大賢者」と崇められてしまう、無自覚・最強の農業ファンタジー!

処理中です...