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十四話 別れ
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「もうすっかり大丈夫そうだね」
ゲイル様は私の足を見てそう呟いた。
「はい! ありがとうございます!」
「気にしないで、僕が治す魔法を使えないのが悪いんだから」
「そんなのこと無いですよ! あ、なにか食べて行きませんか? あそこに酒場があるので!」
と、私は酒場を指さして何か食べようと促した。
「酒場?」
「お食事したり、お酒を飲んだりする所です」
そして、色々な看板を指さしながらこう続けた。
「酒場とか治癒魔法師さんの店とか、冒険者ギルドの近くに有るらしいですよ? 後は宿屋とかもですかね。あ、宿屋ってのは泊まれる所ですね」
酒場の中は所狭しと客でいっぱいだった。
「知ってるか? 今日掲示されたばかりのS級クエスト。あれを解決したのは一人の美女らしいぞ?」
「お前レアムランドに行ってきたんだって? いいなぁ。エルフは美女ばかりだからなぁ」
「とうとうバルザック王国が負けたらしいぞ。しかし、ここ最近のグーブンドルデはヤバいな」
酒場は賑やかで笑い声や話し声がそれぞれの席で繰り広げられている。私たちは一番奥のカウンターが空いていたので、そこに座った。
「賑わってますね……」
私の呟きにカウンターの向こうからマスターが答えてくれた。
「お陰様でね! でも本当に忙しい! 住み込みで誰か雇いたいくらいだよ!」
「とりあえず私が頼みますね?」
「うん、お願い」
ゲイル様は字が読めないので、私が壁に書かれたメニューから適当に見繕って、食べ物やお酒を注文する。
そして、簡単なツマミとともに目の前にワインが置かれ、ゲイル様はそれをグラスに注いで私に出してくれた。
「はい、どうぞ」
「え、わ、私は……」
私はお酒を飲んだことなんてない。元々、ゲイル様用に頼んだ物だった。
「いらないの?」
うぐ……ゲイル様のお気持ちを無下にすることなんか出来ない……
「いや、戴きます」
私は覚悟を決めて、ゲイル様が差し出してくれたワインを一口飲んだのだった。
「あ、あれ? ここは……?」
気が付くと、私は酒場のカウンターに突っ伏していた。
「起きたかい!」
声の主はさっきのマスター。私は咄嗟に謝罪の言葉を述べた
「あ、すいません……寝てしまって……」
「いいよいいよ」
ふと気づくと私は一人だった。隣に座っているはずのゲイル様がいない。
「あれ? ゲイル様は?」
「ああ、あんちゃんはアンタのことを頼むって言って出ていっちゃったよ」
「えええ!」
私がその言葉に驚きの声をあげると、マスターはしんみりと話し始める。
「話は聞いたよ。お前さん、前の主人に捨てられて行くところが無いんだって? もし良かったらここで働いてくれないかね? 部屋は空いてるからさ」
「ゲイル様は何処へ!」
私は勢い良く立ち上がってマスターにそう尋ねると、少し困った表情になってマスターはこう答えた。
「さ、さあ? お代だけ払って行っちゃったから」
そしてこう言葉を続ける。
「元々、街道に一人は嫌だから、街に連れてってくれないか? って頼まれたって聞いたけど……」
「あ……そういうことか……」
そこで私は気がついた。
私はずっと連れて行ってくれませんか? と聞いたつもりだったけど、ゲイル様は街まで連れて行ってくれませんか? って捉えちゃったのか……
でも、それにしては親切にしてくれたな……
わざわざ私の足まで治してくれたし、こうやって私の心配までしてくれた。
それに……
「しょうがないか……私が居てもゲイル様のお荷物になるだけだし……」
そもそもゲイル様は普通の人と違いすぎる。多分名を馳せていく人だと思う。そんな方と一緒に旅なんか出来るはずがないか。
そう思った私はマスターにこう答えた。
「分かりました! ここで働かせて下さい!」
「ありがとね! 部屋はそこの階段を登って一番奥の右側を使っていいから!」
マスターは階段を指さしてそう私に告げた。
「こちらこそありがとうございます!」
そして私はゲイル様に治して頂いた足で階段を一段ずつ登って行ったのだった。
ゲイル様は私の足を見てそう呟いた。
「はい! ありがとうございます!」
「気にしないで、僕が治す魔法を使えないのが悪いんだから」
「そんなのこと無いですよ! あ、なにか食べて行きませんか? あそこに酒場があるので!」
と、私は酒場を指さして何か食べようと促した。
「酒場?」
「お食事したり、お酒を飲んだりする所です」
そして、色々な看板を指さしながらこう続けた。
「酒場とか治癒魔法師さんの店とか、冒険者ギルドの近くに有るらしいですよ? 後は宿屋とかもですかね。あ、宿屋ってのは泊まれる所ですね」
酒場の中は所狭しと客でいっぱいだった。
「知ってるか? 今日掲示されたばかりのS級クエスト。あれを解決したのは一人の美女らしいぞ?」
「お前レアムランドに行ってきたんだって? いいなぁ。エルフは美女ばかりだからなぁ」
「とうとうバルザック王国が負けたらしいぞ。しかし、ここ最近のグーブンドルデはヤバいな」
酒場は賑やかで笑い声や話し声がそれぞれの席で繰り広げられている。私たちは一番奥のカウンターが空いていたので、そこに座った。
「賑わってますね……」
私の呟きにカウンターの向こうからマスターが答えてくれた。
「お陰様でね! でも本当に忙しい! 住み込みで誰か雇いたいくらいだよ!」
「とりあえず私が頼みますね?」
「うん、お願い」
ゲイル様は字が読めないので、私が壁に書かれたメニューから適当に見繕って、食べ物やお酒を注文する。
そして、簡単なツマミとともに目の前にワインが置かれ、ゲイル様はそれをグラスに注いで私に出してくれた。
「はい、どうぞ」
「え、わ、私は……」
私はお酒を飲んだことなんてない。元々、ゲイル様用に頼んだ物だった。
「いらないの?」
うぐ……ゲイル様のお気持ちを無下にすることなんか出来ない……
「いや、戴きます」
私は覚悟を決めて、ゲイル様が差し出してくれたワインを一口飲んだのだった。
「あ、あれ? ここは……?」
気が付くと、私は酒場のカウンターに突っ伏していた。
「起きたかい!」
声の主はさっきのマスター。私は咄嗟に謝罪の言葉を述べた
「あ、すいません……寝てしまって……」
「いいよいいよ」
ふと気づくと私は一人だった。隣に座っているはずのゲイル様がいない。
「あれ? ゲイル様は?」
「ああ、あんちゃんはアンタのことを頼むって言って出ていっちゃったよ」
「えええ!」
私がその言葉に驚きの声をあげると、マスターはしんみりと話し始める。
「話は聞いたよ。お前さん、前の主人に捨てられて行くところが無いんだって? もし良かったらここで働いてくれないかね? 部屋は空いてるからさ」
「ゲイル様は何処へ!」
私は勢い良く立ち上がってマスターにそう尋ねると、少し困った表情になってマスターはこう答えた。
「さ、さあ? お代だけ払って行っちゃったから」
そしてこう言葉を続ける。
「元々、街道に一人は嫌だから、街に連れてってくれないか? って頼まれたって聞いたけど……」
「あ……そういうことか……」
そこで私は気がついた。
私はずっと連れて行ってくれませんか? と聞いたつもりだったけど、ゲイル様は街まで連れて行ってくれませんか? って捉えちゃったのか……
でも、それにしては親切にしてくれたな……
わざわざ私の足まで治してくれたし、こうやって私の心配までしてくれた。
それに……
「しょうがないか……私が居てもゲイル様のお荷物になるだけだし……」
そもそもゲイル様は普通の人と違いすぎる。多分名を馳せていく人だと思う。そんな方と一緒に旅なんか出来るはずがないか。
そう思った私はマスターにこう答えた。
「分かりました! ここで働かせて下さい!」
「ありがとね! 部屋はそこの階段を登って一番奥の右側を使っていいから!」
マスターは階段を指さしてそう私に告げた。
「こちらこそありがとうございます!」
そして私はゲイル様に治して頂いた足で階段を一段ずつ登って行ったのだった。
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