僕の宝具が『眼鏡』だったせいで魔界に棄てられました ~地上に戻って大人しく暮らしているつもりなのに、何故か頼られて困ります~

織侍紗(@'ω'@)ん?

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三十話 白き龍

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「もうすぐ山頂ですね! 私、ちょっと見てきます!」

 山頂が近づきジュデッカはゲイルにそう告げて駆け出した。すると山頂が見えた瞬間、力なくしゃがみこんでしまった。

「あわわわわわわわわ」

「どうしたの?」

「りゅ、龍が! 龍が!」

 腰が抜けた状態で、ジュデッカは慌てふためきながら目の前を指さしていた。

「え? 龍?」

 ジュデッカの指し示す方をゲイルが見ると、そこには淡い輝きを放つ白く気高さを持った大きな龍がじっとこちらを見ていた。

「お主らだな? 我が主の言っていた者は……我はエイシャントドラグーンのバーソロミューだ……」

 低く、そして威厳のある声でその龍はそう語った。ジュデッカは恐怖で可哀想なくらいガクガクブルブルと震えている。そして、ゲイルは……

「何やってんの? ミュー」

 あっけらかんとした表情で、その龍にそう尋ねた。するとゲイルの言葉に威厳を崩さずにこう返してくる。

「我はミューではない。バーソロミューだ」

「え、だって」

「ミューではない。バーソロミューだ」

「え、だって」

「ゲイルよ……察してくれ……」

 先程より少し弱気な様子でその龍はゲイルに察するようにねだった。見方変えればもう少しで泣き出しそうな様子であった。

「あ……そ、そうだね。バーソロミューだね。久しぶりだね」

「え、ゲイルさん、知ってるんですか?」

「うん。前に会ったことあるから」

 さすがに察したゲイルはミューに話を合わせようと、棒読みでそう答えた。演技が下手なことが丸わかりである。しかし、恐怖と安堵で混乱しているジュデッカにはそれでも充分であった。

「我はここでお前たちを待つように、主から命じられておる」

「え? どういうことですか?」

「我が主、ミューは我を喚び出しお主たちを導くように命じた。我が背に乗るがいい。目的地まで飛んで行ってやろう」

「ほ、本当ですか? あ、でも……」

「何か不満か?」

「ミューさんは?」

 この場にいないミューのことを心配したジュデッカであったが、当の本人はその事態を想定していなかったようで少し焦りの色を見せながらこう答えた。

「あ……わ、我が主は先に行っておる。超一流の冒険者だ。案内など無くても何処にでも辿り着けると言っておったわ」

「なら大丈夫ですね……」

「ゲイルよ。お主もなぜそんなに不安そうな表情なのだ?」

 安心した様子のジュデッカに対して、ゲイルは未だに不安そうにしている。そこでミューがゲイルに尋ねたのであったが……

「いや、高いところ苦手だなって」

「はぁ? そもそもゲイルはもっと高い……あ、いや何でもない」

 予想だにしなかった言葉にミューはつい突っ込みを入れそうになってしまう。
 ミューはゲイルに、自分が飛べる数十倍は高い魔界の谷へヒョイヒョイとフェイレイに投げ落とされてたじゃないか? 何を今更言っているんだ? と言いかけて止めた。この姿でゲイルと会話したらボロが出て威厳もへったくれもあったもんじゃなくなってしまう、と思っての事だった。

「いいから乗れ。時間も無いのだろう」

「あ! そうでした! それでは失礼します」

 乗りやすいようにミューは腹這いになり、その背に二人が乗った時であった。何か思いついたかのように、ゲイルがこう口にした。

「ねぇ、バーソロミュー。長いからミューでいい?」

「え、でも、そうやって呼んでたらミューさんと会った時に混乱しません?」

「大丈夫だよ。それは無いから」

「どういうことです?」

「まあまあ、気にしないで。で、いいよね?」

 もうこうなるとゲイルのペースである。それを知っているミューは半ば諦め気味に言葉を吐き捨てた。

「もう勝手にして!」

「で、ジュデッカ。どっちに行けばいいの?」

「北です。北の果まで!」

「よし! じゃあミュー! お願いね!」

 ゲイルが合図をすると、ミューは二人を背に乗せたまま大空へと舞い上がったのだった。
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