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四十八話 決意
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『ジャガールの気配が消えた……だと? 何が起きた? あの巨大な竜巻は何なんだ?』
神は明らかに動揺しているように見えた。手に持った杖はぎゅっと握られて小刻みに震えている。
「え? アレは神様の仕業じゃないの? 地上にはあんな魔法を使える人もいるんだ。宝具も使えなくなったこの状況で。そりゃ、クロウリーも僕の力の無さを嘆く訳だ」
そんな神の様子を見たゲイルはそう嘆いた。その魔法の主がクロウリーだと知らないからこそ出た言葉である。そもそもクロウリーがまさか地上に戻ってきているなど考えもしないゲイルには、仕方がないことであった。
『ええい! 穢れしモノ共が我の想定を超えただと? いや、ジャガールが死んだからといって我の計画は微塵も揺るがん。静寂の時をもたらすのは我一人で充分。ジャガールはその程度だった、というだけのこと。あいつも所詮、我の駒の一つに過ぎん』
そこまで語ると、神は杖でゲイルとまだ穴の中で気を失っているレイラを、次々と指し示した。
『まずはお前とそこにいる女を消すことにしよう』
「あ、レイラ! レイラが危ない!」
ゲイルは一瞬だけレイラへと視線送ると、身構えると同時に何かを決意したかのような表情で神を睨んだ。
「マナもチャクラも見えないこんな状況だけど……僕に出来ることはやって見せる! もうあんな思いはしたくない! させたくない! 絶対にお前を止めてみせる!」
『無駄なことを……主と従の絶対的な差を思い知らせてやろう!』
────────── 一方そのころ ──────────
ファーガソンは遥か彼方に出来た巨大な竜巻、それが消え去るのを確認すると、アリスにこう告げたのだった。
「あの巨大な竜巻は恐らくクロウリー様の仕業だよ。あ、クロウリー様ってのは僕を助けてくれたエルフの方ね。もう一人のドワーフはフェイレイ様って言うんだ」
「あの竜巻が? あんなの人間業じゃないじゃない!」
「そうだよ。人間じゃないよ。エルフだよ」
あっさりと答えるファーガソンに、アリスは勢いを削がれてしまった。
「そういう事じゃなくて……」
「あはは、冗談だよ。でもアリスの言いたいことは分かるよ。あの二人は非常識すぎる」
ファーガソンは笑いながらそう答えた。少し諦めたような雰囲気が滲み出ていた。
「でも、あれだけの方なら、きっとこの状況を変えられるはず……穢れしモノを粛清するといったこの状況を」
そう呟くアリスに対して、ファーガソンは首を少しだけかしげた。
「うーん。どうだろ。久々の地上だし、旧友に会いに行くって言ってどっかに行っちゃったけど、天を暗雲が覆う状況を見ても何も言わなかったし、興味が無さそうだったよ」
「そんな……」
「でも、大丈夫。ゲイル兄が近くにいるんでしょ? 傭兵に志願してきたって」
「そうかもしれないけど、宝具も使えないこの状況でゲイル兄がどうにか出来るとは……」
アリスの呟きを聞いていたファーガソンは、その言葉に対して首横に振った。
「というか、逆に宝具が使えない状況をゲイル兄には好都合だと言ってたよ。クロウリー様もフェイレイ様も」
「どういうこと?」
「んーと、僕だって宝具を使わないで魔法を使えはするけど、実際には宝具を使えた方が強い魔法を使える。それは良いよね?」
「え、ええ」
「でもゲイル兄はそうじゃないみたい。なまじ見えるから無意識で力をセーブしちゃうんだ、って二人とも言ってた」
そこまで語ると、ファーガソンはアリスにウインクをしてこう続けたのであった。
「つまりね。こういう事。ゲイル兄は宝具を使わない方が強いってね。だから安心してよ」
と。
神は明らかに動揺しているように見えた。手に持った杖はぎゅっと握られて小刻みに震えている。
「え? アレは神様の仕業じゃないの? 地上にはあんな魔法を使える人もいるんだ。宝具も使えなくなったこの状況で。そりゃ、クロウリーも僕の力の無さを嘆く訳だ」
そんな神の様子を見たゲイルはそう嘆いた。その魔法の主がクロウリーだと知らないからこそ出た言葉である。そもそもクロウリーがまさか地上に戻ってきているなど考えもしないゲイルには、仕方がないことであった。
『ええい! 穢れしモノ共が我の想定を超えただと? いや、ジャガールが死んだからといって我の計画は微塵も揺るがん。静寂の時をもたらすのは我一人で充分。ジャガールはその程度だった、というだけのこと。あいつも所詮、我の駒の一つに過ぎん』
そこまで語ると、神は杖でゲイルとまだ穴の中で気を失っているレイラを、次々と指し示した。
『まずはお前とそこにいる女を消すことにしよう』
「あ、レイラ! レイラが危ない!」
ゲイルは一瞬だけレイラへと視線送ると、身構えると同時に何かを決意したかのような表情で神を睨んだ。
「マナもチャクラも見えないこんな状況だけど……僕に出来ることはやって見せる! もうあんな思いはしたくない! させたくない! 絶対にお前を止めてみせる!」
『無駄なことを……主と従の絶対的な差を思い知らせてやろう!』
────────── 一方そのころ ──────────
ファーガソンは遥か彼方に出来た巨大な竜巻、それが消え去るのを確認すると、アリスにこう告げたのだった。
「あの巨大な竜巻は恐らくクロウリー様の仕業だよ。あ、クロウリー様ってのは僕を助けてくれたエルフの方ね。もう一人のドワーフはフェイレイ様って言うんだ」
「あの竜巻が? あんなの人間業じゃないじゃない!」
「そうだよ。人間じゃないよ。エルフだよ」
あっさりと答えるファーガソンに、アリスは勢いを削がれてしまった。
「そういう事じゃなくて……」
「あはは、冗談だよ。でもアリスの言いたいことは分かるよ。あの二人は非常識すぎる」
ファーガソンは笑いながらそう答えた。少し諦めたような雰囲気が滲み出ていた。
「でも、あれだけの方なら、きっとこの状況を変えられるはず……穢れしモノを粛清するといったこの状況を」
そう呟くアリスに対して、ファーガソンは首を少しだけかしげた。
「うーん。どうだろ。久々の地上だし、旧友に会いに行くって言ってどっかに行っちゃったけど、天を暗雲が覆う状況を見ても何も言わなかったし、興味が無さそうだったよ」
「そんな……」
「でも、大丈夫。ゲイル兄が近くにいるんでしょ? 傭兵に志願してきたって」
「そうかもしれないけど、宝具も使えないこの状況でゲイル兄がどうにか出来るとは……」
アリスの呟きを聞いていたファーガソンは、その言葉に対して首横に振った。
「というか、逆に宝具が使えない状況をゲイル兄には好都合だと言ってたよ。クロウリー様もフェイレイ様も」
「どういうこと?」
「んーと、僕だって宝具を使わないで魔法を使えはするけど、実際には宝具を使えた方が強い魔法を使える。それは良いよね?」
「え、ええ」
「でもゲイル兄はそうじゃないみたい。なまじ見えるから無意識で力をセーブしちゃうんだ、って二人とも言ってた」
そこまで語ると、ファーガソンはアリスにウインクをしてこう続けたのであった。
「つまりね。こういう事。ゲイル兄は宝具を使わない方が強いってね。だから安心してよ」
と。
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