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最終話 旅の続き
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『光あれ』
神は杖の先端でゲイルを指し示すと同時にそう言葉を放つ。すると光線が赤い輝きながら、ゲイルへと一直線に放たれた。瞬きすらする間もなく迫った光線をゲイルはすんでのところで躱す。
ゲイルが振り返ると、遥か彼方までその光線が通った後には何も無くなっているのが確認出来た。
「あ、危な……当たったらひとたまりもないかも……」
その威力を目の当たりにしたゲイルは冷や汗をかいた。が、神は余裕のある態度を崩すことスらなく、ただ淡々と次の光線を解き放つ。
『ふむ。避けたか……無駄なことを。再び光あれ』
しかし今度もゲイルはすんでのところで躱したのだった。
「背筋が凍るよ。マナも見えない状況じゃ、魔法を掻き消すことも出来ないし」
マナが見えない状況に焦りの色を見せるゲイル。だが、そんなことは神のとってどうでもいいのか、ゲイルの言葉に興味を示すことなどなかった。
『またか……どうせ避けたところでお前を含めて穢れしモノ共は全て消え去る。それが早いか遅いかだけのこと』
「そんなことは絶対にさせない!」
『やはり、穢れしモノは穢れしモノか……光あれ』
三度放った神の光はゲイルを消し去ることは出来なかった。すると、神はとある事実に気づく。
『なかなか当たらんな。すばしっこいヤツだ。ん? 待てよ? そもそも、何故避けられるんだ? そうか……動きを読まれてるのか』
そして今度は杖を構えることなく、言葉放つことも無く光線を解き放った。が、やはりゲイルはすんでのところで難を逃れた。
「危な! 杖も言葉もなしで撃てたんだ! ビックリしたー」
『な、なに? 動きを読んでるのではないのか?』
「動きを読むも何も、チャクラが見えないから動きは読めないよ。集中して光が放たれたら避けてるだけだけだよ」
ゲイルのありえない言葉に神の思考が一瞬止まってしまう。
『……は? お前は自分が何を言っているか、理解しているのか?』
「理解も何も、ただやってるだけだよ!」
『馬鹿なことを……この世に光より速い物など存在しない。お前はその光を見てから避けてると妄言を吐いているのだぞ?』
「妄言も何も本当のことを言っただけだよ! それに、その魔法よりもフェイレイの方が数段速いよ」
ゲイルの言葉に神は静かに笑いだした。何せこの世で一番速いはずの光より速いモノがいると、ゲイルが言っているのだから無理もないことであった。
『ふ、ふははは……この期に及んで未だに妄言を放つか。穢れしモノにしては中々面白いな。だが、これならどうだ? オリハルコンすら軽々と砕く、この突きならな!』
そして神の姿がユラりとぼやける。次の瞬間、ゲイルの背後に現れた神は杖を勢い良く突き出した。
しかし、ゲイルは宙をひらりと舞ってその杖を躱した。
『だから何故避けられる! 我は空間を渡ったのだぞ?』
「それは確かにフェイレイよりも一瞬だけ速くはなるよ。けど、クロウリーが良く使ってるからね。何度も見てるから知ってるよ」
『ふ、ふははは! ま、また妄言を吐くか! わ、我以外に空間を渡れるモノなどおらぬわ!』
今度は大きく笑った。神は目の前で起きている事象に対して、焦りの色が見えているのは明らかだった。妄言とは強がっていたものの、実際に躱されているのだから。
その神に対して、ゲイルの様子は全く変わることは無かった。
「って言っても実際そうなんだけど……」
『な……何者なんだ? こいつは! ク……! そ、そうだ! まずはアイツから消してしまえば!』
飛び上がった神はまだ穴の中で気を失っているレイラへと舞い降りる。ゲイルはレイラを庇おうと、レイラの元へと駆けた。
「レ、レイラ!」
『ふはははは! かかったな! 庇うと思ったぞ! 死ね!』
神は掛け声と共に杖を突く。その杖は大きな音共にゲイルを貫く……ことは出来ず、重ねた両腕でピタリと止められてしまう。
『だ、だから何故止められる! オリハルコンですら砕く威力だぞ!』
「オリハルコンだかなんだか知らないけど、こんなんじゃ岩のひとつも砕けやしないよ!」
『クソッ! これなら!』
「えい!」
着地した神は同時にゲイルに向かって杖を投げ放った。が、やはりその杖をゲイルは難なく受け流してしまう。
『ひ……光の速さで放った我の杖を……な、流しただと? ば、化け物め……』
「化け物なんかじゃないよ! 僕なんか弱っちいただの人間だよ!」
『そんな訳あるまい……だが、しかし!』
そう神が叫ぶと同時にゲイルが伏せた。すると光の速さで投げられた杖がゲイルの頭上を掠める。そして逆に不意を突かれた神は、その戻ってきた杖に直撃をしてしまい、吹っ飛んでしまった。
『ぶべら! グボッ! な、なぜ避ける! し、死角だったはず……』
「別に見えなくても動いてるからね。空気の動きを感じてれば戻ってきてるのはわかるよ。フェイレイが教えてくれた技だよ」
『ま、まずい……一旦退かなくては……』
這いつくばりながらも逃げようとする神の前に、今度はゲイルが立ちはだかった。
「だめー」
『ひ、ひいい! や、止めろ! 止めてくれ!』
「じゃあ、もうこんなことしないって約束出来る?」
『も、もちろんだ! お、恐ろしくて、地上に関わる気なんかないわ!』
「へぇー。いいんだ? そんな風に言って……」
ゲイルは少しいたずらっぽくそう呟いた。それは神にとってより堪えたようだった。
『ひ、ぃぃ! 違います! 関わることはもう致しません! や、約束です! 約束させて下さい!』
土下座までする神。最初の威厳などもう何処にも無かった。
「じゃあ、いいよ! 約束破ったらダメだからね! じゃあ行っていいよ!」
『あ、ありがとうございます』
そして神は土下座した姿のまま、すぅっと消え去って行ったのだった。
────────── 数年後 ──────────
「ゲイル! 今度こそ逃がさないぞ!」
そう叫びながらミューは宿の扉を勢い良く開け放った。一身に注目を集める。が、そこにはゲイルの姿は無かった。
「ってあれ? ゲイルは?」
「また貴方ですか、ミューさん」
ゲイルの代わりに居たのは一人の青年だった。その青年を見て、ミューはビシっと指をさした。
「お前はファーガソン! ってことは……」
「ええ、今回も一足違いだったようです。ついさっき宿を後にしたとのこと」
ファーガソンはそう言いながら肩を竦めた。
「チッ! 今度こそって思ったのに!」
「それはこっちのセリフですよ。ミューさん。ゲイル兄は我が国で宰相としてお迎えするのです。魔界に連れてくなんて諦めてください」
「いーや! 俺が魔界に連れて帰るのが先だね! 今回はグランドラグーン様にちゃーんと言われてるんだから! 譲れないよ!」
「まずは先に見つけてみせます!」
「それはこっちのセリフだ!」
鼻が触れ合うほどの距離で一頻り睨み合った二人は、我先にと宿を飛び出して行った。
その様子を宿の屋根から眺めている二人の人影があった。
「良いんですか?」
「うん。さいしょー? ってのもなんか堅苦しそうだし、魔界に帰るのもまだ……ね……じゃ、行こっか? 旅の続きに」
そして宿から飛び降りたその人影は、ミューたちが駆けて行った反対へと歩き出したのだった。
─────────── あとがき ───────────
これで完結とさせて頂きます。お読み頂いてありがとうございました。
この場を借りて宣伝ですが、今朝より
「賢者の幼馴染との中を引き裂かれた無職の少年、真の力をひた隠し、スローライフ? を楽しみます!」
という作品を投稿しております。
これは以前連載していた(途中までで諸事情により掲載削除した作品)のリメイク作品です。宜しければお気に入り等頂けるとありがたいです。
毎日投稿を目指しておりますので、応援宜しくお願い致します。
神は杖の先端でゲイルを指し示すと同時にそう言葉を放つ。すると光線が赤い輝きながら、ゲイルへと一直線に放たれた。瞬きすらする間もなく迫った光線をゲイルはすんでのところで躱す。
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「あ、危な……当たったらひとたまりもないかも……」
その威力を目の当たりにしたゲイルは冷や汗をかいた。が、神は余裕のある態度を崩すことスらなく、ただ淡々と次の光線を解き放つ。
『ふむ。避けたか……無駄なことを。再び光あれ』
しかし今度もゲイルはすんでのところで躱したのだった。
「背筋が凍るよ。マナも見えない状況じゃ、魔法を掻き消すことも出来ないし」
マナが見えない状況に焦りの色を見せるゲイル。だが、そんなことは神のとってどうでもいいのか、ゲイルの言葉に興味を示すことなどなかった。
『またか……どうせ避けたところでお前を含めて穢れしモノ共は全て消え去る。それが早いか遅いかだけのこと』
「そんなことは絶対にさせない!」
『やはり、穢れしモノは穢れしモノか……光あれ』
三度放った神の光はゲイルを消し去ることは出来なかった。すると、神はとある事実に気づく。
『なかなか当たらんな。すばしっこいヤツだ。ん? 待てよ? そもそも、何故避けられるんだ? そうか……動きを読まれてるのか』
そして今度は杖を構えることなく、言葉放つことも無く光線を解き放った。が、やはりゲイルはすんでのところで難を逃れた。
「危な! 杖も言葉もなしで撃てたんだ! ビックリしたー」
『な、なに? 動きを読んでるのではないのか?』
「動きを読むも何も、チャクラが見えないから動きは読めないよ。集中して光が放たれたら避けてるだけだけだよ」
ゲイルのありえない言葉に神の思考が一瞬止まってしまう。
『……は? お前は自分が何を言っているか、理解しているのか?』
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そして神の姿がユラりとぼやける。次の瞬間、ゲイルの背後に現れた神は杖を勢い良く突き出した。
しかし、ゲイルは宙をひらりと舞ってその杖を躱した。
『だから何故避けられる! 我は空間を渡ったのだぞ?』
「それは確かにフェイレイよりも一瞬だけ速くはなるよ。けど、クロウリーが良く使ってるからね。何度も見てるから知ってるよ」
『ふ、ふははは! ま、また妄言を吐くか! わ、我以外に空間を渡れるモノなどおらぬわ!』
今度は大きく笑った。神は目の前で起きている事象に対して、焦りの色が見えているのは明らかだった。妄言とは強がっていたものの、実際に躱されているのだから。
その神に対して、ゲイルの様子は全く変わることは無かった。
「って言っても実際そうなんだけど……」
『な……何者なんだ? こいつは! ク……! そ、そうだ! まずはアイツから消してしまえば!』
飛び上がった神はまだ穴の中で気を失っているレイラへと舞い降りる。ゲイルはレイラを庇おうと、レイラの元へと駆けた。
「レ、レイラ!」
『ふはははは! かかったな! 庇うと思ったぞ! 死ね!』
神は掛け声と共に杖を突く。その杖は大きな音共にゲイルを貫く……ことは出来ず、重ねた両腕でピタリと止められてしまう。
『だ、だから何故止められる! オリハルコンですら砕く威力だぞ!』
「オリハルコンだかなんだか知らないけど、こんなんじゃ岩のひとつも砕けやしないよ!」
『クソッ! これなら!』
「えい!」
着地した神は同時にゲイルに向かって杖を投げ放った。が、やはりその杖をゲイルは難なく受け流してしまう。
『ひ……光の速さで放った我の杖を……な、流しただと? ば、化け物め……』
「化け物なんかじゃないよ! 僕なんか弱っちいただの人間だよ!」
『そんな訳あるまい……だが、しかし!』
そう神が叫ぶと同時にゲイルが伏せた。すると光の速さで投げられた杖がゲイルの頭上を掠める。そして逆に不意を突かれた神は、その戻ってきた杖に直撃をしてしまい、吹っ飛んでしまった。
『ぶべら! グボッ! な、なぜ避ける! し、死角だったはず……』
「別に見えなくても動いてるからね。空気の動きを感じてれば戻ってきてるのはわかるよ。フェイレイが教えてくれた技だよ」
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這いつくばりながらも逃げようとする神の前に、今度はゲイルが立ちはだかった。
「だめー」
『ひ、ひいい! や、止めろ! 止めてくれ!』
「じゃあ、もうこんなことしないって約束出来る?」
『も、もちろんだ! お、恐ろしくて、地上に関わる気なんかないわ!』
「へぇー。いいんだ? そんな風に言って……」
ゲイルは少しいたずらっぽくそう呟いた。それは神にとってより堪えたようだった。
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『あ、ありがとうございます』
そして神は土下座した姿のまま、すぅっと消え去って行ったのだった。
────────── 数年後 ──────────
「ゲイル! 今度こそ逃がさないぞ!」
そう叫びながらミューは宿の扉を勢い良く開け放った。一身に注目を集める。が、そこにはゲイルの姿は無かった。
「ってあれ? ゲイルは?」
「また貴方ですか、ミューさん」
ゲイルの代わりに居たのは一人の青年だった。その青年を見て、ミューはビシっと指をさした。
「お前はファーガソン! ってことは……」
「ええ、今回も一足違いだったようです。ついさっき宿を後にしたとのこと」
ファーガソンはそう言いながら肩を竦めた。
「チッ! 今度こそって思ったのに!」
「それはこっちのセリフですよ。ミューさん。ゲイル兄は我が国で宰相としてお迎えするのです。魔界に連れてくなんて諦めてください」
「いーや! 俺が魔界に連れて帰るのが先だね! 今回はグランドラグーン様にちゃーんと言われてるんだから! 譲れないよ!」
「まずは先に見つけてみせます!」
「それはこっちのセリフだ!」
鼻が触れ合うほどの距離で一頻り睨み合った二人は、我先にと宿を飛び出して行った。
その様子を宿の屋根から眺めている二人の人影があった。
「良いんですか?」
「うん。さいしょー? ってのもなんか堅苦しそうだし、魔界に帰るのもまだ……ね……じゃ、行こっか? 旅の続きに」
そして宿から飛び降りたその人影は、ミューたちが駆けて行った反対へと歩き出したのだった。
─────────── あとがき ───────────
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みんなの感想(4件)
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面白いので登録させてもらいました。
知らぬ間に母国を潰す(敗戦国)にしてそうですね。
それに家系から消された王子ですから他国に取り立てられても文句でませんし。
後、兄として乳幼児は戦犯に含める気はないでしょうが、ある一定の年齢で真面な思考の兄弟以外は戦勝国任せかな。
それよか、ミューは追い行けるのであろうか?
ついでに人化できないとまずいような。
感想ありがとうございます! こういうの隠しておける人間じゃないのでごめんなさい! 当然国は潰します! が結構先です。あと、ミューは追いつきます。というかニアミスですが追いついてます。一応ミューの影? ニアミスっぽいところ? というか、そこのところは書いてはいます! 合流は先かも? でもわかりません! プロットも何も無いので! ごめんなさい!
偶然見つけちゃた作品お気に入り登録( 。・ω・。)ノ 凸ポチッ
お気に入りありがとうございマッスル︎💪('ω'💪)
ゲイルを虐げた奴らゲイル母を虐げ殺した奴ら
みんなまとめて、滅びますように!
もちろん、傍観者もみんなです!
感想ありがとうございます。その辺も書いていきたいと思っております。期待した展開まで時間がかかるかもしれませんが、お付き合い頂ければ幸いです。