賢者の幼馴染との中を引き裂かれた無職の少年、真の力をひた隠し、スローライフ? を楽しみます!

織侍紗(@'ω'@)ん?

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第八十九話 全滅

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 いくら考えても絶望しか無かった。エミリアは岩陰に隠れ、この状況から逃れる術を考え続けた結果が……全滅だった。

 先日、少年に言った言葉がエミリアの脳裏をよぎった。Cランクでも死ぬって言った冗談が。別に死ぬつもりなんか無かったし、死ななくて切り抜けられると思っていた。
 事実そうだったであろう。自分達もあの少年が洞窟へ腕試しに潜ろうとしていたのと一緒で腕試しにと深い階層に潜ったのだ。Dランクなら問題なく倒せる。Cランクならどうだろう……と。

 しかし、初心者には最適だと言ったこの洞窟、その下層は上級者でも太刀打ち出来ない所だった事を知った。
 油断をしていなかったとは言わない。ただ、まさかこんな事になるとは思わなかった。深い階層の話は聞いた事がないのは、これが理由だとわかった。行ったことがある者がいるのではなく、帰って来た者がいないのだということを。
 ちょっと腕を試そうと考えた者たちは皆死んでいであろうことを。

 まさか最深部であろうここにあんなのが居るとは……
 Bランクの魔物、フェンリルウルフだ。それが五匹も……

 九階層まではそれまで通りだった。せいぜいDランクの魔物と言った所だった。
 しかし、次の階段を降りた先は違った。魔物が一匹も出なかったのだ。
 奥の部屋に入り、その五匹の魔物がこちらに気づき、動き出すのを目にした時に、自分たちに訪れる未来と、それ以降の未来が訪れない事を悟った。

 一匹だけなら逃げる事も出来たかもしれない。ただ、皆で立ち向かっても一匹が限度だろう。そんなのが五匹もだ。
 偶然にもエミリアたちと同じ数だった。一匹で一人……そう、エミリアたちは狩る側ではない。狩られる側になってしまったのだ。

 最初のターゲットは剣士のシエラだった。前衛という役割上、一番前に立っていたのだ。彼女とはパーティーを組んで約五年。その関係を失ったのは一瞬の事だった。
 それを悟ったのは足元にシエラの首が転がっていたからだ。そう、さっきまで少し前に居たはずシエラの首がエミリアの足元に転がっていた。
 時を忘れ、一瞬なのか永遠なのかわからない後に、シエラの首があったはずの場所から血飛沫が上がり、倒れるのが見えた。

 それをきっかけにエミリア達は散り散りに逃げ出した。背後からは、恐らく……シエラを貪り喰う音が聞こえたが、振り返り、確認する事などしない。いや、出来なかった。見たら足がすくんでしまう、早くこの場から逃げ出したい、ただのその一心だった。

 他の仲間がどうなったのかなどわからない、気に掛けている余裕など無い、もう逃げるしかないのである。逆に、自分じゃなくてそっちに行ってくれ、とすら思った。その分自分が逃げられる可能性が高くなるのだから……

 どれくらい走ったかわからない。何かを踏みつけて転んでしまった。ふと見ると先程足元に転がっていた首だった。戻って来てしまったのだ。近くに喰い散らかされたシエラだったであろう物が見える。

 付近にそれ以外の死体は見えないので、恐らくこの場からは逃げられたのだろう。この場からは……であるが……その先は知らないし、知る術はない。

 ここで立ち止まる訳にもいかないので、奥の……先程はフェンリルウルフが居た所まで来て気づいた。気づいてしまった。ここは行き止まりの部屋だったのだ……

 つまり逃げ出すには来た道を戻るしかない。しかし、戻れば見つかる可能性が高くなる。下手に動けないが、ここに留まるのもまずいのだ。元々ここで遭遇したのだ。ここが住処の可能性もある。そうだった場合はここに戻って来てしまう。

 エミリアにはもう打つ手は無かった。ただ何もしない訳には行かないので、近くの岩陰に身を潜めた。もう、死ぬ時間の先延ばしでしかないが、エミリアに残された出来る事はただそれしかなかった。

 何をしてもどうやっても状況の好転は見込めない。もう絶望的な未来を考える事しか出来ない。それがいつ訪れるかなど考えたくはない、そして、どのようになるかなど考えたくはないが、目の前に見える仲間だった物は、その想像を止める事を許さないのである。

 そう、それが近い将来、エミリアがなるべき姿だからだ。

 どれくらいの時が経ったのかわからないが、その時がエミリアの元へ訪れる瞬間がやって来た。

 フェンリルウルフが部屋に入って来るのは気配でわかった。何か引きずるような音も聞こえる。恐らく、仕留めた獲物・・を持ち帰って来たのだろうとエミリアは考えた。

 それを無造作に放り投げた音がした後、貪り喰う音が聞こえる。かと思ったが、辺りはしばらく静寂に包まれた。

 エミリアはどうしたのか不思議に思い、そっと岩陰から様子を伺うと、ちょうど目の前でフェンリルウルフがじっとこちらを見ていた。
 目が合ってしまった……凍りつき、身動き一つ取れないエミリアは、呼吸する事すら忘れた。
 滴り落ちる血のせいかフェンリルウルフが笑ったように見えた事も、恐怖をより大きい物とさせた。

 大きな口を開け、ゆっくりとエミリアの元へフェンリルウルフが近づいてくる……フェンリルウルフが目と鼻の先まで近づくと、もうすぐ訪れる未来無き未来への恐怖からエミリアは目を閉じる事しか出来なかった……
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