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第百九話 アマンダvs悪魔
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アマンダは目の前の悪魔に向かい駆けつつ、一瞬だけ思いを馳せた。前回、同じような闇に堕ちた者と戦った時の事だ。変異前である人間自体の能力としては、確実にその時の方が上、ただ、変異後の姿としては、今回の方が禍々しかった。故にどちらが強いのかは全く予想ができない。それに、前回は仲間もいたが、今回は独り。苦戦は免れないだろう……ただ、守るべき存在が背後にいる、負ける事は許されない、と。
「筋力強化」
アマンダが言の葉を紡ぐと、アマンダの身体が淡い光包まれ力が漲る。アマンダは授業で見せたように魔法も使える、が、補助的だったり、相手の行動を制限する為に使うことが多かった。逃げ道を塞いだり、誘導するのが主な目的として魔法を使うのである。それは単純に剣の腕、技術に自信があるからだった。
強化された力は新たな速度を生み出し、その速度差を用いて、伸ばされた悪魔の腕を掻い潜る。と同時に右手に持った剣をアマンダは大きく振り上げると、その刃は相手の左腕を落とした。
しかし、左腕を落とされたのに、全く意に介す様子を見せずに、悪魔は右腕を振り下ろしてくる。すると、アマンダは胴体を蹴り、その反動で相手との距離を稼いだ。
「なかなかやるな……」
悪魔はアマンダに話しかける。
「それはどうもありがとう。でもね、褒めても手加減なんかしないわよ。とりあえず先手は頂いたって所かしら。早々に左腕落とされてこれからどうするつもり?」
眼光鋭く悪魔を見ながらも、軽口のようなものをたたくアマンダ。当然、挑発を意図して、のものである。
「これの事か? 何、心配はいらない」
悪魔は無造作に左腕を拾い上げると、切断面をくっ付けた。すると即座にブクブクと泡状の物がその部分を包み込む。直後、切り離されたはずの左腕を軽く回したのだった。
「ほら、この通り。この程度の傷、すぐに治る」
その様子を見たアマンダは、表情も姿勢も変えることなく、再度軽口を叩いた。
「へぇ。心配して損したわ」
ただ、内心は当然違った。あれだけ大きな傷を負わせたのに、一瞬で治してしまうのだ。小さな傷は意味は無いだろうし、そもそも傷を負わせ続ければ倒せるのかも不明になってしまったから。首でも飛ばせば倒せるかもしれないが、当然、その辺り、悪魔は注意を払うだろう。
この治癒力により、アマンダが不利になったのは明らかだった。だから余裕の態度を見せ、悪魔の状態を観察しようともしたのだが、それに激怒する訳でもなく、平然と話を合わせるあたり、知能も高く、冷静さもある。言葉で油断を生じさせるのは難しそうだ。
ただ、一度刃を振るっただけだが、実戦経験の少なさは想像通りだった。ここを付いて、優位に立ち回るしかアマンダに勝機はない。
そうアマンダは思った。
「じゃあ次はこちらから、だな」
そう言うと悪魔は動き出した。その巨体のせいか、動きは早くない。迫る悪魔をアマンダは冷静に観察していた。
やはり狙うべきは首、必殺の剣は奥の手として隠しておきたい。何故ならそれで首を落としても倒せない可能性もあるからだ。
アマンダを捕まえようと、両手を伸ばす悪魔。その両手を掻い潜り、懐に入ったアマンダは、胴を断とうと、そのまま剣を横になぎはらおうとする。その瞬間、アマンダの脳裏に何かがよぎり、剣を振るわずに、悪魔の横を通り抜ける。
一旦、距離を取ったアマンダは左腕に微かな痛みを感じた。ふと見ると、かすり傷を負っている。今の攻防の中にそんな様子は無かった……なのにである。
すぐに悪魔に向き直ると未だ振り向かない悪魔の背中が見える。そこには蛇のように蠢く尻尾があった。ゆっくりとアマンダに向き直った悪魔はアマンダにこう伝えた。
「ほう、躱したか……」
躱したことは躱したが、手だけでなく尻尾にも注意を払わないといけなくなり、懐に入りにくくなってしまったアマンダだった。
「厄介ね……」
その後、何度も迫り来る悪魔を躱しつつ、確実に傷を追わせていくアマンダ。それに対して、何度躱されつつも、単調な攻撃を繰り返す悪魔。なかなか勝負がつかない中、段々とアマンダの躱すタイミングが遅くなってきており、かすり傷も増えてきてしまった。
「そろそろ効いてきたみたいだな……」
悪魔がふと呟く。
「この尻尾はただの蛇じゃない、毒を持っているんだよ」
尻尾の蛇から傷を付けられたことで、毒が回り動きが鈍くなっていたのだった。
「くっ!」
堪らず膝をつくアマンダ。
「死ねぇ!」
今度こそアマンダを捕まえようと、迫り来る悪魔。
「馬鹿ね!」
捕まるというその一瞬、アマンダは力を振り絞り、前方へ回転し、悪魔の股を潜る。即座に尻尾を落としたあと、背中を駆け上がり、頭と身体を切り放ったのだった。
大きな音立てて倒れる悪魔と、その横に倒れ込むアマンダ。少し離れた所に落ちゆく悪魔の頭部。
アマンダは受け身をとった後、転がって移動し、何とか悪魔との距離を取ったのであった。
未だ警戒を解かず、力を振り絞って、体を起こし身構えるアマンダの目の前で、魔石へと姿を変える悪魔を見届け、アマンダはやっとそこへ座り込むのであった。
「自分の身体のことくらい、自分で分かるわよ。毒が回ってること、くらいはね。それに引っかかったのが、あなたの敗因よ」
そしてアマンダは座り込み、肩で息をしながらそう呟いたのだった。
「筋力強化」
アマンダが言の葉を紡ぐと、アマンダの身体が淡い光包まれ力が漲る。アマンダは授業で見せたように魔法も使える、が、補助的だったり、相手の行動を制限する為に使うことが多かった。逃げ道を塞いだり、誘導するのが主な目的として魔法を使うのである。それは単純に剣の腕、技術に自信があるからだった。
強化された力は新たな速度を生み出し、その速度差を用いて、伸ばされた悪魔の腕を掻い潜る。と同時に右手に持った剣をアマンダは大きく振り上げると、その刃は相手の左腕を落とした。
しかし、左腕を落とされたのに、全く意に介す様子を見せずに、悪魔は右腕を振り下ろしてくる。すると、アマンダは胴体を蹴り、その反動で相手との距離を稼いだ。
「なかなかやるな……」
悪魔はアマンダに話しかける。
「それはどうもありがとう。でもね、褒めても手加減なんかしないわよ。とりあえず先手は頂いたって所かしら。早々に左腕落とされてこれからどうするつもり?」
眼光鋭く悪魔を見ながらも、軽口のようなものをたたくアマンダ。当然、挑発を意図して、のものである。
「これの事か? 何、心配はいらない」
悪魔は無造作に左腕を拾い上げると、切断面をくっ付けた。すると即座にブクブクと泡状の物がその部分を包み込む。直後、切り離されたはずの左腕を軽く回したのだった。
「ほら、この通り。この程度の傷、すぐに治る」
その様子を見たアマンダは、表情も姿勢も変えることなく、再度軽口を叩いた。
「へぇ。心配して損したわ」
ただ、内心は当然違った。あれだけ大きな傷を負わせたのに、一瞬で治してしまうのだ。小さな傷は意味は無いだろうし、そもそも傷を負わせ続ければ倒せるのかも不明になってしまったから。首でも飛ばせば倒せるかもしれないが、当然、その辺り、悪魔は注意を払うだろう。
この治癒力により、アマンダが不利になったのは明らかだった。だから余裕の態度を見せ、悪魔の状態を観察しようともしたのだが、それに激怒する訳でもなく、平然と話を合わせるあたり、知能も高く、冷静さもある。言葉で油断を生じさせるのは難しそうだ。
ただ、一度刃を振るっただけだが、実戦経験の少なさは想像通りだった。ここを付いて、優位に立ち回るしかアマンダに勝機はない。
そうアマンダは思った。
「じゃあ次はこちらから、だな」
そう言うと悪魔は動き出した。その巨体のせいか、動きは早くない。迫る悪魔をアマンダは冷静に観察していた。
やはり狙うべきは首、必殺の剣は奥の手として隠しておきたい。何故ならそれで首を落としても倒せない可能性もあるからだ。
アマンダを捕まえようと、両手を伸ばす悪魔。その両手を掻い潜り、懐に入ったアマンダは、胴を断とうと、そのまま剣を横になぎはらおうとする。その瞬間、アマンダの脳裏に何かがよぎり、剣を振るわずに、悪魔の横を通り抜ける。
一旦、距離を取ったアマンダは左腕に微かな痛みを感じた。ふと見ると、かすり傷を負っている。今の攻防の中にそんな様子は無かった……なのにである。
すぐに悪魔に向き直ると未だ振り向かない悪魔の背中が見える。そこには蛇のように蠢く尻尾があった。ゆっくりとアマンダに向き直った悪魔はアマンダにこう伝えた。
「ほう、躱したか……」
躱したことは躱したが、手だけでなく尻尾にも注意を払わないといけなくなり、懐に入りにくくなってしまったアマンダだった。
「厄介ね……」
その後、何度も迫り来る悪魔を躱しつつ、確実に傷を追わせていくアマンダ。それに対して、何度躱されつつも、単調な攻撃を繰り返す悪魔。なかなか勝負がつかない中、段々とアマンダの躱すタイミングが遅くなってきており、かすり傷も増えてきてしまった。
「そろそろ効いてきたみたいだな……」
悪魔がふと呟く。
「この尻尾はただの蛇じゃない、毒を持っているんだよ」
尻尾の蛇から傷を付けられたことで、毒が回り動きが鈍くなっていたのだった。
「くっ!」
堪らず膝をつくアマンダ。
「死ねぇ!」
今度こそアマンダを捕まえようと、迫り来る悪魔。
「馬鹿ね!」
捕まるというその一瞬、アマンダは力を振り絞り、前方へ回転し、悪魔の股を潜る。即座に尻尾を落としたあと、背中を駆け上がり、頭と身体を切り放ったのだった。
大きな音立てて倒れる悪魔と、その横に倒れ込むアマンダ。少し離れた所に落ちゆく悪魔の頭部。
アマンダは受け身をとった後、転がって移動し、何とか悪魔との距離を取ったのであった。
未だ警戒を解かず、力を振り絞って、体を起こし身構えるアマンダの目の前で、魔石へと姿を変える悪魔を見届け、アマンダはやっとそこへ座り込むのであった。
「自分の身体のことくらい、自分で分かるわよ。毒が回ってること、くらいはね。それに引っかかったのが、あなたの敗因よ」
そしてアマンダは座り込み、肩で息をしながらそう呟いたのだった。
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