転生王女は世界ランキング1位の元廃ゲーマー ~一生Lv1固定が確定しちゃってても、チート級な知識の前にはそんなの関係(ヾノ・∀・`)ニャイ

織侍紗(@'ω'@)ん?

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 段々と景色がはっきりとしてくる、すると私は広大な草原に立っていた。そして、その目の前には一体の巨大な獣。その獣はほぼ虎のような獣だけど、ただ、虎というにはとても大きい。しかもうっすらと光を放っていてとても神々しい。そして威厳を放つその姿はとても巨大だ。体長は優に百メートルを超えているだろう。このボスの名はハナンケシヤンイカイロン。とーっても長ったらしい名前だけど、多分そこに意味は無い。そう、たぶん、ね。意味はない、はず?
 しっかし、こうやってゲームの世界の中で見るととってもでかいわね。あまりにもでかすぎて首が少し痛くなってきたわ。
 なーんて考えてながら首をポキポキと鳴らしてると頭の中に声が響いてくる。

『生きてココから出るには、この私を倒せ! お前らごときがそれ・・を出来るならばなぁ!』

 ま、ここには私一人しかいないんですけど。定型文なのでお前じゃなくてお前らのままなのね。ちなみにハナンケシヤンイカイロンは本当に巨大だ。しっかも見た目通りの圧倒的な攻撃力は、後半まで育ったパーティーですら軽く蹂躙するの。まーた、うっすらと輝くその身体は、柔らかい毛のように見えてすっごく硬い。どんな攻撃ですら跳ね返し、まともにダメージを与えられない。
 ちなみにそれは武器でも魔法でも一緒。一部の防御力を無視する、所謂貫通攻撃でしかダメージを通すことが出来ない。もちろんそんな攻撃は序盤で覚えてることなんか出来ないわ。
 コツコツと最弱クラスのモンスターを倒して、延々とレベルを上げるなんてことでもしなければね。
 しかもこのゲーム、モンスターとのレベル差が顕著に出る。当然モンスターよりレベルが高くなれば強くなり倒しやすくなるけれども、それだけじゃダメ。プレイヤーとモンスターとのレベル差で獲得経験値が変わってくるから。当然、自分の方が低ければ獲得出来る経験値は数倍に、低ければ数十分の一、もっと離れると数百分の一になってしまう。
 そんな中でコイツを倒せるまでレベルを上げるなんて、まさしく狂人・・のやることだと断言出来るわ。なんでこの序盤でそうすれば倒せるかを知ってるのは、まあ推して知るべしってこと。

 といっても、レベル1で挑もうとすることも充分狂人なのだろうけどね。

 そしてステータスだけじゃない。コイツにはある特徴がある。それはこっちが魔法をかけるとカウンター行動を取ってくること。物理攻撃にも、魔法攻撃にも防御力を無視する攻撃がある。魔法攻撃の方が種類が豊富だし、比較的に低レベルで手に入るからかもしれないけど、ダメージを与える、与えないに関わらず魔法をかけるとカウンター行動を取ってくるのだ。

 そんな極悪ボスにどうやって勝つか、だけども。はっきり言って詰みね。今更だけどどうやっても勝てないわ。

「あんたがね」

 私はニヤリと笑いながらそう呟いて、握りしめた石を目の前にかざした。そう、もう既に勝敗は付いている。勝ち確なのだ。
 するとハナンケシヤンイカイロンの身体はぼんやりとしたモヤのようなモノで包まれていった。
 この石の効果は対象の魔法防御力を上げる魔法を放つこと。使用回数はたったの1回。各戦闘毎とかじゃなくて、ホントに1回だけ。つまり道中で使ってたらここでは使えない。で、これ以降も使えない。というか、この後王家に返すことになるのだけども。

『ギシャー!』

 身体をモヤに包まれたハナンケシヤンイカイロンは叫び声をあげる。すると今度はハナンケシヤンイカイロンの身体が強く光り輝いていく。これはカウンター行動の一つ。そう、魔法防御力を上げる魔法をかけたから、ハナンケシヤンイカイロンはカウンター行動に入ったのだ。
 あの叫びは自身に魔法反射の効果をかける魔法。光り輝いているのは、その効果、である。

『ギャギャギャシャー!』

 今度は違う叫び声だ。するとハナンケシヤンイカイロンの目の前に直径三十メートルはあろうかという大きな光の球が現れ、段々と小さく収束していく。
 今度は攻撃魔法。この魔法にも魔法防御力を貫通する効果がある。これをハナンケシヤンイカイロン自身に放ち、それを反射させて攻撃してくるのだ。一度反射させた魔法は再反射出来ない為、こっちがコレ・・を躱す手段がない。防御力無視の極悪な魔法を回避不可の方法で放つ。それがハナンケシヤンイカイロンのカウンター行動だった。

 が……

 パリン! ドシュゥ!

 その魔法は反射されることなく、光の壁を突き破り、ハナンケシヤンイカイロンの身体を見事に貫いた。
 よろめくハナンケシヤンイカイロン。ただただその姿を眺めるだけの私。

『ギシャー!』

 再度、叫び声を上げてハナンケシヤンイカイロンの身体が光に包まれる。これは先ほど、自身に放った貫通魔法に反応してのカウンターである。これは最初に行った魔法反射をかける魔法ね。

『ギャギャギャシャー!』

 パリン! ドシュゥ!

 でも当然次の魔法攻撃も反射されることなどなく、ハナンケシヤンイカイロンの身体を貫いた。

『ギシャー!』

『ギャギャギャシャー!』

 パリン! ドシュゥ!

『ギシャー!』

『ギャギャギャシャー!』

 パリン! ドシュゥ!

 …………

 延々と続く光景。目の前で繰り広げられるハナンケシヤンイカイロンのただの自殺である。HPがなまじ多いだけに時間がかかってしまうのが難点ね。
 最初の魔法で魔法防御力を上げた為、魔法防御力が最大となった。そして魔法防御力が最大になったハナンケシヤンイカイロンは、魔法を使った全状態異常にかからなくなってしまった。そして、魔法反射状態は状態異常と同じフラグで管理されているようで、自身が放つ魔法反射の魔法もかからなくなってしまった。
 だからその後に放つ魔法も反射出来なく、自身のその魔法に反応して延々とカウンター行動を繰り返すだけ、になってしまった。と言うワケである。
 ちなみに本当のゲーム内だと王族の行動はプレイヤーが選択できずに完全ランダム。だから、ハナンケシヤンイカイロンに石を使うことが出来ない。使わせる為には一旦混乱状態にプレイヤー自身でさせて、そこで行動を運良く引かなきゃならない。確率は一万分の一と言ったところね。ま、施行回数を増やせばもう少し違う確率に収束するかもしないけど、私がやった範囲では体感それくらいかしら。

 なーんて考えてるうちに何十回だろうか、その自殺行為を繰り返したハナンケシヤンイカイロンはドズーンと地響きを立てて崩れ落ちた。

「くぅ~、疲れました! これにて終了です!」

 まぁ石を掲げただけだし本当は疲れてなんかないけどノリね、ノリ。そして勝った私の目の前は、先ほどと同じように段々と歪んでいったのだった。
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