転生王女は世界ランキング1位の元廃ゲーマー ~一生Lv1固定が確定しちゃってても、チート級な知識の前にはそんなの関係(ヾノ・∀・`)ニャイ

織侍紗(@'ω'@)ん?

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 私たちは国境を遮る塀に備わった関所に備え付けてある扉の前に立っていた。延々と続くように見える石造りの巨大な塀。そこにデン! と存在している鉄でできた大きな扉。人の背丈の数倍はあろうであろう扉、である。その扉の両脇には門番が一人ずつ、じっと地平線の彼方を見つめ、瞬きひとつせずに直立不動で立っている。

「で、どうするつもりだ?」

 アルト兄さんがその門を見つめながら私に問いかけてきた。

「どうも何も、この扉の向こう側に行くだけよ」

 とは、私の答えである。それは当然の事だった。聞かれるまでもないこと。

「だからそれをどうやってやるんだ? 開く気配もないぞ」

 アルト兄さんは門に近づき少し力を込める。開く気配を見せない扉から手を離し、今度は引っ張ろうと取っ手を探すが見当たらない。

「おい、門を開けてくれ」

 と今度は門番に声をかけるがアルト兄さんの声に反応を示すことは無かった。

「ほらな、門番もこんな様子じゃどうにもできないだろ」

 そして肩を竦めながら振り返り、私にそう告げた。そしてため息混じりにこう呟いた。

「しっかし職務に忠実な門番だこと。俺が話しかけてもじっと一点を見つめるだけとはね」

 ま、回答も何もプログラムされてないだけだろうけど。こんな序盤で向こう側に行こうなんて思わないし、そもそも本当なら・・・・行けないし、そんなの用意するだけ無駄だからね。
 私はそんなことは答えずに、アルト兄さんの横に立ち扉を見ながらこう答える。

「この扉の向こう側に行くのは簡単だわ」

 そして扉に両手を当ててグッと力を込めた。

「おいおい、押したって開くワケが無いだろ?」

 呆れた様子を見せるアルト兄さん。でも、私は構わず押し続ける。

「モチロン、開かないわよ」

「だったらそんな無駄なこと?」

「開かないわよ。だからと言って無駄とも限らないわ」

 そう言葉を返しながら休むことなく力を込める。

「何が何だかさっぱりだ」

「まあ、いいわ。黙ってみててくれれば」

「とはいっても、なぁ」

 途方に暮れた様子で言葉を返してくるアルト兄さん。諦めることを期待してたのだからそんな感じになるのも理解はできる。かと言って知っている私は諦めることはない。しかも無駄だと思うようなことを手伝わさせることもする気も無い。だから私は黙ってみててと言ったの。

 私はそのまま黙って押し続けた。時間にしてピッタリ13分と30秒、秒数にして、いや、秒数にするのはやめとこ、で、その時間がたった時だった。扉が動きだしたのは。いや、扉だけでなく枠ごとズズズ……ズズズ……と音を立てて、開くことはなく動きだしたのだった。

「え、嘘! なんで? どうして? 何が起きてる?」

 パニックに陥っているアルト兄さん。私は力を込めて押しながらアルト兄さんの疑問に答えて言った。

「知らないわ! フンヌ! 解析もしてないし! フンヌ! プログラム覗いたことも無いし! フンヌ! ただの遊びでしょ! フンヌ!」

「アイラ? 何を言ってる? 俺には今、何が起きてるかワケがわからん!」

 動揺するアルト兄さんに構うことなく、私は押すことを止めない。

「わかんなくていいわよ! フンヌ! で、押すの? フンヌ! 押さないの? フンヌ! 押さないなら黙って見ててくれる? フンヌ!」

 さすがに動いているこの状況を見れば手伝ってもらっても良いだろうと私は手伝うように頼んだ。すると、アルト兄さんはハッとして私の横を一緒に押し始めた。

「あ、ああ! スマン!」

 しばらく押すと塀と扉の間には隙間が出来ていた。私はそれを確認すると扉から手を離した。

「ふぅ、もう大丈夫そうね。人が一人くらいなら抜けられそうだわ」

 その隙間は人が一人通るには十分な大きさだった。これ以上押す必要はないわね。

「あ、ああ。そうだな。し、しかし、信じられない。と、扉が動いた時は驚いて心臓が止まるかと思ったぞ」

 未だ呆然とするアルト兄さん。私は鼻先に人差し指を突き付け、軽く微笑みながら悪戯っぽくこう尋ねる。

「言っとくけど、こんなのまだまだ序の口よ? こんなので心臓が止まってちゃ命が幾つ有っても足りないわよ? やっぱりアルト兄さんは一緒に来ない方が良いんじゃない?」

「あ、いや。言葉のアヤというやつだな。実際に心臓が止まる訳では……」

 俯きながら少し困った様子で言葉を返すアルト兄さん。

「知ってるわよ。私も冗談よ。でも、本当にここから先は信じられないことばっかり起きるわよ? それ以前にモンスターとの戦いで命を落とすかもしれない。他にもいっぱい危険はあるわ。それでもいいの? 引き返すなら今が最後よ?」

 今度は先程とは違う真剣な表情で尋ねた。ぶっちゃけアルト兄さんはこのまま国に残った方が安全だ。私と違って捕まる訳でもないしね。そんな私の様子にアルト兄さんは一瞬だけ戸惑ったけど、同じように真剣な表情になって答えてくれた。

「ああ。アイラと一緒に行くと決めたんだ。男に二言はない」

「わかったわ。じゃ、行きましょ」

 そして私は隙間を抜けて先に進もうとすると背後からアルト兄さんが私に尋ねてくる。

「で、これどうするんだ?」

「ほっとけば?」

 ゲームでは画面を切り替えると勝手に戻るし、そんなの気にしたことが無い私はそう答えた。

「いや、追手の心配をしていたからな。戻しておいた方が良いかと思って」

「なるほど。それもそうね。じゃ、アルト兄さんも手伝ってよ。戻したら早く行きましょ」

「ああ、そうだな!」

 そして私たちは反対側から同じように、810秒の間、扉を押したのだった。
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