転生王女は世界ランキング1位の元廃ゲーマー ~一生Lv1固定が確定しちゃってても、チート級な知識の前にはそんなの関係(ヾノ・∀・`)ニャイ

織侍紗(@'ω'@)ん?

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 マチルダという都市。ここはこの世界の中でも科学が他の都市よりも発達している。正面の大通りに面しているのは、他の街によくあるような石だけを組み上げられた家々、だけではなく、金属を使って補強されている家もあるような街並みが広がっている。
 しかし、私たちがいるのは、そんな発展したような街並みとは打って変わった裏路地。薄暗く、ゴミも放置されているような裏通り。そんな怪しげな通りを私はずんずんと目的の場所に向かって歩いていた。

「おいおい、なんでこんな裏通りなんかを」

 意気揚々と歩みを進める私の後ろで、少し不安げな様子のアルト兄さんが私にそう声をかけてきた。スラム、とまではいかないまでも、表通りの華やかな雰囲気とは一転した薄暗い裏通りでは、少し不安になるのも致し方ないのかもしれない。
 でも、そんなのはお構い無し! 私はピタリと止まって、アルト兄さんの鼻先に指を突きつけたあと、その指を左右に揺らしながらこう告げる。

「なんで、って金策よ。き・ん・さ・く! お・か・ね・か・せ・ぎ!」

 そしてくるりと振り返って、取り出したアドベンチャーズ・カードを右手でパタパタと仰ぎながら再度歩き始めた。

これ・・を返しにアドベンチャーズ・ギルドに行かなきゃいけないわ。行ったついでに登録しちゃった方がいいじゃない? だけど、私達は登録料を持ってないでしょ? だから先に金策しとこうって思うのが自然じゃない?」

 そう、何をするにもお金は必要だわ。アドベンチャーズ・ギルドで登録するにもお金は必要。アドベンチャーズ・ギルドに登録しないと様々なクエストが受けられない。ゲームならストーリー上、登録出来るイベントがあるのだけど、今の私の状況を考えるとおそらくそのイベントは発生しないわ。ならばイベント以外で登録。となるとお金が必要になる。そうすると登録するのに私たちは、システムの関係上かなーり高いお金を払わなきゃいけない。だからこそお金稼ぎが必要という訳なの。

「言いたいことはわかるのだが? こんな所でお金なんか稼げるイメージが湧かないのだが。良く耳にする冒険者たちのお金稼ぎと言えば、クエストを受けたり、モンスターを狩って素材を売ったり、とかだろ?」

 私は『わかってないなぁ』と言った様子で肩を竦めて、大袈裟に何度も首を横に振った。

「はぁぁぁ、よーく考えてよ? アルト兄さん。今、言ったことぜーんぶ出来ると思う? クエスト受けるにもアドベンチャーズ・ギルドで登録出来なきゃダメ。素材売るにしてもこの辺のモンスター狩れないでしょ? 私、まだ死にたくないもの」

「じゃあ狩れる強さのモンスターが出る場所まで移動するとか」

「それもムリよ。乗り合い馬車に乗るお金もない。かと言ってさっきみたいな後ろ向き移動も出来ない。他の街に行く街道は、私たち以外の人たちもいるからね。だからモンスターも湧く。そのモンスターには私たちは勝てない。現実的じゃないでしょ?」

 チラリと後ろに視線を送ると、アルト兄さんは腕を組んで少し俯いて考え込んでいるようだった。

「なるほどな。言われてみれば確かにそうか。しっかし金稼ぎと言ってもこーんな薄暗い裏通りでそんなことが出来るイメージが全く湧かん。こう言っちゃなんだが、あまりお金を持っているような人たちが住んでるようには見えないぞ」

 そしてチラチラと周りの建物に幾度となく視線を送る。

「別に空き巣や強盗する訳じゃないわよ。ここに住んでる人たちがお金を持っていようが無かろうが関係無いわ。私たちがすることは物を仕入れて売ること。どう? そう聞いて何か問題ある?」

「ああ、あるぞ。何を仕入れるんだ? どこで、どうやって売るんだ? さっきアイラが言ったんだぞ? 俺たちに勝てるモンスターなんかいないって。あ! この先に勝てるモンスターがいるとか!」

「ハズレよ。まぁこの先に勝てるモンスターがいるって言うのは間違いじゃないけど、今はいないしそいつにまだ用はないわ。そもそも準備しないと勝てないし、ってここよ」

 と、私は目的の店まで着いた。その店に入る扉の前で振り向いて、親指でクイッと扉を指差しながらアルト兄さんにウインクをする。

「ここか?」

「そう。ま、アルト兄さんはとりあえず後ろで見ててよ。どうせ何やってるか理解出来ないんだし」

 私はそう告げると何か言いたそうなアルト兄さんを後目に、その店の扉を開けて中に入ったのだった。
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