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幕間 王と大臣

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 ラルバが宮廷占い師をクビになった翌日の昼すぎのこと、ウィーグルスの国王であるブライトンは自室で執務にあたっていた。

 その部屋の扉がコンコンッと二度ノックされる。

「誰だ?」

 顔をあげてブライトンは尋ねると、扉越しに声が返ってくる。

「ブライトン様、アーネストでございます。一つご報告がございまして……」

「入れ」

「失礼致します」

 ガチャリと扉が開かれ、アーネストが部屋に入ってきた。そして、扉の脇で立ち止まりひとつ礼をする。

「で、報告とは?」

 ブライトンはティーカップに片手を伸ばし、一口だけ喉を潤してから尋ねる。

「はい。あの似非占い師のことでございます。どうやら王都に留まることなく出ていったと報告がございました。国境も数日の間に越えるものと思われます」

「そうか。アーネスト、ご苦労だったな」

「いえ、とんでもないことでございます」

「しかし……」

 ブライトンは手元のティーカップを覗き込みながら何か考えているようだった。

「如何なさいました?」

「いやな、まだ十五になったばかりの少年。宮廷占い師の任を解いたとしても、国から出てけというのも可哀想だったかなと少し思ってな」

 そのブライトンの言葉にアーネストは語気を強めて諌めはじめた。

「ブライトン様、何を仰います? 気になさってはダメです。あいつはウィーグルス国に巣食う魔物のようなもの……いや、巣食っていた魔物でございますよ! この数年の間でただただお金を貪っていただけ。追い出して当然、むしろウィーグルス国を救う為には追い出さなければならなかったと言うべきでしょう。ブライトン様が気に病む必要など何処にございましょうか?」

「そうか……そう言って貰えると気が楽になるよ」

 そしてブライトンは一息吐いてから、再度ティーカップの中身を口に含んだ。

「そう、それにあの似非占い師はこの国を追放された身。もう二度とブライトン様がお目にかかることは御座いません。そう、もう二度とです……ですからあの似非占い師のことを考える必要も全くございません」

 アーネストはニヤリと笑みを浮かべながら、そうブライトンに告げた。

「ふむ。それもそうだな……ありがとう、アーネストよ」

「ブライトン様はこの国のこと……いや、その先のことも考えなくてはならないのです。余計なことはこの私めにお任せ下さい」

「わかったよ」

「では、私はこれで失礼致します」

 ブライトンはアーネストにそう答えると、ティーカップを口元に運び中身を一息に飲み干した。と、同時にアーネストは一礼をし、部屋を出ていった。
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感想 3

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みんなの感想(3件)

rinchan
2021.01.17 rinchan

こちらの作品、今日気付いて読ませて頂きました。
楽しく読み進め続きが気になるところで、
話しが止まってしまい残念です。
続きは書かれないのでしょうか。。。
更新されることを願ってます。
他の作品から、こちらも気になり読ませて頂きました。
これからも読ませて頂きます。
無理をせずに更新されて下さいね。
応援してます。

解除
卓也
2020.11.18 卓也

エルフの姉妹(妹の方)が新キャラで姉が天然で妹がしっかりもの!ガツガツの肉食エロ婦で無くラブコメ風の純愛系エルフに⁈短編よりワクワク感がありますね!

解除
卓也
2020.11.16 卓也

長編の制作をありがとうございます♪短編で出なかったザマァの詳しい版!ヒロインの争奪戦を楽しみに更新をお待ちしてます♪エルフのハーレム版?になるのかな?ワクワク♪

2020.11.17 織侍紗(@'ω'@)ん?

こちらでも感想有難うございます! 執筆優先になってしまうので返信遅くなってしまうと思いますが、目は通させていただいてます&励みになります。

R指定は無しにしてるので、何処まで書けるかわかりませんが、期待に沿える物を書いていきたいなと思ってますので宜しくお願い致します。

解除

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