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五話目 外れた? 占い

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「うーん……何だか重いななぁ」

 僕は胸にかかる重さに、少し寝苦しさを覚え、ゆっくりと瞳を開けた。窓から入ってくる暖かい陽の光、そして僕の横ではヘパイアが僕に右腕を乗せて、可愛い寝息を立てている。重苦しさはこの右腕か……

「むにゃむにゃ……もうちょっと……」

 ってなんで! ここは僕の部屋だよね! なんで僕のベッドで一緒にヘパイアが! と思った僕は混乱してしまった。

「え、うそ! なんでヘパイアがいるの? 僕が寝た時はいなかったよね!」

 そして僕は跳ね起きる。その拍子に掛けていた布がはらりと落ちた。すると顕になる生まれたままのヘパイアの姿……僕は何が起きているのかよくわからずに呆然としてしまう。

 と同時に扉がドンドンドン! とノックされた。

「ラルバ様! ラルバ様! ねぇさんはこちらに来てませんか? 部屋に居なくて! もしかしてこちらに!」

 アイナだ! ヘパイアを探している! でもでも! この状況はマズイ! なんせヘパイアは……裸だからだ!

 焦った僕はヘパイアを揺すって起こそうと試みる。

「いる! いるけどちょっと待って! ほら、ヘパイア! 起きて!」

「ほぇ? あ、ご主人様ぁ……むにゃむにゃ……」

「ちょ、ちょっと! 寝ないで! ほら朝だよ! 着て! これ着て!」

 ベッドの脇に落ちていた服をヘパイアに突き付けて何度も起こすが、ヘパイアはなかなか起きてくれない。

「失礼します!」

 業を煮やしたアイナが部屋に飛び込んできた。部屋には裸のヘパイアと僕しかいない。とてもマズイと思った僕は焦ってアイナに否定する。

「あ、こ、これは! 僕は何も!」

 しかし、アイナは冷静だった。チラリとヘパイアに視線を送ってから再度僕に視線を戻す。

「ねぇさんは裸で寝る癖があるので……」

 そして、ヘパイアに近づきバチーンとお尻をひっぱたいた。

「ほら、ねぇさん! 朝よ! 起きて!」

「ふぇ? ほんとだぁ……眩しいくらいの青空だねぇ」

「寝覚めも良くないんだから……」

 ぽけーっと窓の外を見ているヘパイアがふと呟いた。

「あれ? なんで晴れてるの? 雨じゃなかったの?」

「そう言えば、そんなラルバ様の占いじゃそうだったわね。たまには外すこともあるでしょ」

「だって晴れがいいって言ってたから……あ」

 アイナの言葉に僕はつい答えてしまったあとに思い出した。占いで出た結果を変えたことを伝えても意味が無いことを。僕が晴れにしたということを証明することが出来ないことを。前国王のチャーチル様は笑顔で信じてくれたけど、ブライトン様は違った。よくよく考えればそっちの反応の方が正しい。だって、結果起きなかったんだから……
 大抵返ってくる言葉は、妄言だ! だの、詐欺師! だの、嘘吐きめ! だの、そんな言葉ばかり。
 だから占いで出たことを教えることも、それを変えたことを教えることも最近は止めていたことを思い出してしまった。

「ご主人様……」

「ラルバ様……」

 僕は罵声を浴びせられることが怖くなり、そっぽを向いて冗談っぽくこう言った。

「なーんてね」

 しかし、二人から返ってきたのは僕の予想外の言葉だった。

「凄いです! ご主人様!」

「まさかそんなことが出来るなんて……」

「信じて……くれるの?」

「もちろん!」

「正直、信じられないと言った気持ちではありますが……天気を変えられる人間がこの世に存在するなんて……信じられません……」

「え? そう? ビスケ村の人たちはだいたい出来るっぽかったけど……」

 とは言っても実際に変えるとこなんて見たことはない。皆が変えられるんだから、変えたところで意味なんかないからね。それに変える意味自体もなかったし……

「そ、それは……さ、さすがと言うべきでしょうか……」

 何故かアイナが言葉に詰まっている。なんでだろう……

「もう! アイナは考えすぎなんだってば! ご主人様に感謝しとけばいいの! ありがとう! ご主人様!」

 ヘパイアはそう言って僕に抱きついてきた。直接当たるちょっとだけ膨らんだ胸が意外と柔らかい……って違う、そうじゃない!

「ってヘパイア! 待って! まずは服を! とりあえず僕は下で待ってるから早く着替えて出発しよ!」

 と、僕はヘパイアを振りほどき、昨日の晩に纏めていた荷物を担いで急いで部屋から飛び出したのだった。
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