断罪された悪役令嬢は冒険者となって自由に生きることにした。

氷雨

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第1章 帝国編

1話 国外追放

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「エリシア・ラズヴェルト、貴様との婚約を今日をもって破棄する!!!そして、お前にはシャーロットの侍女として、死ぬまで働いてもらう!!!」

婚約を破棄?
シャーロットの侍女?
それも死ぬまでですって?

いっそ殺してしまいたいくらい、かつては自分の婚約者だった男に殺意が湧いた。

金の髪にアクアマリンの瞳。
神自らが作りあげたような美貌の王子は、シャーロットと呼ばれた女の肩を抱きながら、こちらを睨みつけながら言ってきた。

会場に集まった人達はひそひそと囁きあいながら、この余興を楽しむように話している。
それが悔しくて悔しくて堪らない。


そして1番ムカつくのが、私の断罪を笑顔で祝福するようにこちらを見ているシャーロットだ。

翠色の瞳をうるうるとさせながらこちらを眺める姿は、さぞ男性の庇護欲を誘う姿だろう。
けれど私には分かる、何度も何度も私を陥れてきたあの女は小動物のような可愛さなど微塵も持っていない、まるで悪魔のような、それこそ、悪役令嬢のような性格をしていた。


悪役、令嬢……?

あれ、それは本来私がなるべきものだったはず……あれ?


そこまで考えて、パリンッとガラスが割れるように、今までもやのかかっていた思考が嘘のように鮮明になっていく。

まるで操られていた者が自分の意思で動きだしたように、まるで自分の存在に気がついたように。


そうだ、思い出した。私は椎名美鈴、大学生で、たしかバイトの帰りに通り魔に刺されて死んだんだった。

てことは、ここは……?

些か明瞭さに欠ける頭で周りを見渡した。


豪華絢爛な舞踏会の会場で、自分は今この国の王太子、アルフレッド・フォン・ガーディアに婚約破棄を申し渡され断罪されているシーンだと認識を改めた。

同時に王太子とシャーロットの姿を見て、ここが乙女ゲーム「愛の四重奏(カルテット)~貴方の愛に囚われて~」というThe・恋愛ゲームと分かるような題名の世界に転生したのだと気がついた。

カルテットと囚われるをくっつけて略したこの「カルトラ」と言われていた乙女ゲームは、名前の通り音楽を題材とした恋愛ゲームで、前の世界で言うところの音楽大学のような場所であった。
ただ違うのは、この世界に魔法が存在していることと、中世ヨーロッパ風の世界だということだ。

攻略対象である王太子はヴァイオリン。
その婚約者である私も同じくヴァイオリンを選考していた。

そして、ほかの攻略対象者である公爵家の嫡男ルイス・ドナートはピアノ。

伯爵家次男のライナー・オルレアートはチェロ。

平民出身でありながら、その実力が認められて編入してきたカイルは、フルート。

そしてこの乙女ゲームの主人公であるシャーロットは、ピアノだった。

以上4名の攻略対象と悪役令嬢、ヒロインでこの物語は構成されている。

物語は4章に分けられ、簡単に言えば、1章はヒロインがカイルとともにこの学園に編入し、ヒロインが攻略対象達と出会っていくストーリー。

2章はコンクールに向けた選抜戦。
3章はコンクール本番。
4章は、思いが通じ合い恋人となった攻略対象とのこれからと言ったところだろう。

だがしかし、私に言わせてもらえばこの4章の部分、王太子ルートに進んだ時だけ私が悪役令嬢として立ち塞がるのだ。

コンクールの優勝をかけて戦ったアルフレッドとシャーロットはいつの間にか引かれあい、恋人同士になる。しかし当然婚約している私が邪魔になる。
エリシアはある日、アルフレッドに婚約を無かったことにしたいと言われ、アルフレッドを慕っていたエリシアは激怒し、ヒロインをいじめ始めるのだ。

そして4章の終盤にある卒業パーティーで、アルフレッドに婚約破棄を言い渡されるイベントが発生するのだ。つまり今実際に起こってい出来事がそのイベントであった。


私は震える足を叱責して、スっと背筋を伸ばして口を開いた。

「……婚約破棄、謹んでお受けいたします。しかし、侍女としてお仕えすることはできません。」

「なんだと?」

ギロリと眼光鋭くアルフレッドに睨まれる。
その瞳は自分の思い通りにいかない者にイラついているような俺様気質な側面が垣間見えた。

ゲームの設定でアルフレッドは俺様設定。
そのため今のように自分が言った言葉に逆らったり、思い通りに動かないものを見るとこうして機嫌が悪くなるのだ。


「お前、この私に逆らうつもりか?」

「……はい」

私は芯を帯びた目でアルフレッドに告げる。
すると、わなわなと肩を震わせたかと思えば
「……もういいッ!!!!!お前を反逆罪の罪で国外追放とする!!!!」

そう言って吐き捨てたのだった。


よしっ!

私は心の中で密かにガッツポーズをとる。

あのまま言うことを聞いていればシャーロットの侍女を一生やることになっていたが、あの傲慢な俺様アルフレッドに逆らえばきっと何かしらの罪を着せてくるはずと思いつき、あえて逆らったのだ。
案の定激昂したアルフレッドは私に国外追放を言い渡し、今も怒りの形相でこちらを睨みつけてくる。

私があなたに逆らったのなんて初めてだろう。きっと今頃腸が煮えくり返ってるはずだ。

なにやら色々怒鳴っているが、私はそれを無視すると共に、大人の皮を被った子供のようだと私は思った。




いやぁ、しかし国外追放か、意外といいかもしれない。
前世は、早くに両親を無くしてしまったから一人暮らし期間が長かったし、これから最低限の物を持って家を出たとしても十分暮らしていけるだろう。

残念ながら今世の両親は私に一切の関心がないので、娘が問題を起こして追放になったとしても目の上のタンコブとなった以上余計に干渉はしてこないはずだ。
たとえ侍女となっていたとしても勘当は免れなかっただろう。

であるならば早速行動に移すのみ、私は王太子とヒロイン、そして会場の野次馬たちにカーテシーをすると、「それでは御機嫌よう」と言って会場からそうそうに退散した。


それから迷わずラズヴェルト公爵家の馬車に乗り、屋敷に向かう。

屋敷にはきっと母がいるだろうが、娘の行動を一切把握していないので、急に娘が消えても大丈夫だろう、なにせ王太子が国外追放と言ったのだ。私はそれに逆らえず家を出た。ただそれだけ。
証人として会場にはあれだけの野次馬たちがいたのだから現場把握も問題なく出来るだろう。

それに、私には心の置ける者など1人もいないため、特に何も言わず外に出たとしても問題は無いと思う。

そう考えをまとめて、学校からそう遠くない屋敷に到着し、早足で自室へと向かったのだった。






┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

よくある悪役令嬢ものです。
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