断罪された悪役令嬢は冒険者となって自由に生きることにした。

氷雨

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第1章 帝国編

2話 冒険者ギルド

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深夜、屋敷が寝静まった頃、もう二度とこの屋敷には戻らない項を紙に書いて机の上に置くと、私は風魔法を使って3階にある自室の窓からふわりと浮き上がり、徐々に高度を下げていった。

すたっと着地すると1度屋敷を仰ぎ、数秒眺めた後使用人が利用している通路へと足を進めた。

流石に使用人用の門には見張りは1人しかおらず、気を抜いているためかこっくり、こっくりと船を漕いでいる。

私は見張りを起こさないよう細心の注意を払いながらキィと鉄柵を押し明け屋敷の外へと出た。


「ふぅ」

と冷や汗を拭い、一息つく。

さて、どこへ行こうかしら。と思ったけど、そういえば自分は国外追放を言い渡されたことを思い出した。

「……とりあえずこの国から出なくちゃダメね。」

たしかこの先を歩いていけば馬車が停車していたはず、夜間も運営していればいいのだけど。

私はひとまず国外へ行ける馬車を探しに街の方へと向かった。




30分ほど歩くと、馬車が何台も停車してある停留所に辿り着いた。


「すみません」

眠りこけている男に声をかけ、肩をゆさゆさと揺らす。

「あ?、あぁ、お客さんかい、こりゃすまんません、つい寝こけてしまいやした」

「いいえ、いいのです、今から国外に出たいのですが馬車は出せますか?」

「あぁそれは構わないが、あー、お嬢さんどっかの貴族だろ?家出かい?」

「いいえ、実質勘当された身です、それでは隣国のサージェント帝国に行きたいのですが大丈夫ですか?」

「はぁ!?勘当!!?こんな若いお嬢さんをかい?ったく両親は冷たいヤツらだな、よしっ、金はいらねぇ、おっちゃんが責任もって隣国まで送り届けてやるよ!あの国は偉い栄えてるらしいからな、お嬢ちゃんもその国で幸せになんな!!」

「いいのですか!?、それは願ってもないことですが……」

「いいんだ、いいんだ、こんな別嬪さんを乗せていけるんだ、それだけで金は貰ったようなもんだぜ」


「ありがとうございます!!それではよろしくお願いいたします。」

「あぁ任せろぃ!!」


公爵家の馬車より幾分か小さいシンプルな馬車に1人乗り込むと、おじさんの「はいゃ!!」という声とともに馬が走り出した。




過ぎていく街並みを眺めながら、不思議と悲しみがないことに驚く。
どうやら、私はこの国を離れることになんの未練も無いようだった。それに、仮にも17年間一緒に暮らした家族にさえ、今やなんの情も湧かない。



これから一人旅が始まるわけだが、冒険者になるのはどうだろう。
公爵家に生まれたからには魔力量が普通の人の3倍は多いし、魔法学に関しては常に上位だった。音楽以外にも乗馬や剣術、護身術まであらかた叩き込まれてきた。
それもこれも将来は王太子妃となるためにやってきたこと。
まさかこんな時になって役に立つなんて、人生は何が起こるかわからないものだ。


サージェント帝国まで片道でも1週間程時間を要するため、毎日必ず休憩を2回とり、夜は魔除の結界を張って野宿をするのがこの世界の基本だった。ただ貴族と違って自分の力では結界を張ることの出来ない、また魔力の少ない業者の人達は魔法具を用いて結界を張っている。
ただこの魔法具も非常に高価のため、運賃を免除してもらっているお礼に10m程の結界を張りたいと申し出た。

食事面では業者のおじさんが時々市場や露天に寄って串焼きや蒸したパンを買ってきてくれた。

どれもこれも、初めて見るものばかりで、特に鹿肉の串焼きは頬がとろけるほど美味しかった。
どうやら前世の様な野鹿は無く、代わりに魔力を持った鹿がいた。
どうやら家畜も含めてこの世界の動物は全てが魔物のようだった。その中でも力の弱い鹿や鶏などが家畜として飼われているようで、こうして屋台などで売られているみたいだった。







トントンという扉をノックする音で目を覚ます。
連日の馬車移動で疲れの溜まっていたのか、いつの間にか寝こけていたようだ。

「お嬢様さん、サージェント帝国に到着したぞ」

そう言ってもう一度扉をノックされた。


ふわぁぁと欠伸をして伸びをすると、ポキポキと背中から音がした。どうやら相当変な体勢を取っていたようだ。

私は扉を開けておじさんに挨拶をする。

「おはようございます、道中お疲れ様でした、疲れましたでしょう?こちらをどうぞ」

そう言って、私はポケットからクッキーの入った包みを取り出しおじさんの手を取って握らせた。

「別に気にしなくてもいいのに、まぁありがたくいただくとします、さぁどうぞ、朝焼けが綺麗ですよ!」

そう言って手を差し出し、馬車を降りる補助をしてくれる。

ありがたくその手に手を重ねると、私は外へと出たのだった。










いくつか言葉を交わした後、私は業者のおじさんと別れ、サージェント帝国の郊外にあるウォール街を歩いていた。

朝のため人通りは少ないが、ちらちらと屋台が出始め、賑わい始めてきているのが分かった。

南の空を見ると中央都市にある白亜の王宮が朝日に照らされて輝いていた。



ここがサージェント帝国、おじさんの言っていた通り綺麗な国だわ。


暫く街を眺めた後、私は冒険者登録をするべく冒険者ギルドのある隣街へと向かった。

太陽が南の空に登った頃、ようやく私は冒険者ギルドへと辿り着いた。土地勘のない私は色々な人に道を聞きながらここに来たわけだが、この街の人達はみな親切でびっくりした。

私は時々息抜きと称して屋敷を抜け出していたがこの国の人々ほど活力に満ち溢れてなどいなかったし、こんなに親切ではなかった。

一体この国の皇帝はどうな人なのだろう。
所々で市井の民から皇帝の話題が出る。こんな帝都から離れている場所でさえもいい噂話が流れていることから、その手腕が分かるというものだった。


そんなことを思いながら、私はギルドに足を踏み入れた。

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