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後日談&番外編
これって、不敬罪ですか?
しおりを挟むポカポカとしてとても気持ちがいい。
なんだか人肌に触れているようなそんな温かさがあった。
でも何でだろう?私は確かパーティーに来ていた筈なのに、なんで眠っているの?
「ミア、起きたかい?」
あれ、この声は…ハル様?
なんで?
不思議に思ったのは最初だけ、徐々に私の頭は覚醒していった。
ああ!!私、ハル様に助けられたんだった!!
ってことは詰まり、私はそのまま寝てしまったというの!?えぇ!!?
え、じゃあ私は今…
そしてこの温もりは…
そこまで考えて私は思いっきり目を開けて飛び起きた。
「っ!」
「いっ!」
おでこにつーんとした衝撃が走る。それと同時に声にならない声が近くで聞こえた。
ついでに言うと私は痛いと言おうとして言えなかった。だから「いっ!!」なんて言う奇声を発してしまったのだ。
恥ずかしからどうか忘れてくれると助かります。
うっすらと目を開けると、眩い光が差し込んできた。暗闇に慣れてしまった目は光を上手く吸収してくれなかったらしい。
それでも段々と回復してくるとしっかりとしてくるから嫌でも見えてくる。
「ハル…様?」
私が見つめる先には私から顔を背けて額を抑えるハル様がいた。どうやらさっきの声にならない声はハル様だったみたいだ。ということは私のおでこが見事ハル様のおでこにクリティカルヒットしたということか。
そこでふと気づく、ハル様は王族だ、ましてや今日の主役だ。
あぁ、どうしましょう、私はまさかのおでこ攻撃という間抜けな罪状で不敬罪になりそうです。
そんなことを考えているとハル様がゆっくりとおでこから手を離し顔を上げた。
「ミア、大丈夫か?」
「え?」
大丈夫か?と確かにハル様は言った。いやいや大丈夫か?と問いたいのは私の方です。今まさに私はハル様におでこ攻撃という暴力をはたらいたのですから。
「大丈夫ですわ、それよりも、おでこ、大丈夫なんですか?」
「あ、あぁ、大丈夫だ、それに謝らなくてもいい、これは事故だからな…」
そう言いながら頬を染め、顔を逸らした。
なんで、逸らしたの?
それよりも謝らなくていいなんて、本当なんですか?だって暴力ですよ?いいんですか?そんなこと言って実はあとから処罰が下ったりなんて……無いわね、だってハル様だもの、優しいもの、きっとそんなことしないわ。
と言うか、さっきかなりハル様は痛がっていたようだけど、私のおでこってそんなに硬いのかしら?まさかの石頭?
いやあぁぁぁ!!ふなゃふにゃは流石に嫌だけど硬すぎるのもいやあぁぁぁ!!
ハル様が照れる横で(なんで照れてるのかは分からない)私もパニックに陥るこの状況はカオスというしかない。傍から見たら私たちはどう映るのか知りたい、いややっぱり知らなくていいや、怖い。
「ミア、どうした?」
頬の熱が覚めたのこハル様が冷静にそれでいて心配そうに問いかけてくる。
八の字に柳眉を寄せて心配そうにこちらを見つめる様は飼い主に捨てらる子犬のよう。
「だ、大丈夫ですわ」
さっきからこればっかりな気がする。
いやさっきから大丈夫しか言っていない。
どうしんだろうか私は。
「所で、何故、私を抱えてらっしゃるのですか?」
だから先程からすごく、すごーく気になっていたけど言い出せなかったことを聞いてみた。
「あぁこれか、なにか問題が?」
そう言って抱きしめる腕に力がこもった。
心無しか機嫌も悪くなった気がしなくもない、いやする。そして何より笑顔が怖い。
「ハ、ハル様?」
「ん?何かな?」
……。
「な、なんでも、ないですわ…」
私は少しも逆らえそうにない、いや逆らったらヤバそうなハル様の笑顔にやられ、口を噤んだのだった。
もうしらない、私はなにも聞かない、聞いちゃいけない。
そうやって頭の中で呪文のように唱えた私を許して欲しい。
私達はそれから少しの間だけゆっくりして、それからパーティー会場に戻ることになった。
「本当に大丈夫?、無理なら私もここに居るから休んでいよう?」
「いいえ、大丈夫ですわ、それにハル様は主役なんですからそんなことは言ってはいけませんよ?」
私は先程からそんな風に言ってくるハル様を何とか説得して会場に向かった。
「いいかい?決して私ら離れないで」
そう言うや否や、ハル様はエスコートと呼ぶには少々近づき過ぎなほど私にくっ付いたまま歩き出した。
「ハル様!?」
混乱する私を他所にハル様は実に優雅に歩いている。こっちは急に近づいた距離に(さっきは抱きしめられていたが)戸惑っていると言うのにハル様はどこ吹く風だ。
通りすがる人達の視線が居た堪れない。
私は恥ずかしがっているのに対して、ハル様は本当に爽やかで優雅だ。
何故そんな平静で居られるのか、私には疑問でならない。私はこんなにドキドキしているのにハル様は全然そんな素振りがない、ハル様は私を意識してはいない?
その思考にたどり着いた私はさぁーと青ざめた。
胸がきゅぅと締め付けられる。
そうか、ハル様は私をそんな目で見てはいないのね。あくまで私たちはパートナー。
私はどこか自分がハル様の特別なんじゃないかと思っていた。けどそれは違ったみたいだ、だってこんなにもハル様は平静だから、ドキドキしているそぶりなんて何も無いじゃない。
バカみたい、私。
急に自分が馬鹿らしくなって自然と涙が出てきそうになった。
それを既の所で止めて前を向く。
涙は出しちゃいけないわ…そんな事したらハル様を困らせてしまう、だから我慢するのよ。
私はそっとハル様の肩に顔を埋めた。
きっとそれは無意識だった。
もうこのパーティーが終わってしまったら会うことは出来ないから。そう思った私はせめて最後くらいはと、ハル様に寄り添ったのだった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
※次回はハルの回です。
なんであの時照れたかが分かります。そらとミアは結構な勘違いをしています。
更新が遅れてすみませんでした。こらからも頑張りますのでよろしくお願いします!(●︎´▽︎`●︎)
応援ありがとうございます!
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