3 / 5
2.5話 人が消えた村(後編)
しおりを挟む
しばらく歩き続けると、崩壊しつつある数件の民家が見られた。人の気配は感じられない。
雪混じりの風や、山林の木々がカサカサと揺れる音が不気味さを増幅させる。
「おそらく、ここ一帯が民家エリアかと思われます。年数もだいぶ経過していて、劣化の酷い家も見られますね」
『この雰囲気は怖い……』
『電灯もないのか?霧切の光源だけが頼りか』
『たまに変な人に出くわす可能性もある。気をつけろ』
『つか、まだ民家入り口でビビんなよ(笑)』
『気をつけて』
いつもより、心配するコメントが多く、霧切は視聴者に対して、言葉をかける。
「入れそうな家に入ってみます。この村から、なぜ人が消えたのか、何かわかるものがないか、調べてみます。無理はしませんから、大丈夫」
『本当に無理すんなよ』
『何かあったら110番だぜ!』
『119番の方が良くね?』
『人怖の可能性もある、気を付けろ』
コメントを流し見しながら、最初の家に近づく。
おそらく、昭和初期に建築されたと思われる古い一軒家だ。
廃屋とはいえ、以前からその家に在住していた人々の事を思い、霧切は家の中へ入る。
「失礼します」
玄関口には子ども用のサンダルや、女性用の靴、男性用の作業靴や革靴が、下駄箱に乱雑に放り込まれた様な形跡が見られる。
屋内は、埃が多く天井が傾き、畳の上に柔らかい感覚があったが、床自体は抜けてはいない。
広間のような畳の上には、新聞紙に包まれた食器の様なものと、住人が着用していたと思われる衣類、アルバムなどが散乱していた。
霧切は、食器の包み紙の新聞の日付を確認する。
「この食器を包んでいる新聞紙は、昭和28年から30年までの新聞ですね。カレンダーは見当たりませんね」
『昭和28年ていつだよ?!』
『想像出来ねぇwww』
『その新聞で包んでたってことは、この家はもっと前に建てられたって事だよな?』
『何かニュースとか載ってる?』
霧切は、無造作に丸められた新聞紙を広げてみた。
じっと目を凝らす。
「えー……紙の劣化が激しくて、所々破れてはいますが、一応、読めるところだけ……昭和28年、日本の初の公共放送開始……あと、とある政治家の突然の衆議院解散、イギリスの女王戴冠式……などについて書かれています」
『昔すぎてよく分からんw』
『ある意味で、めっちゃ有名なニュースでもある!!』
『教科書に載ってるレベルじゃねぇかwww』
霧切は続ける。
「そもそも、全国紙のような内容ですね。この村に関する地域版の記事が見当たりませんね」
『地域ニュースはねぇのか』
『見つからないだけかも』
古びたアルバムはあるが、写真は残っていない。
「何もありませんね。使ったような形跡は見られますが……」
『アルバムだけ?』
『大事な写真だから持って行った?』
『なら、アルバムごと普通持っていくよね』
『いや、意味分からん』
しかし、霧切のアルバムをめくる手が止まる。
新聞紙の切り抜きが挟まれていた。
【昭和35年6月5日、深山郡渕上村の6歳男児が行方不明。前村亮太くん(6歳)現在、地元警察と、近隣の消防隊で合同捜索中】
「この村の少年が行方不明になった新聞の切り抜きですね……」
『ちょ!何それ?!』
『地域新聞はねぇのにこの事件だけ切り抜きって何だよ?』
『おいおい!とんでもねぇ事件が起こってるじゃん!!』
『霧切!裏も見てみろ!!』
『写真はねぇのに、新聞記事は挟んでるのかよ?!』
霧切は切り抜き記事の裏を見るが、渕上村とは関係ない記事である事を確認し、それを視聴者に告げた。
『よりによってこんなニュースとか、怖っ!』
『見つかったのか知りたいな。まあ、生きてても結構歳だし、どちらにしろ厳しいんじゃね?』
『俺のじいちゃん昭和20年生まれだけど、ピンピンしてるぜwww』
霧切は、台所、浴槽、和室など見て回るが、物が散乱しており、それ以上の情報は見つけられなかった。
「生活感はありますが、他に情報がないので次の家に行ってみます」
霧切は1件目の家を後にし、雪の中を歩き出した。
———配信続行。
【視聴中:50人】
雪混じりの風や、山林の木々がカサカサと揺れる音が不気味さを増幅させる。
「おそらく、ここ一帯が民家エリアかと思われます。年数もだいぶ経過していて、劣化の酷い家も見られますね」
『この雰囲気は怖い……』
『電灯もないのか?霧切の光源だけが頼りか』
『たまに変な人に出くわす可能性もある。気をつけろ』
『つか、まだ民家入り口でビビんなよ(笑)』
『気をつけて』
いつもより、心配するコメントが多く、霧切は視聴者に対して、言葉をかける。
「入れそうな家に入ってみます。この村から、なぜ人が消えたのか、何かわかるものがないか、調べてみます。無理はしませんから、大丈夫」
『本当に無理すんなよ』
『何かあったら110番だぜ!』
『119番の方が良くね?』
『人怖の可能性もある、気を付けろ』
コメントを流し見しながら、最初の家に近づく。
おそらく、昭和初期に建築されたと思われる古い一軒家だ。
廃屋とはいえ、以前からその家に在住していた人々の事を思い、霧切は家の中へ入る。
「失礼します」
玄関口には子ども用のサンダルや、女性用の靴、男性用の作業靴や革靴が、下駄箱に乱雑に放り込まれた様な形跡が見られる。
屋内は、埃が多く天井が傾き、畳の上に柔らかい感覚があったが、床自体は抜けてはいない。
広間のような畳の上には、新聞紙に包まれた食器の様なものと、住人が着用していたと思われる衣類、アルバムなどが散乱していた。
霧切は、食器の包み紙の新聞の日付を確認する。
「この食器を包んでいる新聞紙は、昭和28年から30年までの新聞ですね。カレンダーは見当たりませんね」
『昭和28年ていつだよ?!』
『想像出来ねぇwww』
『その新聞で包んでたってことは、この家はもっと前に建てられたって事だよな?』
『何かニュースとか載ってる?』
霧切は、無造作に丸められた新聞紙を広げてみた。
じっと目を凝らす。
「えー……紙の劣化が激しくて、所々破れてはいますが、一応、読めるところだけ……昭和28年、日本の初の公共放送開始……あと、とある政治家の突然の衆議院解散、イギリスの女王戴冠式……などについて書かれています」
『昔すぎてよく分からんw』
『ある意味で、めっちゃ有名なニュースでもある!!』
『教科書に載ってるレベルじゃねぇかwww』
霧切は続ける。
「そもそも、全国紙のような内容ですね。この村に関する地域版の記事が見当たりませんね」
『地域ニュースはねぇのか』
『見つからないだけかも』
古びたアルバムはあるが、写真は残っていない。
「何もありませんね。使ったような形跡は見られますが……」
『アルバムだけ?』
『大事な写真だから持って行った?』
『なら、アルバムごと普通持っていくよね』
『いや、意味分からん』
しかし、霧切のアルバムをめくる手が止まる。
新聞紙の切り抜きが挟まれていた。
【昭和35年6月5日、深山郡渕上村の6歳男児が行方不明。前村亮太くん(6歳)現在、地元警察と、近隣の消防隊で合同捜索中】
「この村の少年が行方不明になった新聞の切り抜きですね……」
『ちょ!何それ?!』
『地域新聞はねぇのにこの事件だけ切り抜きって何だよ?』
『おいおい!とんでもねぇ事件が起こってるじゃん!!』
『霧切!裏も見てみろ!!』
『写真はねぇのに、新聞記事は挟んでるのかよ?!』
霧切は切り抜き記事の裏を見るが、渕上村とは関係ない記事である事を確認し、それを視聴者に告げた。
『よりによってこんなニュースとか、怖っ!』
『見つかったのか知りたいな。まあ、生きてても結構歳だし、どちらにしろ厳しいんじゃね?』
『俺のじいちゃん昭和20年生まれだけど、ピンピンしてるぜwww』
霧切は、台所、浴槽、和室など見て回るが、物が散乱しており、それ以上の情報は見つけられなかった。
「生活感はありますが、他に情報がないので次の家に行ってみます」
霧切は1件目の家を後にし、雪の中を歩き出した。
———配信続行。
【視聴中:50人】
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる