観測の限界|霧切悠人の廃墟探索

maya

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2.5話 人が消えた村(後編)

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しばらく歩き続けると、崩壊しつつある数件の民家が見られた。人の気配は感じられない。
雪混じりの風や、山林の木々がカサカサと揺れる音が不気味さを増幅させる。

「おそらく、ここ一帯が民家エリアかと思われます。年数もだいぶ経過していて、劣化の酷い家も見られますね」

『この雰囲気は怖い……』
『電灯もないのか?霧切の光源だけが頼りか』
『たまに変な人に出くわす可能性もある。気をつけろ』
『つか、まだ民家入り口でビビんなよ(笑)』
『気をつけて』

いつもより、心配するコメントが多く、霧切は視聴者に対して、言葉をかける。

「入れそうな家に入ってみます。この村から、なぜ人が消えたのか、何かわかるものがないか、調べてみます。無理はしませんから、大丈夫」

『本当に無理すんなよ』
『何かあったら110番だぜ!』
『119番の方が良くね?』
『人怖の可能性もある、気を付けろ』

コメントを流し見しながら、最初の家に近づく。
おそらく、昭和初期に建築されたと思われる古い一軒家だ。
廃屋とはいえ、以前からその家に在住していた人々の事を思い、霧切は家の中へ入る。

「失礼します」

玄関口には子ども用のサンダルや、女性用の靴、男性用の作業靴や革靴が、下駄箱に乱雑に放り込まれた様な形跡が見られる。

屋内は、埃が多く天井が傾き、畳の上に柔らかい感覚があったが、床自体は抜けてはいない。

広間のような畳の上には、新聞紙に包まれた食器の様なものと、住人が着用していたと思われる衣類、アルバムなどが散乱していた。

霧切は、食器の包み紙の新聞の日付を確認する。

「この食器を包んでいる新聞紙は、昭和28年から30年までの新聞ですね。カレンダーは見当たりませんね」

『昭和28年ていつだよ?!』
『想像出来ねぇwww』
『その新聞で包んでたってことは、この家はもっと前に建てられたって事だよな?』
『何かニュースとか載ってる?』

霧切は、無造作に丸められた新聞紙を広げてみた。
じっと目を凝らす。

「えー……紙の劣化が激しくて、所々破れてはいますが、一応、読めるところだけ……昭和28年、日本の初の公共放送開始……あと、とある政治家の突然の衆議院解散、イギリスの女王戴冠式……などについて書かれています」

『昔すぎてよく分からんw』
『ある意味で、めっちゃ有名なニュースでもある!!』
『教科書に載ってるレベルじゃねぇかwww』

霧切は続ける。

「そもそも、全国紙のような内容ですね。この村に関する地域版の記事が見当たりませんね」

『地域ニュースはねぇのか』
『見つからないだけかも』

古びたアルバムはあるが、写真は残っていない。

「何もありませんね。使ったような形跡は見られますが……」

『アルバムだけ?』
『大事な写真だから持って行った?』
『なら、アルバムごと普通持っていくよね』
『いや、意味分からん』

しかし、霧切のアルバムをめくる手が止まる。

新聞紙の切り抜きが挟まれていた。

【昭和35年6月5日、深山郡渕上村の6歳男児が行方不明。前村亮太くん(6歳)現在、地元警察と、近隣の消防隊で合同捜索中】

「この村の少年が行方不明になった新聞の切り抜きですね……」

『ちょ!何それ?!』
『地域新聞はねぇのにこの事件だけ切り抜きって何だよ?』
『おいおい!とんでもねぇ事件が起こってるじゃん!!』
『霧切!裏も見てみろ!!』
『写真はねぇのに、新聞記事は挟んでるのかよ?!』

霧切は切り抜き記事の裏を見るが、渕上村とは関係ない記事である事を確認し、それを視聴者に告げた。

『よりによってこんなニュースとか、怖っ!』
『見つかったのか知りたいな。まあ、生きてても結構歳だし、どちらにしろ厳しいんじゃね?』
『俺のじいちゃん昭和20年生まれだけど、ピンピンしてるぜwww』

霧切は、台所、浴槽、和室など見て回るが、物が散乱しており、それ以上の情報は見つけられなかった。

「生活感はありますが、他に情報がないので次の家に行ってみます」

霧切は1件目の家を後にし、雪の中を歩き出した。

———配信続行。

【視聴中:50人】


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