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本編

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 シェルザード王国の宮殿内部。

 今日は王様の誕生日パーティ。
 貴族、王族が正装をして集合している。

 所々で踊りを楽しむ若い男女、貴族同士の挨拶を兼ねた情報交換会。
 様々な思惑はあれ……途中までは和やかな空気で進んでいたが……。

「ぐふっ!」

「キルリー王子!」

 突然、目の前に酷劇が起きた。

「きゃああああっ!」

「ど、どうしたっ! 一体何が起きた!」

 バタンと倒れ込む、第一王子キルリー。

 王子の口から床に流れる血液。
 駆け寄る兵士たち、心配する王様と王妃様。

「とにかく、急げっ! まだ息はある!」

「助かるかもしれん! 急いで治癒術師を呼んで来いっ! 絶対に助けるのじゃ!」

「は、はい!」

 まさかの事態に周囲からは悲鳴が上がっている。
 王子の冗談で、赤いのがケチャップだったというオチでもなさそうだ。


(……まいったな)

 その日、その場で偶然メイドとして働いていた私はソレを淡々と見つめていた。
 何も感じないというわけではないが、
 孤児であり、生き方のせいか、ここにいる平和ボケした上流階級の人たちよりも死には耐性がある。

 王子死んでないけど。

「キルリー、しっかりしてキルリー!」

 慌ててやってくる神官服を着た治癒術師。
 ドレスが汚れるのも構わず、しゃがみ込み瀕死の王子を励ます奥方のお姫様。


(とんでもない場面に巻き込まれてしまったわね)

 とはいえ、私はただのメイドである。
 だから他人事のように考えていた。

 この後、お給金キチンと貰えるのかしら……とか。
 ここでテーブルクロス引きに挑戦したら皆の度肝を抜けるかしら……とか。


 しかし、そんなことを考え事の推移を見守っていると。


「この女よっ! 王子を殺そうとしたのはっ!」

 誰かが、震える指先で私を指差したのだ。

 勝気な目をした見事な金髪ドリルのご令嬢が、凄まじい目で私のことを睨んでいた。


「私は見ていたわ……この女が王子の食べた皿に、禍々しい色をした何かを塗っていたところを」

「はい?」


 これを機に私の人生は大きく変わることとなる。


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