恋の魔法は耳で揺れ

キマメ

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 熱くいきり立ったものが、濡れた花弁を擦る。
 布団の上で、菜穂は枕を抱いて尻を突き上げていた。
 背中に覆いかぶさる将馬の腰は、ときに激しく、ときに優しく動く。
 裸のふたりを隔てているのは、すべすべしたゴムの感触だけだ。

「ひあっん、あっあぁ」

 入り口を擦られているだけで蜜壺が疼く。
 茂みも太股も互いの汗と淫らな液体でびしょ濡れだった。
 一番多い成分は、花弁からあふれる愛液だ。
 気持ちイイけれど、どこかもどかしい。

(もっと……)

 自分の欲しいものがわからないまま、菜穂は尻を振った。
 互いの動きが快感を加速していく。

「……菜穂」

 不意に動きを止め、彼が耳元で囁いた。
 低い声が肌をくすぐり、全身に電流を走らせる。

「んっ」
「このまま入れるぞ」

 慣れない自分を慮って、最初は擦るだけにすると言ってくれていたが、その必要はなさそうだ。前戯で何度もイカされて、体が火照り頭は蕩けている。

「はい……」

 片腕で自重を支え、腰を上げる。
 下から伸ばした手で花弁を広げると、ぐちゅっ、といやらしい音を立てて愛液がこぼれ出た。太股が粘つく。
 尖った先端が当てられて、ゆっくりと入ってきた。
 濡れた肉壁を押し広げ、奥へ奥へと──

「ふぁっ!」

 喉の奥まで彼が詰まっている。菜穂は唾を飲み込んだ。
 ゴムの感触を越えて、熱い脈動が伝わってくる。
 花弁を擦られていたときのもどかしさが霧散した。
 肉壁が勝手に蠢いて、熱いものを包む。心臓の鼓動が激しくなっていく。

「今夜の下ごしらえはバッチリみたいだな」
「バカぁ」

 漏れた声は甘く淫らで、将馬の言葉を裏づけていた。

「……動かすぞ」

 枕に顔を埋める。これ以上いやらしい声を聞かせたくない。

「どうした、啼かない気か?……ふうん」

 笑い声の後、奥まで入ったものを一気に引かれて仰け反った。

「ひんっ、ひっ、ひぃんっ!」

 彼が動く。入り口で蕾を弾いていた尖りの縁が、中では肉壁の凹凸を擦る。
 ひくつく花弁が愛液を吐く、じゅぷじゅぷと響く水音がいやらしい。
 頭の中で火花が瞬く。
 腰が勝手に動いて、悦楽を追い求める。

「やっ、ダメ、すごっ……んんぅ」
「イイ声だ、菜穂。たまんねえぜ」
「ん、ふぅ、将馬さん、将馬さん、もっと……」

 肩を甘噛みして、彼は動きを速めた。
 花弁を開かれ肉壁を擦られ、繰り返し繰り返し奥を突かれる。

「あっ、あぁん、あっあっ」

 菜穂は身悶えた。
 痺れるような快感が、体のあちこちでショートしている。
 重ねられた小さな絶頂が予告する大きな絶頂は、幸運の女神よりも素早い。
 つかもうとすると消えてしまう。

(でも確かに、もうちょっとで……)

 大きな手が乳房をつかんだ。硬い手のひらで乳首が押し潰される。
 肌に食い込む爪の感触が菜穂を高める。

「んんっ」

 薄い唇で耳を食まれ、低い声でくすぐられる。

「……すっかりエロイ女になったな。俺の負けだ。もうイクぞ」
「ダメぇ」
「菜穂?」
「もう、ちょっとだから、一緒に……っく」

 腰を振り蜜壺に力を込めて、逃げる快楽を追う。

「だったら、そんなに締めつけるな。先にイッても怒るなよ」

 将馬が腰の動きを止め、奥まで入れたまま捻る。
 思わぬところを擦られて、吐息が漏れた。

「しょ、将馬、さん?」

 軽く押し引きしながら、彼が蜜壺を探索する。
 悦楽に溶けて力が抜けた体は、それさえも気持ちイイ。
 もうすっかり抱かれることに馴染んでいる。最初のころは、ゆっくり動かされるだけでも苦しかったのに。

「どこだ? どこがイイんだ?」
「ん……あ、んんぅ!」

 自分でも知らなかった性感帯に刺激を受けて、体が震えた。

「……ここか」

 含み笑いを漏らして、彼が動き始める。
 探し出された場所を激しく嬲られ、菜穂の尻も動く。

「イイ、イイぃ、将馬さん、すごくイイのぉ」

 いやらしい喘ぎ声が止められない。
 幾度となく責めたてられて、体の奥から大きな波が押し寄せてくる。

「菜穂。俺も、もう……っ」

 快感が背筋を貫き、頭が真っ白になる。
 弓なりになった次の瞬間、体から力が抜けた。
 布団に倒れこんだ菜穂から、将馬が離れていく。

「イッたのか?」

 互いの息が荒い。うつ伏せに寝転んだままで首肯する。

「そうか」

 つん、と雄の匂いがした。ゴムを外したのだ。

「来いよ」
「……あっ」

 抱き上げられ、新しいゴムをつけた彼の膝に座らされた。

「ひぅっ、将馬さん、ダメ。もう遅いから」
「あんたのここは、もっと俺が欲しいって言ってるぜ?」

 長い指が濡れた蜜壺に入ってきた。
 最初は一本、それから二本。花弁を開いて蹂躙する。
 粘ついた愛液が彼の手を濡らす。

「あっ、あっ」

 どんなに首を横に振っても、感じていることは隠せない。
 ひくつく肉壁は彼の指を咥え込み、太股に涎を垂らす。
 大きな手に揉みしごかれる乳房の先で、尖った乳首が赤く揺れている。
 自分自身の淫らな喘ぎに煽られて、体の熱が上がっていく。

「ん、ふぅ、んっ……ん」

 与えられる悦楽に溺れかけたとき、指が抜かれた。
 胸への愛撫も止まり、体を裏返しにされる。
 向かい合った瞬間、唇を奪われた。激しく吸われ、舌で貪られる。

「……くそ」

 顎に垂れた唾液を舐め取り、将馬が毒づく。

「さっきもこっち向きでしときゃ良かった」
「どうして?」
「あんたのイク顔見損ねた。俺ばっか見せてて、悔しいじゃねえか」

 菜穂は微笑んだ。
 これまで彼の顔を見つめる余裕などなかったことは、秘密にしておこう。
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